体外受精開始前の処置について
ESHRE(ヨーロッパ生殖医学会)が体外受精の卵巣刺激におけるガイドラインの指針案を発表しています。
本日は”体外受精開始前の処置について”ご紹介致します。
①エストロゲンでの前処置
GnRHアンタゴニストプロトコールにおいて、卵巣刺激前にエストロゲンで前処理することは、おそらく有効性と安全性を改善するために推奨されません。(Conditional)
2017年のコクランでは、GnRHアンタゴニストプロトコールにおいてエストロゲン前処置と前処置なしを比較した場合、生児獲得率/継続妊娠率、臨床妊娠率に差を認めませんでした。しかし、採卵数はエストロゲン前処置した方が多かったと矛盾しているような結果でした。他のRCTでもGnRHアンタゴニストプロトコールにおいて、臨床妊娠率に有意差はないと報告されています。
②プロゲステロンでの前処理
GnRHアンタゴニストプロトコールにおいて卵巣刺激前にプロゲステロンで前処理することは、おそらく有効性と安全性を改善するために推奨されません。(Conditional)
2017年のコクランでは、プロゲストゲン前処置と介入していない群を比較した場合、GnRHアゴニストプロトコールにおける生児獲得率/継続妊娠率に群間差はありませんでした。 GnRHアンタゴニストプロトコールにおいて、出生時/継続中の妊娠率に差があるかどうかを決定するための十分な証拠はありませんでした。
プロゲストゲンによる前処理が、採卵数において、GnRHアゴニストおよびGnRHアンタゴニストの両方においてグループ間の差異をもたらしたかどうかを決定する十分な証拠はありませんでした。
・採卵日のスケジューリング目的に使用することは、有効性と安全性に関するデータを考えると、おそらく許容できるでしょう。
③ピルでの前処置
ピルでの前処置(12〜28日)は、GnRHアンタゴニストプロトコールでは推奨されない。(strong)
ピルでの前処置を行ったGnRHアンタゴニストプロトコールでは、生児獲得率/継続妊娠率は前処置なしの場合よりも0.74倍低い結果でした。
poor responder(女性80人)においては、生児獲得率/継続妊娠率、採卵数に差を認めませんでした。
2018年の他の報告ではGnRHアンタゴニストプロトコールでピルでの前処置(10日)と前治療なしを比較し、臨床妊娠率、採卵数、OHSS発生頻度に有意差を認めていません。短い期間であれば悪影響はないのかもしれません。また、FSHの種類、ピルの種類によっても結果が異なるかもしれません。(今回はエチニルエストラジオールとレボノルゲストレルまたはデソゲストレル)
④アンタゴニストでの前処置
アンタゴニストプロトコールにおいて刺激開始を遅らせる卵巣刺激前のGnRHアンタゴニスト投与はおそらく推奨されない。(Conditional)
正常反応女性を対象とした小規模RCTでは、アンタゴニスト開始日を固定した方法と、卵胞期にアンタゴニストを刺激前に投与した方法において、継続妊娠率および採卵数に差はありませんでした。
同様に、poor responderを対象としても生児獲得率、採卵数に差を認めませんでした。
他にも、臨床妊娠率が高くなったという報告もありますが、2017年の小規模RCTでは臨床妊娠率、採卵数に変わりはなかったという結果でした。