子宮内膜スクラッチで妊娠率up

こんにちは


本日は子宮内膜スクラッチについての報告をご紹介いたします。


子宮内膜スクラッチはIVFの子宮内膜の感受性を増強し妊娠率を上昇をねらう麻酔を必要としない処置です。子宮内膜を傷つけることでサイトカインおよび増殖因子の放出によって局所的な急性炎症を引き起こし、着床のプロセスを促進すると報告されています。しかし、IVFの結果に影響するかは結論がでていません。また、スクラッチのタイミングや回数、デバイスは何で行うかなど明らかになっておりません。


2018年9月 Fertility and Steriltyに発表された
”Endometrial scratch injury for women with one or more previous failed embryo transfers: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials”
をご紹介いたします。


10件の報告をまとめたもので、ETを1回以上しても妊娠しなかった1,468人の参加者が含まれ、そのうち733人が介入群、735人が対照群に割り当てられいます。


<結果>
・スクラッチを行なった群が、行わなかった群より1.34倍臨床妊娠率が高かった。生児獲得率も1.38倍高かったが、多胎率や子宮外妊娠率は変わらなかった。


・高温期に2回、pipelleでスクラッチを行なった場合、生児獲得率が1.54倍、臨床妊娠率が1.3倍となった。


・ET2回以上しても妊娠しない方を対象とした場合、生児獲得率が1.64倍、臨床妊娠率が1.57倍となった。1回の不成功では効果がみられなかった。


新鮮胚移植において、生児獲得率が1.44倍、臨床妊娠率が1.49倍となった。しかし、凍結胚移植サイクルに関する2つの研究は、スクラッチの利点を見いださなかった。
(新鮮胚移植の際の早期の内膜成熟リスクを軽減させる?のではないかと考察されていました)


・スクラッチ効果を最大としたのは、スクラッチ前の子宮鏡検査でした。生児獲得率が2.07倍、臨床妊娠率が1.93倍となった。
(この報告では主に、子宮内膜表面の抗凝固糖タンパク質分子を除去し子宮頸部の癒合を改善するためではないか、また子宮鏡が子宮内膜表面に引っかかり、子宮内膜スクラッチ様の変化を引き起こしのではないかと書いてありました。)


<結論>
エビデンスレベルは高くありませんが、
まとめるとスクラッチの効果がみられそうな対象としては、
ET2回以上しても妊娠していない方で、新鮮胚移植サイクルに効果をもたらしそうであるということでした。


しかし、スクラッチのタイミングや回数、器具、方法などを確立できるような前向きRCTがまたれます。

胚移植する場合、ホルモン補充周期と排卵周期どちらがよいか?

こんにちは


本日は今までも報告がたくさんありますが、ホルモン補充周期と自然周期を比較した報告になります。


凍結胚移植を行う方法としてホルモン補充周期と自然周期があります。この移植の方法により妊娠率、生児獲得率が異なるという報告や変わらないという報告があります。


今回の報告は
2018年9月 Fertility and Sterilty
"Impact of method of endometrial preparation for frozen blastocyst transfer on pregnancy outcome: a retrospective cohort study"


後ろ向き研究なのでなぜFertility and Steriltyに採用されたかはわかりませんが、軽く紹介致します。(着床前診断を行った症例が含まれているからかもしれません)


グループA:ホルモン補充周期での胚移植
グループB:排卵日を0日とし5日目に胚移植を行う排卵周期での胚移植 黄体補充も行う。


計1,028個の凍結胚移植が行われ、そのうち923個はグループAにあり、105個はグループBに割り振られています。約1/4は着床前診断を行っていました。平均34.7歳と若い方を対象としております。


<結果>
グループAはBと比較し妊娠率、生児獲得率の改善がみられませんでした。グループAとBが同等かは症例数が少なく確認できませんでした。


妊娠率、生児獲得率の改善がみられなければ、ホルモン補充と自然排卵周期での胚移植のメリット、デメリットがありますので、どちらにせよ患者さんと話し合わなければなりません。


この報告は若い方を対象としているため、妊娠率も高く正常胚の可能性も高いため、内膜の因子があまり反映されずに妊娠率に差が出なかったのかもしれません。大規模な40歳以上の集団での前向き研究も待たれます。

採卵個数が増えると累積生児獲得率が上昇する。

こんにちは


今回は「採卵個数が増えるほど累積生児獲得率が増加する」いう報告が発表されましたのでご紹介いたします。


いままでの報告によると「採卵個数は10−15個で生児獲得率が頭打ちになり、それ以上であれば卵巣過剰刺激症候群のリスクが増えるだけ」というのが一般的でした。


しかし、2018年9月に
Fertility and Sterilty
"Cumulative live birth rates according to the number of oocytes retrieved after the first ovarian stimulation for in vitro fertilization/intracytoplasmic sperm injection: a multicenter multinational analysis including ∼15,000 women"
が報告されました。


この報告は初回体外受精14,469人の患者さんを対象に、アンタゴニスト法によるプロトコールで採卵し、新鮮胚移植、凍結胚移植を行い生児獲得率を調査しています。


結果は
採卵数とともに生児獲得率は着実に増加し、25個以上回収されたときに70%に達していました。また、この報告によると累積生児獲得率は頭打ちになっていませんでした。


しかし、新鮮胚移植にかぎると採卵数7個まで累積生児獲得率は上昇し、7〜20個になるとほぼ横ばい、20個以上では低下していました。


さすがに15−20個採卵できて新鮮胚移植するのは卵巣過剰刺激症候群になる可能性が高く全胚凍結にすると思います。また、報告では25個以上採卵している症例も多く、副作用を考えると30個採卵するなど臨床的ではないかもしれません。


この報告も結論でも述べられていたように、40歳未満の予後良好な女性において、卵巣刺激が胚の品質に有害な影響を与えないことをいえるのかもしれません。


採卵数が増加すればするほど累積生児獲得率が増えるからといって、副作用を起こしては元も子もありませんので採卵数はコントロールした方がよいでしょう。

単一胚移植か2個胚移植か

こんにちは


本日は胚移植する際、なかなか妊娠しない場合は2個胚移植することもあるかもしれません。しかしながら単一胚移植(SET)は、二個胚移植(DET)と比較した場合、多胎率を減らすIVFの推奨されたアプローチです。
また、胚盤胞期に複数の最高品質の胚(TQE)が利用可能である場合、女性の年齢にかかわらず、生児獲得率がSETとDETの間で変わらないという報告が多い。


今回、2個胚移植した場合と1個良好胚を移植した場合の成績を比較している報告になります。


Fertility and Sterilty
2018年9月
”Effect of transfer of a poor quality embryo along with a top quality embryo on the outcome during fresh and frozen in vitro fertilization cycles"
をご紹介いたします。



グループ分類として


グループ1は、1つのTQEを用いたSET群。
グループ2は、1つの poor quality embryos (PQE)用いたSET群
グループ3は、2つのTQEを用いたDET群。
グループ4は、DET=PQE + TQE群。
グループ5は、2つのPQEを用いたSET群。


TQEは、ガードナー分類でAA、AB、BAおよびBB
PQEは、AC、CA、BC、CB、およびCC


2010年から2016年の新鮮胚移植(n = 939)または凍結胚移植(n = 1,009)を受けた1,948例の患者のデータを前向きに収集しています。


結果
TQEのSETと比較して、PQEを有するSETの生児獲得率は、新鮮胚移植および凍結胚移植の両方で有意に低かった。
グループ1と比較するとグループ3(DETは2つのTQEを有する)の生児獲得率は高値でありました。
TQEを用いたSETと比較して、少なくとも1つのTQEが移植されたDETの多胎率は有意に高い結果でした。グループ5(2つのPQEを有するDET)およびグループ1(TQEを有するSET)の多胎率は同様でありました。


まとめ
この研究からのデータは、新鮮胚移植および凍結胚移植でTQEを有するSETと比較した場合、PQE + TQEのDETは生児獲得率を増加させず、多胎を増加させることを示しています。 したがって、TQEが1つの以上ある場合、本研究はDETをサポートしないという結論でした。



PQEがTQEの悪影響を及ぼすかは様々な報告があり、関係がないという報告や悪影響を与える可能性があるという報告があります。しかし、多胎が増加する可能性を考えるとSETを行う方がよいのでしょう。


ただ、PQEを2回に分けて胚移植すると時間もコストも来院する労力もかかってしまいます。特に高齢の方も1周期が重要となります。この報告ではPQEのDETの症例数が少なく、さらなる研究がまたれます。

極体生検による染色体スクリーニング検査は1年間の累積妊娠率を上昇させるか?

こんにちは


本日は極体の染色体を調べることで1年間の累積妊娠率が上昇するか調べた報告をご紹介いたします。


2018年9月 Human Reproductionから報告された
“Preimplantation genetic testing for aneuploidy by microarray analysis of polar bodies in advanced maternal age: a randomized clinical trial”
です。


胚の数的染色体異常は、着床不全や流産を引き起こす主な原因と考えられています。PGT-A(PGS)は着床前遺伝子検査として知られていますが、無作為化臨床試験において、PGT-Aでは妊娠率を上昇することはできず、場合によっては妊娠率を低下したことなどさまざま報告されております。今回は栄養外胚葉ではなく極体を生検・染色体分析した受精卵の報告になります。
極体は卵子が放出したものであるため、卵子側の染色体を間接的に検査することとなります。極体には23本の染色体があるはずですが、染色体検査し21本しかない場合、卵子には25本の染色体があることと判断し異常な染色体と考えます。


この報告は第一極体および第二極体の23本の染色体分析が、36-40歳の女性において1年間の累積妊娠率を増加させるかどうか検討したものです。


205人がPGT-A群(研究グループ)、191人がPGT-Aを行っていない群(コントロールグループ)に割り当てられた。


生児獲得率は、PGT-A群205人のうち50人(24%)、コントロール群で191人中45人(24%)と有意差はありませんでした。1個でも極体染色体検査できた180人の参加者のうち、65人(36%)は、正倍数性の卵が0であることが判明しました。この報告ではコントロール群でET回数および妊娠反応陽性数が多かったが、生児獲得率は同様でありました。
流産率は、PGT-A群がコントロール群より有意に少なかった(7対14%; P = 0.02)。
生児獲得までの時間を示す曲線は主に重複しており、PGT-A群とコントロール群において妊娠までの時間に有意差はありませんでした。


まとめ
PGT-Aは累積出生率を上昇させないが、流産の減少や妊娠期間の短縮などの改善がみられるという報告が多い。またRubioらの研究では高齢になるとPGT-Aがより効果的になるかもしれないと報告しています。
この報告は36〜40歳の女性を対象としておりますが、極体生検による染色体分析は生児獲得率、妊娠までの時間に有意差はありませんでした。しかし、流産率は有意に低下していました。