プロゲステロン投与が切迫流産の治療に有効か

今回プロゲステロンの切迫流産予防効果があるか、検討した報告をご紹介いたします。


Human Reproduction, Volume 38, Issue 4, April 2023, Pages 560–568


Hasanらによると性器出血を伴う切迫流産は、すべての妊娠の約 25% にみられると報告されています。その切迫流産の約 4 分の 1 は、完全流産に進行します。 Jauniauxらは妊娠が継続した場合は、その後の分娩前出血、早産、周産期死亡率、低出生体重児など、妊娠に悪影響を与えるリスクが高くなると報告しています。


流産のリスクを下げる治療としては、プロゲステロン投与や抗リン脂質抗体陽性であれば抗凝固薬が効果をもたらす可能性がいわれています。


プロゲステロンは、妊娠の成立・維持に重要な働きをします。 Salazar and Calzadaによると流産を繰り返す女性は、子宮内膜のプロゲステロン値が特に低い、また、Arckらによるとプロゲステロン値は、その後流産に至る妊娠で低いことが観察されています。


2021年のDevallらによると2 つのプラセボ対照無作為化試験のみを含むコクランレビューでは、切迫流産の女性において、膣微粉化プロゲステロンが生児出生率を増加させましたが、治療効果は少ないさいという結果でした。 


この報告は切迫流産の女性におけるプロゲステロン膣剤の治療効果をさらに解明するために、プラセボ対照ランダム化試験を実施しました。


切迫流産に対し、プロゲステロン膣剤1日2回400mg投与とプラセボ投与を行いその後の出生、流産、母体合併症、新生児転帰を比較検討しました。プロゲステロンは12週まで投与しています。


<結果>
出生の有無については、プロゲステロン群 (82.4%) とプラセボ群 (84.2%) と同程度でした 。 完全流産についてもプロゲステロン群 (14.7%) とプラセボ群 (15.8%) 同等でした。早産率、在胎週数、出生時体重、母体転帰(妊娠糖尿病、妊娠高血圧症、子癇前症、静脈血栓塞栓症、および産後うつ病)および新生児転帰(先天異常率、保育園への入園率、および死亡率)にも有意差は見られませんでした。 


サブグループ解析でも、流産歴、不妊症、母体年齢(40歳未満、40歳以上)、プロゲステロン値に関しても有意差を認めませんでした。流産回数で検討しても、プロゲステロンの治療効果は確認できませんでした。


<まとめ>
プロゲステロン腟剤が切迫流産の女性の生児出生率を高めるという証拠は見つかりませんでした。

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