PCOSでAMHが高値であればFSH投与量が増加する?

多嚢胞性卵巣症候群 (PCOS)の方で抗ミュラー管ホルモン(AMH)が高値であれば、FSH注射の反応が悪くなる可能性があるという報告をご紹介いたします。


Huang et al. Reproductive Biology and Endocrinology (2023) 21:121


 多嚢胞性卵巣症候群 (PCOS) は、生殖年齢の女性の 5 ~ 20% が罹患している排卵障害を引き起こす原因の一つです。Tummonらの報告によると、PCOSの場合、卵巣過剰刺激症候群を引き起こす可能性は 一般と比較すると6.8倍上がることがわかりました。AMH(抗ミューラー管ホルモン)が、ゴナドトロピンの卵巣刺激への反応性を予測する因子としてあげられます。AMHが著しく上昇しているPCOS女性は、クエン酸クロミフェンまたはHMGによる排卵誘発に抵抗性があるようであり、開始用量が多く必要となる可能性がいくつか報告されています。AMH > 4.6 ng/mlのPCOS症例はHMG刺激に耐性があり、ARTサイクル中に用量の増量が必要であることがKamel Aらが報告しました。
 この研究は、PCOS 患者さんの IVF/ICSI に対する卵巣刺激に反応するか、rFSH の開始用量を増やす必要性があるかを AMH値により予測できるか調べています。



825人のPCOS患者さんを対象とし、FSHの初回投与量は、BMIとAMH、卵巣にみえる小卵胞の数により調整しています。反応性が確認できるまで、24 ~ 48 時間後に25 ~ 50 IU 増量するか判断されていました。


<結果>
 825 人中508人は初期rFSH用量を増量しなかった(グループA)、317人は初期rFSH用量を増量する必要がありました(グループB)。 rFSH の初期用量を増やす必要があった PCOS 女性は、AFC、BMI、血清 T 濃度が高い結果でした。AMHレベルは、グループBが、グループAよりも有意に高い結果でした。


 多変量解析では、AMHとBMIが高くなれば、投与量の増量が必要になることが示されました。次にAMH のカットオフ値を設定するため、ROC 曲線を作成しています。AMH のカットオフ値は 9.30ng/ml で、感度は 75.4%、特異度は 63.0% でした。


 9.30ng/mlにカットオフ値を用いて、2群に分けたところ、AMH > 9.30 ng/ml群 の 58.8%、AMH ≤ 9.30ng/ml群 の18.8%と比較して、rFSH 用量の増量が必要でありました。 臨床妊娠率と出生率に有意な差はありませんでしたが、AMH > 9.30 ng/mlの女性では卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の発生率が高い結果でした(20.8% vs. 15.3%)。


<まとめ>
 この研究によると、血清AMHが9.5 ng/mlを超えるPCOS女性は、十分な卵胞発育するための初期rFSH用量の増量が必要でありました。このことは、過剰なAMHがrFSHに対する卵巣反応と「負の」相関があることがわかりました。臨床妊娠率と出生率は両群同様ですが、AMH が高い患者では OHSS 率が大幅に高いことが示されました。



 考えられる要因としては、Hayes Eらのin vitroの研究では、AMH が休止中の原始卵胞プールからの卵胞の発育を阻害し、FSH 刺激による前胞状卵胞の成長を減弱させることが示されました。 Chang HMやPellatt Lらの報告では、高濃度の AMH で培養されたヒト顆粒膜細胞は、アロマターゼ活性の阻害と FSH に対する卵胞の反応性の低下を示しました。 PCOS 女性に存在する高 AMH 濃度は、FSH の作用に対する阻害的な影響により、卵胞形成のプロセスに有害であると考えられます。

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