成長ホルモン投与により高齢女性の体外受精の成績が改善した

みなさんこんにちは


本日は以前よりいわれている体外受精中に成長ホルモンを投与すると成績が改善するという新しい報告をご紹介いたします。


2018年12月 Fertility and Sterilty
"Growth hormone during in vitro fertilization in older women modulates the density of receptors in granulosa cells, with improved pregnancy outcomes"


卵巣予備能の低下した方にFSHを高容量投与しても、なかなか反応しないことが多いです。そこで、成長ホルモンを併用することで生児獲得率、妊娠率を上昇させるのではないかという報告がいくつもあります。しかし、改善させるメカニズムは正確にわかっているわけではありません。


成長ホルモンに反応する受容体は、卵にある顆粒膜細胞に存在します。その成長ホルモン受容体はJAK2との複合体の形成を促進します。その成長ホルモン受容体-JAK2複合体は、卵巣における細胞分化および卵細胞の成熟などを誘発することができます。


成長ホルモン受容体密度の低下は、高齢患者の妊孕性および卵巣予備能の低下と関連していると報告されています。そこでこの報告は成長ホルモンを併用した卵巣予備能低下した方の顆粒膜細胞のFSH受容体、LHR受容体密度を調査しています。


<結果>
成長ホルモン併用は、同じ年齢および卵巣予備能の非成長ホルモン併用と比較して、顆粒膜細胞のFSH受容体、LH受容体および成長ホルモン受容体の密度を増加させていました。
また、卵胞のFSH受容体、およびLH受容体密度を増加させることで排卵前のダウンレギュレーション(過度の刺激によりホルモンの応対能が低下すること)を回復させていました。 
同じ卵巣予備能および年齢群(39〜45才)において、成長ホルモン併用群の妊娠率は有意に高く(P = 0.044)、新鮮または凍結した胚の生児獲得率は14%であり、非成長ホルモン群では6.2%でした(有意差なし)。


<結論>
成長ホルモン併用療法は、卵胞のFSH受容体、およびLH受容体密度を増加させることで排卵前のダウンレギュレーションを回復させ、卵母細胞の最終成熟および排卵を誘発するhCG / LHサージの感受性を増加させる可能性があります。卵巣予備力の低下した高齢患者における黄体形成の過程を改善する可能性がありました。 また成長ホルモン治療群の妊娠率が改善しました。






凍結胚移植後の培養時間

こんにちは


一般的に胚を融解したあとは3時間ほど培養し胚移植するのですが、
この報告は凍結胚移植時の融解後の培養を「1時間」「18時間」とし着床率を比較した前向き試験です。


2018年12月 Fertility and Sterilty
“Impact of post-warming culture duration on clinical outcomes of vitrified good-quality blastocyst transfers: a prospective randomized study”


をご紹介いたします。


卵巣機能の良い方の164個の胚盤胞を
グループA(「Day Before」):移植前日に胚盤胞を融解し、約18時間(16-22時間の範囲)培養し移植します。 胚移植の前に、胚盤胞が再拡張されなかった場合または変性した場合、可能であれば追加融解が行われています。
グループB(「ET-Day」):胚を移植日に融解し、約1時間(30分〜5時間の範囲)培養した後、移植しています。


この2群に分けて着床率、生児獲得率、再拡張度(融解後の広がり)、融解後・移転直前のgradeを比較検討しています。


両群において融解後・移転直前のgradeは同様で着床率、生児獲得率も変わらないという結果でした。
当たり前ですが、融解後の培養時間がグループAで長いため、移植直前の再拡張度は高く、ハッチング(孵化)した割合も高いという結果でした。


この報告によると、卵巣機能の良い方において凍結胚を前日に融解しても成績は変わらない結果であったため、培養室の業務を最適化できるのではないかということでした。
また、融解後、拡張せず戻ってこないような胚を評価し、ほかの胚盤胞を追加融解することも提案できるのではないかと報告されています。


これはグループAの胚盤胞の約12%以下が18時間後に再拡張せず、これらのは胚は着床能が非常に低いと予想され、前日の胚の融解はおそらく発育不能な胚盤胞の選択を可能にするのではないかいうことでした。


ただ子宮内膜と胚融解のタイミングがずれる可能性もあるため、高齢の方などは難しいかもしれません。

自宅でできる精液検査

みなさんこんにちは


本日はスマートフォンを使用し自宅でできる精液検査のスクリーニングの精度は高いという報告です。


2018年12月 Fertility and Steriltyに発表された
"Home sperm testing device versus laboratory sperm quality analyzer: comparison of motile sperm concentration"
をご紹介いたします。


不妊症のうち男性が関係しているの不妊症のカップルは30〜50%を占めています。精子分析は、濃度、運動、および形態などの重要な精子パラメータを分析することで、男性因子不妊症を評価するための標準的な診断ツールです。世界保健機関(WHO)によって確立された基準に基づいて、これらのパラメータの1つ以上の異常は、男性因子不妊症と有意に関連しているといわれています。


精液検査は手動顕微鏡検査および自動検査システムの両方を使用し検査を行うことが多いです。
しかし、クリニックに来院し精液検査を行うことに抵抗を示される方もおられます。
そこで自宅で手軽にできる検査が必要とされ、導入されてきています。しかし、精子濃度のみ測れるものが多いようです。そこで、2017年、YOホーム精液検査は運動精子濃度(MSC)、濃度(細胞数/ mL)および運動性(運動精子の割合)を測定できるキットが発売されました。
こちらはMSCの結果で、6×106 / mLのカットオフに基づいて、「低」または「中等度/正常」MSCとしてエンドユーザーに報告されるようです。


このYOホーム精液検査キットと自動精子特性分析機を比較して自宅でできる検査を評価しています。


24人の精液を3つに分けて、YOホーム精液検査(iPhone 7、Android)、精子特性分析機で測定し比較検討しています。
精子特性分析機とYOデバイスを比較した場合、YOデバイの再現性、精度、相関は精子特性分析機とかわりませんでした。散布図を描きYO iPhoneとYO Galaxyの精度を調べても両方で97%を超えていました。また、偽陽性は、両方のYO機器(<3%)で低い結果でした。


まとめ
試験されたスマートフォンの検査装置は、ユーザが家庭環境で行える利便性およびプライバシーにおいて、妊娠可能性をスクリーニングするための貴重なパラメータである運動精子濃度を正確に検出することを可能にしたことがわかりました。 正常/異常テスト結果は、より早い段階で医学的介入を必要とする男性の動機付けとなり、患者満足度、臨床効率および管理を大きく改善するという報告でした。 


妊娠tryし始めたばかりの男性のスクリーニング検査としては非常に良い検査装置だと思われます。


ただ、この報告にも書かれていたように、精子の形態も妊娠に重要です。
不妊期間が長い方、パートナーの年齢が高い方など、精子の正常形態率などはこの検査でわかりませんので、クリニック受診が必要と考えられます。



反復流産を経験されている方の中で卵嚢機能低下している方の胚盤胞は異数性が多い

こんにちは


本日は少し前の論文になりますが、
反復流産を経験されている方の中で卵巣機能低下している方の胚盤胞は異数性が多いという報告をご紹介いたします。


”Higher rates of aneuploidy in blastocysts and higher risk of no embryo transfer in recurrent pregnancy loss patients with diminished ovarian reserve undergoing in vitro fertilization"


流産は年齢にもよりますが、10 ~ 25%に起こるとされ特別なことではありません。
厚生労働省によれば、妊娠歴のある 35-79 歳の女性のうち、3 回以上の流産は 0.9%、2 回以上の流産は 4.2%で、38%が 1 回以上の流産を経験していると報告されています。


この報告では2回以上の臨床的に認められた妊娠の損失をRecurrent pregnancy loss (RPL)と定義されています。


流産の主な原因の一つとして胚の染色体の異数性が挙げられます。
異数性の発生率は、年齢および過去の流産の回数とともに増加します。日本において一般診療ではなかなか難しいですが、異数性を調べるための胚の染色体スクリーニング(PGT-A)を用いた体外受精は、RPLの治療の選択肢として提案されています。


さらに、Katz-Jaffeは卵巣予備能(DOR)の低下した方は胚の異数性の発生率が高いことが示され、他の研究でもRPLにおいてDORの発生率が予想以上に高いことが示されています。


この報告は異数性の割合を予測する際の卵巣予備検査の役割およびPGT-AのためIVFをおこなった原因不明のRPLの正常胚が1個もないリスクを調べています。


PGT-Aを行なった43人がDORで、59人は正常な卵巣予備能でした。
DOR群は、異数性胚盤胞の割合が高く(57%対48%、P = 0.03)、PGT-Aしたすべての胚盤胞が異数性であったIVFサイクルの発生率も高い結果でした(25%対13%、P = 0.02)。


35歳以下および35〜37歳で、正常卵巣予備能群と比較して、DOR群由来の胚で異数性率が高かったですが、(59%対45%、P = .04および77%対59 %、P = 0.03)。38歳以上のでは、卵巣予備能にかかわらず、異数性率は高くなっていました。


胚移植の結果は、着床率、生児獲得率、流産率も同様で両群で統計学的に有意差はでませんでした。


まとめますと
原因不明のRPLおよびDORを有する方において、正常な卵巣予備検査を受けた患者と比較して、異数性胚がより高い割合であることがわかりました。しかし、38歳以上では、卵巣予備能にかかわらず、異数性率は高くなっていました。ただ、正常胚であれば卵巣機能は着床率、生児獲得率、流産率に影響しない可能性が考えられるようです。



早発卵巣不全(POI; primary ovarian insufficiency)について

本日は早発卵巣不全:POIについてまとめた報告をご紹介いたします。



Prz Menopauzalny. 2018 Sep
”Reproduction in premature ovarian insufficiency patients – from latest studies to therapeutic approach”


原始卵胞数は母親のお腹の中にいる20〜24週の胎児のころに最大数(6〜8百万)となります。 その後、減少がしていき 出生時には原始卵胞数は約100万個となります。 思春期になると、約50万個に減少し、閉経に近いころにはわずか数千個となります。


早期卵巣機能不全は、40歳までに月経周期の停止、血清卵胞刺激ホルモン(FSH)レベルの上昇、および女性の血清エストラジオールレベルの低下として定義されます。 POIは女性のおよそ1%ほど発症するといわれます。


大部分は特発性ですが、遺伝的に素因もみられます。
自然発症は4%〜8%ほどで、自己免疫性疾患が関連しているものは4〜30%。
糖尿病の2.5%、アジソン病の約10〜20%がPOIを発症すると報告されています。
また、腫瘍切除や、化学療法、放射線療法などにより医原性の卵巣機能不全を引き起こすこともあります。


最大25%ほどは排卵を起こすことができますが、POIと診断されてからの妊娠・出産はわずか5%〜10%であると報告されています。


<治療>
POI患者さんに対し妊娠予定を延期しないようにアドバイスすることが重要です。
E投与やKaufmann療法を利用したり、GnRha投与、長期のFSH投与などを行い卵胞発育したら採卵し妊娠を目指す方法があります。


日本ではなかなか難しいですが、卵子提供が治療の選択肢となりえます。しかし、元々の疾患がある場合は妊娠中はより合併症を起こす可能性がありますし、卵子提供により妊娠高血圧および胎盤異常などの合併症増加するといわれていますので慎重な経過観察が必要となります。


卵巣凍結や河村先生などが研究されている Phosphoinositide 3-kinase (PI3K)-Akt-Forkhead box O3 (Foxo3) 経路を活性化する卵胞の人為的活性化(IVA; in vitro activation)などが一部の機関で行われています。


また、一般化はまだまだ先の話になりますが、幹細胞を利用した方法も非常に有効な手段となる可能性があります。


まとめ
現在、POIにおける新しい不妊治療法が開発されていますが、一般化するのはまだまだ先になりそうです。


挙示希望があれば
パートナーがいない方には卵子凍結、卵巣凍結
パートナーがいる方には妊娠予定を延期しないようにアドバイスし、今までのやり方で採卵したり、特定の機関で卵巣凍結やIVAなど新しい方法を行なう他、排卵が困難であれば卵子提供や特別養子縁組など情報提供を行う必要があります。