AMHと早発閉経は関連する?

閉経年齢は年齢、BMI、喫煙期間、妊娠歴などが影響すると言われています。しかし、AMHについては様々な報告があります。


今回信頼性のある前向き研究で、AMH値と45歳までの閉経と関係しているか調査した2018年6月のHuman reproductionで発表された報告をご紹介いたします。


”Anti-Müllerian hormone levels and incidence of early natural menopause in a prospective study”


西洋人の早期自然閉経の罹患率は高く、45歳までに閉経する女性は10%ほど存在するようです。基本的には閉経してしまうと妊娠はできなくなり、早発閉経に伴うホルモンの変化は、心血管疾患、骨粗鬆症、認知低下および他の慢性疾患のリスクを増加させる可能性があります。 出生率の低下が始まる前に早期閉経を予測することは、女性が出産のタイミングについて、より情報に基づいた決定を下し、治療の選択肢を検討することを可能できます。


この報告はAMHレベルが早期閉経のリスクと関連するかどうかについて、前向きに評価しています。


結果は年齢、性別、不妊症およびその他の要因を調整した後の分析でも、45歳未満の閉経とAMHレベル低値との間に強い相関関係が認められました。 


このため生殖機能低下のリスクファクターの有無にかかわらず、健康な女性において早期閉経リスクを知るマーカーとして、AMHが有用と報告していました。

未破裂黄体を予測する

こんにちは


本日は2018年の6月
Human Reproductionから報告された


Follicle growth and endocrine dynamics in women with spontaneous luteinized unruptured follicles versus ovulation


をご紹介いたします。


今回未破裂黄体化卵胞(luteinized unruptured follicle:LUF)に関する報告です。


LUFとは排卵できないまま黄体化した卵胞の状態です。(排卵できずに黄体期になるようなものです。)LUFの発生率は12.5%くらいで珍しくありません。LUFが起きると高温期になかなかならなかったり、月経周期がずれたりすることがあります。


今回自然周期において、このLUF群と排卵群を比較検討しております。


28.2±1.0歳(平均±SEM;範囲:19〜41歳)の合計56人の女性を対象に、卵胞径、ホルモン測定を行いました。


結果です。
排卵群と比較して、LUF群は卵胞期早期より発育し、発育速度も早く最大径も大きかった。LUF群は卵胞発育の初期段階におけるLH濃度の低下も特徴的であった。さらにLUF群は卵胞が最大となった時のLHは低く、プロゲステロンは高かった。


まとめ
卵胞発育の速さや上記のホルモン動態を考慮することで、早期にLUFの予測を立てることができる可能性があり、最適な診療を行うことができるのではないかと報告しています。


LUFは卵胞発育速度が早く、ホルモン状態はLHが低く、プロゲステロンが低いのが特徴的とのことでした。

ホルモン補充周期で胚移植を行う際、エストロゲンの投与期間で生児獲得率が変わる

こんにちは


本日は


Prolonged estrogen (E2) treatment prior to frozen-blastocyst transfer decreases the live birth rate


2018年5月に発表されたフランスの報告をご紹介します。


胚移植の方法として
①薬剤を使用して内膜を厚くする方法と
②排卵させて胚移植する方法があります。


今回は①薬剤を使用して胚移植する方法を検討しています。


エストロゲンにて子宮内膜を厚くし妊娠を試みますが、このエストロゲンの投与期間が生児獲得に影響するか調べた報告になります。


胚移植前のエストロゲン投与期間を
①21日以下
②22−28日
③29−35日
④36−48日


とし検討しています。


エストロゲンの投与方法は経皮的に1日に0.2mgまたは1日2回4mg経口投与としています。子宮内膜の厚さが6mm未満またはプロゲステロン≧1.5ng / lであれば、胚移植はキャンセル。プロゲステロンは1日3回200mgの用量で開始しています。


852人の女性、1377個の胚盤胞移植が行われ比較検討されています。


結果です。
単変量解析(ひとつの項目のみで比較する方法)では
生児獲得率は、③エストロゲン投与29~35日群(OR = 0.66; 0.46~0.95)および④エストロゲン投与36~48日群(OR = 0.49; 0.27~0.89)において①対照群エストロゲン投与21日以下と比較して有意に減少していました。
流産率も④の36〜48日投与群(OR = 2.37; 1.12-5.05)が有意に高いという結果でした。


新生児の平均出生体重
④エストロゲン投与36 -48日群(3042±801.2g)は対照群(3362±602.9g)と比較し有意に軽いという結果でした。


そこで多変量解析(単変量解析より信用できる解析。生児獲得率に影響する因子をみつける)を行った所、母体年齢(OR 0.72 95%CI [0.56-0.93])、良好胚の移植(OR = 1.74; 1.20-2.53)、およびエストロゲン投与期間でありました。


まとめとして、
単変量解析でも多変量解析でもエストロゲン投与期間が生児獲得に影響するようでした。


また、エストロゲン投与36 -48日群で出生体重が他の群より軽いというのも重要であり、さらなる報告も発表されるかもしれません。


しかしこの論文では、エストロゲンを36 -48日投与しても内膜が8.22mmなので、もともと内膜が厚くなりにくい方が含まれているのかもしれません。


めったにエストロゲン投与期間が36 -48日までいくことはありませんが、こういう報告があるということは覚えておいても良いかもしれません。


もっと大規模な前向き研究を期待しましょう。


赤ワインの抗酸化作用

こんにちは


本日はレスベラトロールについてご紹介します。


赤ワインから見つかったレスベラトロールは、抗酸化作用、エストロゲン様作用、抗炎症作用、抗腫瘍作用など様々な生理作用の存在が知られています。


不妊治療においては、内服することで卵子の質を改善する可能性が知られています。


今回このレスベラトロールを培養液に添付することで、加齢卵の質が改善したという最新の報告をご紹介します。


Resveratrol improves in vitro maturation of oocytes in aged mice and humans


 加齢マウスとヒトの未熟なGV卵(第一減数分裂前期の卵)をレスベラトロール添付した培養液で体外成熟培養を行います。そうすることで加齢マウスおよびヒトの未熟なGV卵において第一極体の放出率が上昇し、そして加齢マウスにおいて受精率及び胚盤胞形成率が上昇しました。さらに、ミトコンドリアの免疫蛍光強度および体外成熟培養を受けた卵の紡錘体および染色体の形態は、加齢マウスおよびヒトにおけるコントロールと比較して顕著に改善されました。
 次にレスベラトロールの濃度を検討しました。加齢マウス卵において1.0μM濃度のレスベラトロール添加培養液で培養することにより抗酸化遺伝子の増加を認めました。0.1μMや10μMでは抗酸化遺伝子の増加を認めませんでした。
 つまり、培養液に添加したレスベラトロールは加齢マウスにおける卵の成熟および胚盤胞形成を誘導し、加齢したヒトでは卵の成熟および質の改善を認めました。1.0μMレスベラトロールが体外成熟の適切な培養濃度でありました。


難しいので簡単にまとめると
レスベラトロール1.0μM添加した培養液で、加齢卵の質が改善した
ということです。


レスベラトロールを内服するだけではなく、培養液に入れても卵の質が改善する可能があるという報告でした。


この報告だけで今後どうこうなるわけではありません。


ウシでも同様の報告があるようです。追加報告を待ちたいと思います。


補足:
・GV卵の減数分裂が進むと第1極体を放出する。


・卵における細胞エネルギー代謝に不可欠なミトコンドリアは、カルシウム恒常性の維持およびアポトーシスの調節にも必要である。その結果、ミトコンドリア機能障害は、加齢卵の細胞障害と不妊の原因となる。


紡錘体:染色体を極に移動させる繊維性の構造。これがうまく働かないと染色体を移動させることができない。

アンタゴニストの適正な投与開始時期

こんにちは


本日アンタゴニストの適正な投与開始時期について検討した報告になります。


Cycle day, estrogen level, and lead follicle size: analysis of 27,790 in vitro fertilization cycles to determine optimal start criteria for gonadotropin-releasing hormone antagonist
をご紹介します。



体外受精を行う際、卵を多数発育させるために卵巣刺激を行います。しかし、刺激によりエストロゲンが上昇すると採卵する前に排卵してしまいますので、アンタゴニストという薬剤で排卵を抑制して採卵できるようにします。(アンタゴニスト法)
このアンタゴニストは、卵巣過剰刺激中の早期LHサージを阻害する新規な方法として、1990年代に導入されました。それまでは自然周期やアゴニストという鼻のスプレーなどで排卵を止めて採卵していました。


アンタゴニスト開始日を固定した方法(刺激開始何日目に開始する)や、卵胞径が14mmになったら開始するなどflexibleに決める方法などがあります。


卵巣刺激中のアンタゴニストの理想的なタイミングを決定するためのさらなる研究が必要であると、インパクトファクターの高い米国生殖医療学会およびコクランのレビューは結論付けています。


そこでこの報告は、27,000回以上の卵巣刺激を調査した大規模多施設データベースを用いて検討しています。


結果として、アンタゴニスト開始時期は治療周期日、エストラジオール値、卵胞の大きさが、妊娠の独立した因子であることが明らかとなりました。


エストロゲンレベル 500〜599pg / mLでアンタゴニスト開始すれば臨床妊娠率が最高でした。 しかしながら、エストロゲンレベルが300pg / mL未満または1,100pg / mLを超えてアンタゴニストを開始した場合に臨床妊娠率は有意に減少しました。


こればエストロゲンが低いと子宮内膜が育たず着床を妨げるのではないか?や卵胞形成に関係する細胞分裂に影響するのではないか?またエストロゲンが高いと子宮内膜の受容性の低下または卵の過熟するのではないか?と考察しています。


まとめますと
新鮮胚移植する場合は、いままでどおりアンタゴニスト開始日を固定した方法や卵胞径をみながらアンタゴニスト開始することだけではなくエストロゲン濃度も大事ですよという報告でした。(エストロゲンレベルが300pg / mL未満または1,100pg / mLを超えてアンタゴニストを開始するのを避けたほうがよい


もちろんこの報告が全て正しいかどうかはわかりませんのでランダム化比較試験が必要です。