AMHとFSHの値により生児獲得を予測できるか?

本日は抗ミュラー管ホルモン(AMH)とFSHの値により生児獲得を予測できるか調べた報告をご紹介いたします。


2019年7月 Fertility and Sterilty
“Low antimüllerian hormone (AMH) is associated with decreased live birth after in vitro fertilization when follicle-stimulating hormone and AMH are discordant”


前胞状卵胞数を評価するために使用される卵巣予備試験が含まれることがよくあります。この評価は通常卵巣超音波検査および生化学的マーカー検査を組み入れており、最も広く使用されているツールはFSHおよびAMH測定であります。


月経3日目のFSHレベルの上昇(10−25 mIU / mL)は、性腺刺激ホルモン刺激に対する反応不良および妊娠の可能性の低下と関連しています。
FSHとAMHは、どちらも標準的な卵巣予備検査として治療の方針を決める上でよく使用されます。しかし、FSHとAMHは統計的に一致していますが、患者の20〜43%で一致ないと報告されています。


この研究は米国の生殖補助医療補助技術全国要約報告書のデータベースを用いて、AMHとFSH検査結果が一致しない場合、生殖補助医療技術(ART)後の生児獲得予測においてAMHまたはFSHのどちらが優れていたかを評価しています。



IVFを行なった方のFSHとAMHの値を比較した後ろ向きコホート研究で44,696件を
コホートA:FSH≦10 mIU / mLおよびAMH≧1.0 ng / dL
コホートB:FSH> 10.0 mIU / mLおよびAMH≧1.0 ng / dL
コホートC:FSH≦10 mIU / mLおよびAMH≦1.0 ng / dL
コホートD:FSH> 10.0 mIU / mLおよびAMH <1.0 ng / dL
と分類しFSHとAMHに基づいて生児出生率を比較しています。


コホートA :64%、コホートB:10%、コホートC:15%、コホートD:11%に分類され、FSH高値およびAMH低値の罹患率は年齢とともに増加していました。


44,696サイクルのうち、17,036サイクル(38%)が出産されていました。生児獲得率は、コホートAで44%と最も高く、コホートDで19%と最も低い果でした。コホートCと比較して、コホートBの生児獲得率が有意に高い結果でした。


合計4,211(9%)のIVFサイクルでキャンセルとなっており、コホートBと比較して、コホートCでは、IVFキャンセルの頻度が多かった。


AMHが正常群(コホートAおよびB)は、73%が採卵数11〜20個で、AMHが低下群(コホートCとD)は86%が採卵数10個以下でした。


多変量解析を行い、正常FSH群に限定し潜在的な交絡因子を除いた後、AMH低値が生児獲得に関連していたかどうかを評価したところ、高齢女性、アフリカ系アメリカ人とアジア人、中西部の診療所、子宮不妊症の診断、アゴニスト抑制なし、FSH投与量の増加は生児獲得低下と関連していました。生児獲得の相対リスクは、AMH正常群と比較してAMH低値群では調整後、0.87倍でありました。


<まとめ>
FSHとAMHが一致しない場合、AMHは生児獲得の優れた予測因子の可能性があるという結論でした。

AMHとFSH

本日はAMHとFSHの値により生児獲得を予測できるか調べた報告をご紹介いたします。


2019年7月 Fertility and Sterilty
“Low antimüllerian hormone (AMH) is associated with decreased live birth after in vitro fertilization when follicle-stimulating hormone and AMH are discordant”


前胞状卵胞数を評価するために使用される卵巣予備試験が含まれることがよくあります(3)。この評価は通常卵巣超音波検査および生化学的マーカー検査を組み入れており、最も広く使用されているツールはFSHおよび抗ミュラー管ホルモン(AMH)測定である


卵巣予備検査として通常卵巣超音波検査での卵胞数確認や採血でのFSH、抗ミュラー管ホルモン(AMH)測定が行われています。
月経3日目のFSHレベルの上昇(10−25 mIU / mL)は、性腺刺激ホルモン刺激に対する反応不良および妊娠の可能性の低下と関連しています。
FSHとAMHは、どちらも標準的な卵巣予備検査として治療の方針を決める上でよく使用されます。しかし、FSHとAMHは統計的に一致していますが、患者の20〜43%で一致ないと報告されています。


この研究の目的は米国の生殖補助医療補助技術全国要約報告書のデータベースを用いて、AMHとFSH検査結果が一致しない場合、生殖補助医療技術(ART)後の生児獲得予測においてAMHまたはFSHのどちらが優れていたかを評価することです。


IVFを行なった方のFSHとAMHの値を比較した後ろ向きコホート研究で44,696件を
コホートA:FSH≦10 mIU / mLおよびAMH≧1.0 ng / dL
コホートB:FSH> 10.0 mIU / mLおよびAMH≧1.0 ng / dL
コホートC:FSH≦10 mIU / mLおよびAMH≦1.0 ng / dL
コホートD:FSH> 10.0 mIU / mLおよびAMH <1.0 ng / dL
と分類しFSHとAMHに基づいて生児出生率を比較しています。


コホートA :64%、コホートB:10%、コホートC:15%、コホートD:11%に分類され、高FSHおよび低AMHの罹患率は年齢とともに増加していました。


44,696サイクルのうち、17,036サイクル(38%)が出産されていました。生児獲得率は、コホートAで44%と最も高く、コホートDで19%と最も低い結果でした。コホートC(正常なFSH+低いAMH)と比較して、コホートB(高いFSH患者+正常なAMH)の生児獲得率が有意に高い結果でした。


合計4,211(9%)のIVFサイクルでキャンセルとなっており、コホートBと比較して、コホートCでは、IVFキャンセルの頻度が多かった。


AMHが正常群(コホートAおよびB)は、73%が採卵数11〜20個で、AMHが低下群(コホートCとD)は86%が採卵数10個以下でした。


<まとめ>
FSHとAMHが一致しない場合、AMHは生児獲得の優れた予測因子です。

精子DNA 断片化と流産

不育症の原因検索は女性側に行われることが多いですが、今回ご紹介する報告は男性側に焦点をあてています。


2019年7月 Fertility and Sterilty
" Sperm DNA fragmentation and recurrent pregnancy loss: a systematic review and meta-analysis"


精子DNA 断片化指数検査(DFI 検査) は、射出精子中にDNA損傷を起こしている精子の割合を知る検査です。精子DNAはプロタミンにしっかりと結合しており、外部からのダメージからDNAを保護します。 DNAの断片化が起こると、わずかな損傷であれば受精後の胚によって修復される可能性があります。しかし、胚によって修復可能な閾値を超えた著しいDNA断片化は、胚の発生不良、着床失敗、および流産の一因となる可能性があります。


ただ、米国生殖医学協会(ASRM)および米国泌尿器科学会は、不妊症の一般的な検査でDNA断片化を実施には根拠が不十分であると述べています。


この報告では精子DNA断片化と反復する流産(RPL)との間に有意な関係があるかどうかを判断するために、系統的レビュー・メタアナリシスを行なっています。


<結果>
前向き研究15件が定性分析に含まれ、RPL:579人の精子DNA断片化について、対照男性:434人と比較されました。
①RPL女性の男性パートナーは、対照男性よりも有意に精子DNA断片化率が高い結果でした。(MD 10.7、95%CI 5.82〜15.58)。
②RPLが2回、3回以上の流産として定義された場合のサブグループ分析
・2回流産と定義した場合、RPL女性の男性パートナーは、対照男性よりも有意に精子DNA断片化率が高い結果でした。(MD 12.51、95%CI 2.14–22.89)。
・3回流産と定義した場合も同様、RPL女性の男性パートナーは、対照男性よりも有意に精子DNA断片化率が高い結果でした。(MD 9.12、95%CI 3.16–15.08)。
③精子DNA断片化測定法についてサブグループ分析を行なったところ、検査法が違っても、RPL女性の男性パートナーの精子DNA断片化率が高い結果でした。


<まとめ>
精子DNAの断片化がRPLと関連していることが示唆されました。ただ、研究間で結果が著しく異なっており、さらに大規模な前向き研究が必要です。


RPLは女性だけでなく、男性側(精子DNA断片化)も関係しているのではないかという報告でした。

睡眠、勤務体系は妊娠に関連するか

米国では睡眠障害の罹患率が増加しています。 1985年以来、睡眠時間が1日6時間未満である成人は31%と増加しており、24%は睡眠障害を訴えています。睡眠障害は男性よりも女性に多くみられ、女性は男性よりも眠りにくく、睡眠の質が悪い傾向があるということです。睡眠時間は、心臓病、肥満、糖尿病、全死亡率のリスク増加と関連しており、7〜8時間が最もリスクが低いと報告されています。


台湾の前向きコホート研究では、睡眠時に無呼吸障害のある女性は、睡眠障害のない女性と比べて3.7倍の不妊のリスクがあると報告されています。体外受精に関する研究では、採卵数と睡眠時間に正の相関があると報告されています。


今回は”睡眠障害があると受胎能に中等度の低下することと関係があるのではないか、また睡眠時間が短いと受胎能が低くなることと関係があるのではないか。”という報告をご紹介いたします。


2019年5月 Fertility and Sterilty
"Female sleep patterns, shift work, and fecundability in a North American preconception cohort study"


この研究は北米のコホート研究において女性参加者の妊娠と睡眠時間および睡眠の質の影響を調べています。また、交代制勤務(午後10時から午前2時頃までの勤務として定義)が妊娠とどの程度関連しているかについても検討しています。


<結果>
妊娠を試みている21〜45歳で6か月以内の妊娠を試みている6,873人を対象としています。1日8時間睡眠と比較すると受胎率は、1日6時間未満:0.89(95%CI、0.75-1.06)、6時間:0.95(95%CI、0.86-1.04)、7時間:0.99(95%CI、0.92-1.06)、9時間以上:0.96(95%CI、0.84-1.10)でした。睡眠障害がない群と比較すると受胎率は、睡眠障害が50%未満の群:0.93(95%CI、0.88-1.00)、睡眠障害が50%超の群:0.87(95%CI、0.79-0.95)でした。交代制勤務と受胎に関連はありませんでした。


<まとめ>
夜間の睡眠障害があると受胎能に中等度の低下することと関係がある、また睡眠時間が短いと受胎能が低くなることと関係がある。交代制勤務と受胎に関連はないという結論でした。

提供卵を採卵する際、排卵抑制剤はアンタゴニストとMPAどちらがよいか?

採卵を行う際、排卵すると卵を獲得できなくなる可能性が高いため、排卵しないようにLH サージを抑制させる方法があります。GnRHアンタゴニストは内因性LHサージを抑制し、GnRHアゴニストにより卵成熟を誘導することで、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスクを低下させ成熟卵(MII)を回収することができます。
また、黄体より分泌されるプロゲステロンは、GnRHの拍動性分泌およびLH分泌を阻害します。メドロキシプロゲステロン17−アセテート(MPA)は、合成プロゲスチンであり、高いプロゲステロン活性および抗ゴナドトロピン作用を有します。 MPAは、卵巣刺激におけるLHサージの抑制に効果的と報告されています。MPAピークは経口投与の3時間後、半減期は24時間であります。アンタゴニストより安価であり、ARTにかかるコストを抑えられます。


今回卵子提供胚を採卵する際、排卵抑制をアンタゴニストとMPAどちらかで行った方が良いか両群を比較した報告をご紹介いたします。


2019年5月 Fertility and Sterilty
"Medroxyprogesterone acetate versus ganirelix in oocyte donation: a randomized controlled trial"


この研究では、oocyte donationにおけるガニレリックス(GnRHアンタゴニスト)とメドロキシプロゲステロンアセテート(MPA)の有効性を評価することであります。


MPA 10 mg /日とガニレリクス0.25 mg /日を1:1に分け比較する第IV相無作為化臨床試験です。
MII卵数、rFSHの総用量、卵巣刺激中のホルモン値、LHサージ、受精率、生化学妊娠率、臨床妊娠率、進行妊娠率および出生率などを2群間で比較しています。


<結果>
MPA群:86人、ガニレリクス群:87人を対象とし、GnRHaをトリガーにて採卵。
MⅡ卵数はMPAで15.1個、ガニレリクスでは14.7個と有意差がありませんでした。
刺激日数、rFSHの総量、両群変わらない結果でした。
エストラジオールピーク値は両群で有意差を認めませんでした。両群ともLH サージは抑制されていましたが、ガニレリクスの方がLHの下降が顕著でした。
受精率、初期胚の形態学的スコア、移植胚のスコア、最良好胚盤胞の割合は両群変わりませんでした。
提供卵子による胚移植を行ったところ、MPA群において臨床成績が有意に悪かった。多変量マルチレベル分析を行ったところ、因子を調整後、生化学妊娠両群に有意差はありませんでしたが、臨床妊娠:2.17倍、進行妊娠:2.13倍ガニレリクスにおいて妊娠率が高いことがわかりました。しかし、生児獲得率については両群に有意差はありませんでした。



<結論>
GnRHアゴニストトリガーを使用した提供卵を採卵する際、排卵抑制剤としてのMPAは、GnRHアンタゴニスト(ガニレリクス)を使用した場合のMII卵数は変わりませんでした。 しかし、MPA使用はガニレリクスと比較すると臨床成績に影響がでる可能性があります。