排卵抑制方法

ESHRE(ヨーロッパ生殖医学会)が体外受精の卵巣刺激におけるガイドラインの指針案を発表しています。


本日は”排卵抑制方法”についてご紹介致します。


❶GnRHアゴニストについて
2015年の37件のRCTでのコクランメタアナリシスは、Long法、Short法、ウルトラShort法を比較しています。


①Long法vsShort法
Long法とShort法に生児獲得率の違いはみられませんでしたが、40歳以上の220人を含む別のRCTでは、Long法と比較してShort法で臨床妊娠率が有意に低下したと報告されています。


②Long法vsウルトラShort法
生児獲得率は変わりませんでした。


③Short法vsウルトラShort法
生児獲得率は変わりませんでした。


④Long法:卵胞期からGnRHa開始vs黄体期からGnRHa開始
生児獲得/継続妊娠率は変わりませんでした。


⑤Long法:GnRHa継続vs刺激開始時にGnRHaを終了
継続妊娠やOHSSに変わりませんでした。


⑥Long法:GnRHa同量投与量vsGnRHa減量
生児獲得率は変わりませんでした。


GnRHaが使用される場合、おそらく、Short法、ウルトラShort法よりもLong法が推奨される。(Conditional)


❷GnRHaとGnRHアンタゴニスト
2016年の73のRCTを含むコクランメタアナリシスでは、GnRHaと比較するとGnRHアゴニスト法は生児獲得率に違いは認めませんでした。OHSS発生率はGnRHアゴニスト法の方が低いという結果であり、他のRCTも同じような結果でした。


一般的な体外受精を受けている集団において、同等の有効性および高い安全性を考慮すると、GnRHアンタゴニスト法がGnRHaプロトコールよりも推奨される。(Strong)


❸プロゲスチン
LH サージを抑制するために経口プロゲステロンが使用されることがあります。プロゲステロン使用すると刺激周期での胚移植ができなくなるというデメリットがありますが、GnRHaやアンタゴニストより安価であります。


①プロゲスチン使用と自然周期
生児獲得率は変わりませんでした。しかしながら、採卵数はプロゲスチン使用した方が多い結果でした。


②プロゲスチン使用とアンタゴニスト法
臨床妊娠率、採卵数は変わりませんでした。


③プロゲスチン使用とShort法
生児獲得率、採卵数は変わりませんでした。


LHピーク抑制のためのプロゲスチン使用はおそらく勧められません。 プロゲスチン使用する場合は新鮮胚移植できません。(Conditional)


経口プロゲスチンは、LH抑制に効率的であり、GnRHaやアンタゴニスト法と同程度の採卵数および妊娠結果を有します。 経口プロゲスチン使用は、安く、患者さんに優しい方法ですが、利用可能な証拠は限られていますのでさらなる報告が待たれます。

卵巣刺激に反応の悪いpoor responderに対する刺激法について

ESHRE(ヨーロッパ生殖医学会)が体外受精の卵巣刺激におけるガイドラインの指針案を発表しています。


本日は”poor responderに対する刺激法”ご紹介致します。


①GnRHアンタゴニスト法 vs GnRHアゴニスト法


544人を含むメタアナリシスでは、poor respondersに対しGnRHアンタゴニスト法とLong法を比較したところ、生児獲得率に差はみられませんでした。
別の735人を対象とした メタアナリシスは、poor respondersに対しGnRHアンタゴニスト法とShort法を比較したところ、臨床妊娠率に統計的に有意な差はありませんでした。しかし、417人を対象としたGnRHアンタゴニスト群で採卵数は有意に少ない結果でした。
146人のpoor responderを含む2016年のRCTも、Short法とをGnRHアンタゴニスト法と比較したところ、採卵数は変わらなかったが、臨床妊娠率はShort法で有意に高い結果でした。


poor responderと予想される場合、GnRHアンタゴニストおよびGnRHアゴニストは、同様に推奨されている。(Conditional)


②クエン酸クロミフェン(CC)
CCと標準治療(FSH卵巣刺激)を比較した研究は非常に少なく、 249人のpoor responderを含む1件のRCTのみが、CCとShort法と比較し、生児獲得率が同様であると示しています。
874人を含むメタアナリシスでは、GnRHアンタゴニスト法とCCーゴナドトロピンの併用についても調査しましたが、GnRHアゴニスト法と比較し生児獲得率に関して有効性を示すことはできませんでした。
メタアナリシスに含まれていないRCTでは、250人のpoor responderのアンタゴニスト法におけるCCとゴナドトロピンの併用も調査され、CC使用していない群と比較すると、採卵数は変わらなかったが、CC使用群で臨床妊娠率が有意に低いという結果でした。


poor responderと予想される場合、クエン酸クロミフェン単独またはゴナドトロピンと組み合わせたクエン酸クロミフェン、およびゴナドトロピン刺激単独は、同様に推奨されている。(strong)


③アロマターゼ阻害剤
155人のメタアナリシスでは、アンタゴニスト法におけるFSHにレトロゾール併用しても、臨床妊娠率・採卵数に関して、従来の卵巣刺激と比較して有意差を認めませんでした。
他のメタアナリシスもレトロゾールの有効性は示していません。


poor responderと予想される場合、ゴナドトロピンへのレトロゾール併用は、おそらく推奨されません。(Conditional)


④ゴナドトロピン減量法


poor responderにおけるFSH投与量の減少(<150 IU /日)と従来のFSH刺激とを比較した研究は見当たりませんでした。


⑤ゴナドトロピン投与量の増量
2017年poor responderを含む5件のRCTを含むコクランのメタアナリシスは、性腺刺激ホルモンの投与量比較を調査しています。


150 IU vs 300/450 IU
ゴナドトロピン150IUと300 / 450IUの投与量において、生児獲得率/継続妊娠率に有意差はありませんでしたが、ゴナドトロピン高用量群で採卵数が多いという結果でした。


300 IU vs 400/450 IU
ゴナドトロピン300IUと400/450IUの投与量において、継続妊娠率・採卵数に有意差はないと報告しています。


450 IU vs 600 IU
ゴナドトロピン450IUと600IUの投与量において、生児獲得率・採卵数に有意差はないと報告しています。


300 IUの高用量ゴナドトロピン投与は、poor responderが予想される方に対して150 IUの従来の投与量よりもおそらく推奨されない。(Conditional)


ゴナドトロピンの投与量が300IUを超えるのは、poor responderが予想される方には推奨されない。(Strong)


ただ、高用量ゴナドトロピン投与は、採卵数が多くなり、移植可能胚ができる可能性も高くなります。 


⑥MODIFIED NATURAL CYCLE


1件のRCTが、125人のpoor responder(215サイクル)においてMODIFIED NATURAL CYCLEとGnRHアゴニスト法を比較しところ、妊娠率に有意差は認めませんでした。


MODIFIED NATURAL CYCLEは、poor responderと予測された場合、従来の刺激法よりもおそらく推奨されない。(Conditional)


ただ、MODIFIED NATURAL CYCLEやNATURAL CYCLEを推奨する良い研究なかったとのことでした。





強い

卵巣刺激に正常に反応する方の刺激法

ESHRE(ヨーロッパ生殖医学会)が体外受精の卵巣刺激におけるガイドラインの指針案を発表しています。


本日は”卵巣刺激に正常に反応する方の刺激法”ご紹介致します。



①GnRHアゴニスト法とGnRHアンタゴニスト法


2017年のメタアナリシスにてGnRHアゴニスト法とGnRHアンタゴニスト法を比較すると、生児獲得率に差はないと報告されています。しかし、Long法とアンタゴニスト法を比較すると、アンタゴニスト法の方が卵巣過剰刺激症候群の発生率が低かったということでした。


GnRHアンタゴニスト法は、安全性の向上に関して正常反応と予想される方に推奨されています。(strong)


②クロミフェンクエン酸塩(CC)


2018年の25人の「予後良好患者」を含む1つのコホート研究においては、クエン酸クロミフェンプロトコルとGnRHアンタゴニスト法を比較し、クエン酸クロミフェンを使用した群において、採卵数が少ないと報告されました。 しかしながら、CCとGnRHアンタゴニスト法との間で臨床妊娠率に差はありませんでした。


正常反応が予測される方の刺激法でクエン酸クロミフェンの使用を推奨する証拠はありません。


③アロマターゼ阻害剤


20人の小規模RCTでは、GnRHアンタゴニスト法で、FSH群とレトロゾール+ FSH群を比較したところ、進行妊娠率・採卵数に有意差は報告されませんでした。


また、94人の小規模RCTも、GnRHアンタゴニスト法で、FSH群とレトロゾール+ FSH群を比較したところ、臨床妊娠率または成熟卵数に有意差は報告されませんでした。


ゴナドトロピンにレトロゾールを併用することは、正常反応が予想される方にはおそらく推奨されません。(Conditional)


④ゴナトトロピン減量
5件のRCT(960人)を含むメタアナリシスは、rFSHの100IU /日と200IU /日を比較したところ、臨床妊娠率・卵巣過剰刺激症候群のリスクに有意差はなかったが、rFSHの100IU /日群は採卵数が有意に少なかったと報告しています。
3件のRCTは、遅発FSH法(月経5日目から150 IU開始)と従来法のFSHを比較しています。 GnRHアンタゴニスト法における遅発FSH法とLong法における従来法を比較し、継続妊娠率に有意差はありませんでしたが、遅発FSH法で採卵数が有意に少ない結果でした。GnRHアンタゴニスト法において、遅発開始法と従来法を比較した場合、進行妊娠率・採卵数に差はないと報告されています。


ゴナドトロピン量を減らすことは、正常反応が予想される方にはおそらく推奨されません。(Conditional)

卵巣の反応が良い方に対する卵巣刺激

ESHRE(ヨーロッパ生殖医学会)が体外受精の卵巣刺激におけるガイドラインの指針案を発表しています。


本日は”卵巣の反応が良い方に対する卵巣刺激”ご紹介致します。


①GnRHアンタゴニスト対GnRHアゴニスト
PCOでない卵巣機能のよい女性に関するメタアナリシスはなく、2017年のPCOを含んだRCTでは、生児獲得率は同程度だが、OHSS発生頻度はアンタゴニストの方が少なかったという結果でした。他の論文では、臨床妊娠率、OHSS発症頻度、採卵数は変わらないと報告されており、ガイドラインでは、


GnRHアンタゴニスト法は、安全性と有効性に関して、PCOS女性に推奨されています。(strong)
GnRHアンタゴニスト法は、安全性および有効性に卵巣機能のよいと推定される女性に推奨されています。


②クロミフェンクエン酸塩(CC)
2014年の前向き研究(128人のPCOSを含む)では、試験群(GnRHアンタゴニスト+rFSH+CC)と対照群(GnRH拮抗薬+rFSH)を比較したところ、臨床妊娠率、採卵数、成熟卵数に有意差はなかったと報告しています。
2017年の後ろ向き研究(174人のPCOSを含む)では、試験群(CC+hMG+MPA)と対照群(hMG+MPA)を比較したところ、対照群(hMG+MPA)で採卵数、成熟卵数が有意に多い結果でした。


刺激プロトコールにおけるゴナドトロピンにクエン酸クロミフェンの併用は、卵巣機能のよいと推定される女性にはおそらく推奨されない(Conditional)


③アロマターゼ阻害剤
181人のPCOS患者を対象とした1件の後ろ向き研究において、Long法にアロマターゼを併用する群都しない群を比較したところ、OHSS率、臨床妊娠率、採卵数に有意差はありませんでした。


卵巣機能のよいと推定される女性において刺激プロトコールにおいてゴナドトロピンにレトロゾールを併用することを推奨する証拠は不十分(Conditional)


④減量プロトコール
2017年の521人の卵巣機能のよいと推定される女性を含む1件のRCTでは、GnRHアゴニストまたはGnRHアンタゴニストのいずれかで低刺激法(100 IU FSH)、従来法(150 IU FSH)を比較しています。継続妊娠率、1サイクル目の生児獲得率(新鮮および凍結保存胚)は同程度と報告され、 低刺激法は、従来法と比較してOHSS率が有意に低いというものでした。


GnRHアゴニスト法を行う場合、ゴナドトロピン投与の減量は、卵巣機能のよいと推定される女性におけるOHSSのリスクを減らすために推奨されます。(Strong )
しかし、ガイドラインはアンタゴニスト使用を推奨しています。


⑤MILD STIMULATION
⑥MODIFIED NATURAL CYCLE


FSH投与量を少なくして刺激し数個の卵胞を発育させるMILD STIMULATIONは、報告によりさまざまな方法があります。
MODIFIED NATURAL CYCLEは、自然のLHサージを抑制したり、卵成熟を誘発するトリガーを行う目的で薬剤を使用し、一個以上採卵する方法ですが、卵巣機能のよいと推定される女性に自然周期やMODIFIED NATURAL CYCLEを行う正当化するような証拠はありませんでした

体外受精開始前の処置について

ESHRE(ヨーロッパ生殖医学会)が体外受精の卵巣刺激におけるガイドラインの指針を発表しています。


本日は”体外受精開始前の処置について”ご紹介致します。


①エストロゲンでの前処置
GnRHアンタゴニストプロトコールにおいて、卵巣刺激前にエストロゲンで前処理することは、おそらく有効性と安全性を改善するために推奨されません。(Conditional)


2017年のコクランでは、GnRHアンタゴニストプロトコールにおいてエストロゲン前処置と前処置なしを比較した場合、生児獲得率/継続妊娠率、臨床妊娠率に差を認めませんでした。しかし、採卵数はエストロゲン前処置した方が多かったと矛盾しているような結果でした。他のRCTでもGnRHアンタゴニストプロトコールにおいて、臨床妊娠率に有意差はないと報告されています。


②プロゲステロンでの前処理
GnRHアンタゴニストプロトコールにおいて卵巣刺激前にプロゲステロンで前処理することは、おそらく有効性と安全性を改善するために推奨されません。(Conditional)


2017年のコクランでは、プロゲストゲン前処置と介入していない群を比較した場合、GnRHアゴニストプロトコールにおける生児獲得率/継続妊娠率に群間差はありませんでした。 GnRHアンタゴニストプロトコールにおいて、出生時/継続中の妊娠率に差があるかどうかを決定するための十分な証拠はありませんでした。
プロゲストゲンによる前処理が、採卵数において、GnRHアゴニストおよびGnRHアンタゴニストの両方においてグループ間の差異をもたらしたかどうかを決定する十分な証拠はありませんでした。


・採卵日のスケジューリング目的に使用することは、有効性と安全性に関するデータを考えると、おそらく許容できるでしょう。


③ピルでの前処置
ピルでの前処置(12〜28日)は、GnRHアンタゴニストプロトコールでは推奨されない。(strong)



ピルでの前処置を行ったGnRHアンタゴニストプロトコールでは、生児獲得率/継続妊娠率は前処置なしの場合よりも0.74倍低い結果でした。
poor responder(女性80人)においては、生児獲得率/継続妊娠率、採卵数に差を認めませんでした。


2018年の他の報告ではGnRHアンタゴニストプロトコールでピルでの前処置(10日)と前治療なしを比較し、臨床妊娠率、採卵数、OHSS発生頻度に有意差を認めていません。短い期間であれば悪影響はないのかもしれません。また、FSHの種類、ピルの種類によっても結果が異なるかもしれません。(今回はエチニルエストラジオールとレボノルゲストレルまたはデソゲストレル)


④アンタゴニストでの前処置
アンタゴニストプロトコールにおいて刺激開始を遅らせる卵巣刺激前のGnRHアンタゴニスト投与はおそらく推奨されない。(Conditional)


正常反応女性を対象とした小規模RCTでは、アンタゴニスト開始日を固定した方法と、卵胞期にアンタゴニストを刺激前に投与した方法において、継続妊娠率および採卵数に差はありませんでした。
同様に、poor responderを対象としても生児獲得率、採卵数に差を認めませんでした。
他にも、臨床妊娠率が高くなったという報告もありますが、2017年の小規模RCTでは臨床妊娠率、採卵数に変わりはなかったという結果でした。