新型コロナワクチン接種による妊娠への影響

SARS-CoV-2 に対するワクチン接種またはワクチンの種類が、生殖補助医療における卵巣機能に影響を与えるかどうかを評価した報告をご紹介いたします。


Fertility and Sterility® Vol. 119, No. 4, April 2023 Pages 618-623


この報告をだしているスペインでは、ファイザー/BioNTech (BNT162b2)、モデルナ (m-RNA-1273)、アストラゼネカ (ChAdOx)、ヤンセン  (Ad26.COV2.S) の 4種類のワクチンがありあります。 ファイザーとモデルナのワクチンは、生きたウイルス粒子を含まない mRNA ベースのワクチンです。これらの新しいワクチンは、安全性を完全には証明することができず、生殖年齢の女性において躊躇されることがあります。


この報告は、SARS-CoV-2 ワクチン接種前後の生殖補助医療の臨床成績を評価しています。


ワクチン接種したのは510 人で、内訳は31人がヤンセン、38人がアストラゼネカ、残りの 86.5% (441人) は、ファイザー (n = 336) またはモデルナ (n = 105) の mRNA ワクチンが投与されています。ワクチン投与していない女性は1190人でした。 この方々に生殖医療を行い臨床成績を比較検討しています。


ワクチン前後で卵巣刺激の長さ、薬剤投与量、採卵数、成熟卵数、受精率、使用可能な胚盤胞数は変わらず、mRNAワクチンに制限しても変わりませんでした。
ワクチンの種類で検討しても、ワクチン投与の有無で検討しても薬剤投与量、採卵数、成熟卵数、受精率、使用可能な胚盤胞数は変わりませんでした。


ポアソン回帰モデルで採卵数の交絡因子を評価したところ、年齢が著しく影響していましたが、ワクチンの有無では影響していませんでした。


まとめ
この報告では、ワクチン接種も投与されたワクチンの種類も卵巣機能に影響を与えないこと、また生殖補助医療の臨床成績にも影響しないことが示唆されました。生殖の観点からは、不妊を引き起こすという理論上のリスクはないため、ワクチンは推奨されるべきです。
とういう結論でした。


ちなみに
 過去の報告でSARS-CoV-2スパイクタンパク質と、発生中の胚における胎盤の形成に重要なタンパク質であるsyncyntin-1との間の類似性が指摘されており、このタンパク質に対して産生された抗体も胎盤を攻撃し、流産を引き起こす可能性も考えられます。しかし、ワクチンにはシンシチン-1またはそのmRNA配列が含まれていないため、これらの主張は覆されています。
 さらに、ワクチン接種を受けた妊婦とワクチンを受けていない妊婦の周産期の結果を比較した多くの観察研究があり、安心できる結果が得られました。 妊娠や新生児への悪影響は証明されていません。

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