ヒドロキシクロロキンで反復着床不全の治療

こんにちは


本日は反復着床不全の治療についての報告をご紹介します。


Biomed Pharmacother. 2018 
"Immunomodulatory effects of hydroxychloroquine on Th1/Th2 balance in women with repeated implantation failure."


反復着床不全は報告にもよりますが、2−3回胚移植しても妊娠しない状態です。免疫学的因子が子宮内膜受容能を低下させることで着床できない状態が繰り返される可能性が示唆されています。


Th1、Th2、Th17サイトカインと制御性T細胞のバランスが適切に働き着床を誘導します。TNF-αやIFN-γなどのTh1サイトカインは妊娠に悪影響を及ぼし、IL-4やIL-10などのTh2サイ​​トカインは着床に重要であることが示唆されています。そのため、Th1 / Th2比の増加は、胚に対し悪影響をもたらし、着床の失敗を起こす可能性があります。 Th1とTh2のバランスは、不妊女性の子宮内膜と移植胚との間の免疫学的拒絶反応を検出するための有用なマーカーになる可能性を秘めています。


多くの研究は、IL-10およびIL-4などの抗炎症性サイトカインの上昇したおよびTNF-αおよびIFN-γなどの炎症性サイトカインの減少が、より良好な結果をもたらすと報告されています


この報告では、RIFでTNFα/ IL-10比の上昇(TNFα/ IL-10≧30.6)を有する合計17人の女性が研究の対象となっております。 TNFαおよびIL-10の血清レベル、Th1およびTh2細胞に関連する転写因子の発現、ならびにTh1関連サイトカインとしてのTNFα、IFN-γおよび子宮内膜におけるTh2関連サイトカインとしてのIL-10、IL-4の免疫反応性組織をそれぞれELISA、リアルタイムPCR、および蛍光免疫組織化学によって評価した。全て、評価はヒドロキシクロロキン(400mg / 1日1回経口投与)の前後で行っています。


<結果>
ヒドロキシクロロキン治療は、TNF-αの血清レベルを有意に低下させ、IL-10の血清レベルを有意に増加させていました。 Th1転写因子であるT-betは発現が下方制御され、Th2転写因子であるGATA-3発現はアップレギュレーションされていました。処置前と比較して、処置後のRIFを有する女性において、IL-10およびIL-4蛍光免疫反応は有意に増加し、TNFαおよびIFN-γ蛍光免疫反応は子宮内膜組織において有意に減少していました


<結論>
着床期にTNF-α/ IL-10比が高いRIFに対しヒドロキシクロロキン投与は、この比を減少させることができ、Th2反応の変化による細胞性免疫異常によって引き起こされるRIFの有効な治療戦略であるようでありました。


こちらの報告はRIFに対しヒドロキシクロロキンで治療した最初の報告のようです。
症例数が少ないですが、Th1/Th2比の上昇した方に対しては有効なのかもしれません。


反復着床不全の原因はTh1/Th2比の上昇だけではありません。反復着床不全の方は精神的にも身体的、経済的にもかなり負担がかかります。なかなか妊娠せず非常に悩まれている方もおられると思います。
Th1/Th2比の上昇に対しタクロリムスを使用しているなど、RIFに関するさまざまな報告がありますが、よりよい治療を検討した報告が待たれます。



卵巣刺激しても胚の異数性の割合は増加しないという報告

みなさんこんにちは


本日は卵巣刺激することで染色体の異常胚が増えるか検討した報告になります。


Hum Reprod. 2018 10月 
" Dosage of exogenous gonadotropins is not associated with blastocyst aneuploidy or live-birth rates in PGS cycles in Chinese women"
です。


採卵する際、注射や内服で卵巣刺激を行い採卵数を増やすことで、1回の採卵で妊娠を目指すのが世界的にもスタンダードだと思います。卵巣過剰刺激症候群など卵巣刺激の副作用を考え、内服に注射を1.2回するようなmild stimulationを行うクリニックもあります。


この卵巣刺激が、胚の染色体異常に関係するという報告や、関係しないという報告があります。染色体異常のメカニズムはすべてが解明されているわけではありませんが、大部分の染色体異常は最初の減数分裂のエラーに由来するといわれています。


この報告は、中国で着床前診断(PGA-T)を行なった1088採卵周期サイク3219個の胚生検を実施しております。 PGA-Tを実施する適応は、母親の年齢(38歳以上)、反復着床不全、再発性胎児染色体異常および反復性流産でした。


ロングプロトコール(538 周期)、ショートフロトコール(379周期)、アンタゴニストプロトコール(118 周期)および低刺激プロトコール(53 周期)の4つの刺激プロトコールを行なっております。
受精方法は全て顕微授精。
PGT-A検査法はアレイCGHで行なっています。
移植法は基本的に自然排卵周期で単一胚盤胞移植を行なっています。


FSH投与量や採卵数により分類し胚の正倍数性の割合、妊娠率などを比較検討しております。


<結果>
正倍数性の胚の総数は、アレイ-CGHを用いて遺伝学的にスクリーニングされた3219胚のうち、1690胚(52.5%)でした。
35歳以上(高齢群:2084.2±899.4IU)は、外性ゴナドトロピンの用量が35歳未満(若年群:1897.2±824.2IU)に比べて投与量が多い結果でした。同様に胚の異数性の割合は、高齢群で59.3%、若年群で39.8%しと高齢群で有意に異数性た。


この分析には、各卵巣刺激サイクルにおける最初の胚移植のみが含まれていました。683人の女性に、683個の胚を移植し、若年群436個の胚および高齢群247個の胚を移植した。全体で生化学的妊娠率は71.3%(487/683)、臨床妊娠率は57.3%(391/683)、進行妊娠率は54.5%(372/683)であり、生児獲得率は51.4%(351/683)でした。


胚盤胞の異数性率
                若年群        高齢群
卵胞刺激量  1500IU未満   42.9%(321/748)   58.0%(181/312)
       1500〜3000IU    36.9%(372/1009)   59.8%(471/788)
       >3000IU    43.4%(86/198)          59.8%(98/164)

採卵数    1〜5個     38.9%[21/54]      63.8%[113/177]
       6~10個      40.0%[189/472]     58.9%[228/387]
                     11~15個     41.4%[269/649]     56.6%[215 / 380]
     > 15個以上    38.5%[300/780]     60.6%[194/320]


すべて有意差なし


臨床妊娠率、妊娠率、生児獲得率は、採卵数1〜5個の群が他の群と比較すると有意に低下していました。また、ロジスティック回帰分析で、女性の年齢、BMI、基礎FSHおよび卵巣刺激プロトコールを調整した後でも、生児獲得率が卵巣反応性と関連していることがわかりました。


まとめ
卵巣刺激に使用される外因性ゴナドトロピンの総用量が、中国の女性のPGT-A周期における胚盤胞の異数性または生児獲得率に関連しないことと考えられました。
卵巣の反応性と異数性の関係性は認めませんでしたが、採卵数1−5個の群は、臨床妊娠率、妊娠率、生児獲得率が低いという結果でした。


こちらの報告はアジア人のデータであり本邦でも同じ傾向があると予想されます。
この報告によると卵巣刺激が胚の異数性を増加させるとは言えないようです。


前にもご紹介した通り、採卵数が増加すれば累積妊娠率も増加するという報告があったように、副作用を抑えつつ採卵数を多くしたほうが良いように思えます。


子宮内膜が薄くてもある程度妊娠する

こんにちは


本日は子宮内膜の厚さと体外受精の妊娠率を検討した報告をご紹介いたします。


Hum Reprod. 2018 10月 
"The impact of a thin endometrial lining on fresh and frozen–thaw IVF outcomes: an analysis of over 40 000 embryo transfers"
です。


薄い子宮内膜の定義は研究によって異なりますが、凍結融解胚移植周期でプロゲステロンの開始前、新鮮胚移植で、hCG投与日に<7または<8mmと一般に定義されていることが多いです。 生殖補助医療における薄い子宮内膜の発生率は、1.5〜9.1%であると報告されています。
しかし、施設や測定者の違いで誤差は大きいものです。


この報告は新鮮胚移植および凍結融解胚移植周期で8mm未満の子宮内膜の厚さ各1mm減少するごとに分類し妊娠への影響を評価しています。


カナダのデーターベースから後方的に内膜と妊娠率を検討しています。
内膜は、凍結融解胚移植周期でプロゲステロンの開始前、新鮮胚移植でhCG投与日に測定したもの。


<結果>
新鮮胚移植 21,914サイクル、凍結融解胚移植周期18,942サイクルを分析することができています。


新鮮胚移植周期では、87.7%が子宮内膜の厚さが8mm以上であり、臨床妊娠率は43.2%、生存率は33.7%、臨床妊娠後の流産率は22%でした。ETを受けた患者の1%未満が4〜5.9mmの子宮内膜を有しており、この群では臨床妊娠率は25%でした。


凍結融解胚移植周期では、85.9%が子宮内膜の厚さが8mm以上であり、臨床的妊娠および出生率はいずれも、子宮内膜の厚さが1mm減少するにつれて減少していました。しかし、子宮内膜の厚さ> 8mmの患者と、子宮内膜の厚さが7.0〜7.9mmの患者との間に差はみられませんでした。 ETを受けた0.6%は、子宮内膜の厚さが4〜5.9mmであり、臨床的妊娠および生存率はそれぞれ28.3%および16.8%でありました。


新鮮胚移植で年齢別に分析したところ、40歳以上よりも35歳未満(89.7%)および35〜39歳(87.8%)で8mm以上の子宮内膜を有する可能性が高くなっていました。また、子宮内膜が薄くなにつれ、すべての年齢層で臨床妊娠および出生率が低くなっていました。


<まとめ>
新鮮胚移植群で8mm未満、凍結胚移植群で7mm未満の各1mm単位で、臨床妊娠率および生存率が有意に低下していました。


しかしながら、新鮮胚移植周期で、子宮内膜の厚さは5〜5.9mmの場合臨床的妊娠および生存率は26%、18%であり、4〜4.9 mmの場合で臨床妊娠率は21%でした。同様に、凍結融解胚移植周期ついては、臨床的妊娠および生存率は、子宮内膜の厚さが5〜5.9mmの場合29%、15%、4-4.9mmの場合27%、21%でありました。


子宮内膜の厚さは妊娠に重要な因子ですが、子宮内膜がかなり薄い状態でもある程度の妊娠率が期待できることがわかりました。



なかなか内膜が厚くならない方も散見されます。ビタミンC,E、Lーアルギニン、G-CSFやhCGの子宮内投与等報告がみられますが、確立された治療法はまだありません。内膜の薄い方でもある程度の妊娠率があるデータを提示することができそうです。



FSHで卵巣刺激してもクロミフェンと妊娠率も多胎率も変わらない

排卵誘発剤を使用した人工授精(IUI)は、自然周期でのIUIと比べ妊娠率が上昇するが、多胎妊娠の可能性が増加します。2007年に発表されたCochraneのレビューによると、クエン酸塩クロミフェン(CC)よりFSHで排卵誘発した方が妊娠率は上昇し、双胎率は変わらなかったと報告しています。しかし、FSHで排卵誘発した方が多胎妊娠の可能性が増加したという報告もあり、結論が得られていません。


今回、FSHまたはクロミットで排卵誘発したIUIを行い、多胎妊娠を減らすため、IUIの中止基準を厳しく設定した場合の治療成績を比較検討した報告をご紹介いたします。


2018年9月 Human Reproductionから報告された
Follicle stimulating hormone versus clomiphene citrate in intrauterine insemination for unexplained subfertility: a randomized controlled trial
です。


厳格なIUI中止基準を遵守し、100mgのCCを用いた卵巣刺激と比較して75IUのFSHによる卵巣刺激の有効性を研究することを目的としています。


患者さんの対象は、1年妊娠していない原因不明不妊症で調整前運動精子300万以上、18歳から43歳、定期的な月経周期、少なくとも片側卵管が開存している方としています。
IUI中止基準は経腟超音波で直径が14 mm以上の小胞が3個以上、または径が12 mm以上の小胞が5個以上見られた場合としました。最大4サイクル、または6ヶ月以内に妊娠するまで治療しています。


結果
738組の夫婦中、369の夫婦がFSHに、369の夫婦はCCで卵巣刺激に割り当てられました。6ヶ月以内にFSH治療群で113例(31%)、CC治療群で97例(26%)妊娠しました(有意差なし)。双胎はFSH治療群では5例(1.4%)、CC治療群では8例(2.2%)であった(有意差なし)。品胎以上は認めませんでした。生児獲得はFSH治療群では105人(28%)、CC治療群では92人(25%)であった(有意差なし)。3つ以上の卵胞発育は、FSHとCCに差は認めませんでした(有意差なし)。FSH治療群とCC治療群で妊娠までの時間に差はありませんでした。
多胎妊娠率は、卵胞1個発育で0.2%、2個卵胞発育で0.7%でしたが、3個卵胞発育で1.8%と卵胞1個発育の 8.0倍も多胎になることがわかりました。


まとめ
厳しいキャンセル基準を設けた卵巣刺激を行なったIUIは、卵胞発育数を抑えることで多胎率を抑え、妊娠率をある程度期待できます。そのため、IVFは費用が高く体にも負担がかかることを考えると、IUIも有効であることがわかりました。
また、CCはFSHと比較して、妊娠率、生児獲得率、妊娠までの期間、双胎率において両群に統計学的有意差がないことを示していました。


この報告を参考にすると、CC 100mgとFSH 75IUは患者さんの負担を考えるとCCで卵巣刺激を行なった方がよさそうですね。



卵巣機能が悪い方は、ビタミンDレベルとAMH・FSHの関連はなさそう

こんにちは


今回、卵巣機能が悪い方はこのビタミンDと卵巣予備能を示すAMH・FSHの値が関連しないという報告です。


2018年9月 Fertility and Steriltyに発表された
"Vitamin D levels are not associated with ovarian reserve in a group of infertile women with a high prevalance of diminished ovarian reserve"
をご紹介いたします。


最近、様々な臓器にビタミンD受容体(VDR)がみつかり、ビタミンDの広い役割がわかってきています。ビタミンDは、肥満、免疫機能、メタボリックシンドローム、および心血管疾患、ならびに卵巣機能や卵巣機能不全および妊娠に関係しているといわれています。最近のメタアナリシスでは、適切なビタミンDレベルの女性は、ビタミンDレベルの低い女性と比較して、補助生殖技術(ART)の妊娠の可能性および出生の可能性が高いことが報告されています。


ビタミンDは、紫外線に暴露されると主に皮膚によって合成される脂溶性ビタミンです。ビタミンDを含む食品はほとんどありません。その結果、食事由来のビタミンDは全体のわずか10%-20%しかありません。食事および経皮的に生成されたビタミンDは生物学的に不活性であり、活性代謝物への酵素的変換を必要とします。ビタミンDは肝臓で主な循環型である25-ヒドロキシビタミンD(25OH-D)に代謝され、次に腎臓ではビタミンDの活性型である1,25-ジヒドロキシビタミンD(1,25OH-D)に代謝されます 。


以前の報告より25OH-Dと卵巣予備パラメータ抗ミュラー管ホルモン(AMH)およびFSHとの間の関係が示されています。本研究の目的は、卵巣予備能の低下した不妊女性における25OH-Dレベルと卵巣予備能検査(AMHおよびFSHレベル)との間に関係が存在するかどうかを調査することです。


<方法>
90日以内に25OH-D、AMHおよびFSHのベースライン測定値を有する21〜50歳の不妊女性457人が対象となりました。
患者を38歳未満および38歳以上の2つのグループに細分し、 25OH-Dレベルが3つのAMH閾値レベル(0.5,1.0および5.0ng / mL)でAMH値を予測できるかROC(Receiver Operating Characteristic;受信者動作特性)曲線を作成し検討しています。


<結果>
ROC分析では、38歳未満の女性の曲線下面積(AUC)は、それぞれ0.5ng / mL、1.0ng / mLおよび5.0ng / mLのAMH閾値について0.501,0.554および0.511であった。38歳以上の女性のそれぞれのAUCは0.549,0.545および0.557であった。(AUCが1に近いほど性能が高いモデル)
年齢、BMI、および季節変動を合わせて調整された25OH-DレベルとAMHおよびFSHを解析しても相関はみられませんでした。
これらから卵巣予備能(AMHレベルまたはFSHレベル)と25OH-Dの測定値との間に相関はなかったという結果でした。 


<まとめ>
この報告においてAMHレベルは、低および正常ビタミンDレベルを有する不妊症女性で変化しないことを見出しいます。 FSHレベルも変化せず、年齢およびBMIも同様でありました。ビタミンDは予想されたとおり季節変動を示していました。


卵巣予備パラメータとビタミンDレベルとの関係に関するこれまでの研究は、矛盾する結果を報告している。この結果は、ほとんどが卵巣予備能が低下した不妊女性の集団を研究たからと書いてありました。



ビタミンDは、様々な臓器系の生理学に関与しているが、卵巣機能および生殖生理学におけるその役割は、まだ完全に解明されていません。ビタミンDレベルが卵母細胞または胚の品質に影響を及ぼすかどうか、またはビタミンDが移植プロセスに何らかの形で影響を及ぼすかどうかは、さらなる調査が必要です。また、人種や民族性、環境が変われば結果が変わるかもしれません。