EDの早期発見は命を救う可能性がある?(原因によります)

第18回日本抗加齢医学会総会の”EDなんて恐くない”を聞いてまいりました。


一部ご紹介いたします。


EDとはErectile Dysfunctionの略で、勃起障害と訳されています。満足な性行為を行うのに十分な勃起が得られないか,または(and/or)維持できない状態が持続または(or)再発すること【ED診療ガイドライン(第3 版)】と定義されています。40歳以上の男性の3人に1人がEDと言われております。


EDのリスクファクターとして
加齢,糖尿病,肥満/運動不足,心血管疾患/高血圧,喫煙,テストステロン低下,慢性腎臓病/下部尿路症状,神経疾患,手術/外傷,うつなど精神的因子,薬物
睡眠時無呼吸症候群などが挙げられます。【ED診療ガイドライン(第3 版)】


 心血管疾患・動脈硬化のリスクファクターも高血圧,糖尿病,喫煙,脂質異常症,メタボリックシンドロームなどEDの発症危険因子と共通するところがあります。


 血管の壁にある内皮の機能は、このような様々な生活習慣病により、機能が低下します。血管内皮の機能低下により動脈硬化を進行させます。


 EDはこのような障害が重要な血管(心臓周辺の血管)よりも早期に起こることがあり、心血管疾患の早期予測因子として有用である可能性があると報告されています。これは心臓周辺の重要な動脈は2~4mmですが、陰茎動脈は1~2mmしかなく、血管内皮機能障害は細い陰茎動脈に表れる可能性があるからです。


 EDを発症したら、様々な原因検索することで、現在の体の状態を把握し、生活の改善、禁煙などを行うことで、心血管疾患や上記リスクファクターを改善することもできるかもしれません。


 つまりEDを早期発見し心血管疾患を発症する前に生活改善・治療することで、大事に至らずに過ごせるかもしれません。(もちろんEDの原因によります)

ビタミンD

第18回日本抗加齢医学会総会が大阪で開催され、参加してきました。



そこで今回は興味のある発表がありましたので報告します。


”光環境とエイジングについて”


ご存知の方もおられると思いますが、
ビタミンDは妊娠成立に重要な働きをする可能性がある
と言われています。




日光浴は皮膚でのビタミンD合成を促しますが、最近の生活習慣において日焼けがイヤで日光を避けたり、日焼け止めをたっぷり塗って外出したり、また魚肉の摂取量の低下のため、ビタミンD不足の方が多く存在します。




しかし、ビタミンDが不足すると体外受精の成績(生児獲得率、妊娠率)に関係するという報告が多いのです。妊娠に関してだけではなく、ビタミンDは免疫機能の調整に関係するため、自己免疫性疾患の治療、肥満・動脈硬化や糖尿病(インスリン感受性を改善)の予防効果なども報告されております。




なかなか不妊治療がうまくいかない方だけでなく、上記の予防効果も報告されておりますので、一度ビタミンDを測定してはどうでしょうか?


ただし過剰な日光浴は皮膚老化を促進するので注意してください。

採卵前のプロゲステロン上昇について

こんにちは


本日は卵巣刺激周期における卵胞期後期のプロゲステロン上昇についての報告を紹介したいと思います。


“Premature progesterone elevation in controlled ovarian stimulation: to make a long story short“


みなさんよくご存知かもしれませんが、”卵胞期後期のプロゲステロン上昇は新鮮胚移植の妊娠率を低下させる”という報告が多く存在します。
このような方は卵胞発育がよく全胚凍結することで新鮮胚移植(採卵周期に胚移植すること)、卵巣過剰刺激症候群を回避することが多いです。


一般的に排卵前はプロゲステロンは低値ですが、卵巣刺激中に卵胞期後期にプロゲステロンが上昇(progesterone elevation :PE)することがあります。


しかし、なぜプロゲステロンが上昇するか、すべてわかっているわけではありません。
PEは、卵巣刺激による外因性ゴナドトロピンが作用することから生じる現象ではないか
と書かれています。
簡単にいうと、「注射や内服で卵胞を育てると、たくさん卵胞ができプロゲステロンを出す細胞も増えるため排卵前にプロゲステロンが産生される。」のではないかといわれています。
この排卵前のプロゲステロン上昇が新鮮胚移植に悪影響をもたらす可能性があるのです。


以下の3つのことについて紹介します。
① どのくらいプロゲステロンが上昇すれば妊娠率に影響するか?
多くの研究者が閾値を0.9 ng / mLとしていましたが、1.2 ng / mLや1.5 ng / mLと設定し検討している報告もあります。さらに数千のIVF-ETサイクルを含むメタアナリシスでは、プロゲステロンレベルが0.8 ng / mLを超えると妊娠率に悪影響を及ぼすことを報告しております。様々な報告を検討したところ卵巣機能が良い群では低下した群と比較して、プロゲステロンレベル1.8-2.25ng / mlまで妊娠率は低下しなかった。多数卵胞形成されればプロゲステロンは上昇しやすいため、プロゲステロンと卵胞の比で検討している報告もあります。


→もちろんプロゲステロン値がいくつ以上で妊娠率が低下するとは結論付けできません。しかし卵巣機能が低下している場合はより新鮮胚移植の妊娠率に影響する可能性はあるかもしれません。
妊娠には胚の質や子宮内膜が影響しますので、以下検討しています。


② PEが胚の品質に及ぼす影響を及ぼすか?
ほとんどは胚の質には影響しないという報告でした。しかし、最良好胚の胚盤胞到達率はPEにより低下するという報告も最近出てきました。さらなる報告を待ちましょう。


③PEが子宮内膜の受容性に影響するか?
血漿プロゲステロンレベルが約1〜2ng / mLに上昇することで、子宮内膜を変化させ、子宮内膜受容性のタイミング(着床の窓)が変化する可能性を報告されています。さらに最近、マイクロアレイに基づく研究では、卵胞期の終わりに1.5ng / mLを超える早期プロゲステロン上昇が、子宮内膜遺伝子発現の変化や、子宮内膜におけるエピゲネチィックな変化を誘導することが示されています。


まとめますと
PEは、卵巣刺激による外因性ゴナドトロピンが作用することから生じる現象であり、おそらく子宮内膜を分泌期へ変化させる。この現象が子宮内膜受容性を変化させ新鮮胚移植後の妊娠率を低下させるかどうかは依然として議論の余地があります。卵巣機能が低下している場合はより影響する可能性はあるかもしれません。そのような場合、PEがみられれば全胚凍結の選択も考慮する必要がある。


ということなので、PEが認められれば今まで通り全胚凍結でも良いかもしれませんが、卵巣機能が低下している方はより新鮮胚移植を回避し胚凍結を考慮した方がよいかもしれません。

男性の睡眠時間が短いと妊孕性が低下する?

こんにちは。



本日はFertility and Sterility Vol. 109, No. 3, March 2018にある


"Male sleep duration and fecundability in a North American preconception cohort study"


という論文をみつけたのでご報告いたします。



この論文によると、男性の睡眠時間が6時間未満であれば、睡眠時間8時間と比べると有意に妊孕性が低下していると報告しています。


しかし、なぜ睡眠時間が短いと妊孕性が低下するかはわからないということです。


仮説として、睡眠時間が短いと、概日リズムに影響が出てメラトニンおよびコルチゾール分泌が変化する。このメラトニンはゴナドトロピンやテストステロンの分泌に影響を与え、精巣成熟を促進したり、精巣の損傷を防ぐ強力な抗酸化物質であるため、睡眠時間が短いと、妊孕性が低下するのではないかということです。



男性が不妊症の原因に40−50%ほど関わっていることを考えると、睡眠時間6時間未満の方は睡眠時間を長くすることで少しでも妊娠の手助けになるかもしれません。