プロゲステロン注射を使用したホルモン補充療法において胚移植当日のプロゲステロン濃度は成績に影響する

凍結胚移植を行う際、排卵周期で胚移植する方法と、エストロゲン(E)・プロゲステロン(P)使用したホルモン補充周期があります。
ホルモン補充方法も、主にエストロゲンの貼り薬や飲み薬があり、Pには注射・飲み薬・腟剤があります。


凍結胚盤胞移植(FET)当日のP濃度は、高すぎても低すぎても成績が落ちるという報告があります。また、P腟剤を使用したホルモン補充周期において、凍結正倍数胚の移植前日のP濃度の低下は悪影響を及ぼすと報告されています。


この報告は、P注射+腟剤によるホルモン補充周期における、単一正倍数性の胚盤胞移植において、胚移植当日のP濃度が胚移植成績に影響するか検討した前向き研究です。


2019年12月 Reproductive Biology and Endocrinology
”Measuring the serum progesterone level on the day of transfer can be an additional tool to maximize ongoing pregnancies in single euploid frozen blastocyst transfers”


をご紹介致します。


972人168個の正常倍数性の凍結胚盤胞移植を行なっています。
β-hCG陽性率、臨床妊娠率、進行妊娠率および流産率は、それぞれ69.6%(117/168)、64.3%(108/168)、58.9%(99/168)および8.3%(9/108)でした 。


P投与当日のE2およびPレベルは、進行妊娠の有無では変わらず、ET日のPレベルは、妊娠群で有意に高い結果でした(28 対 16.4)。


バイナリロジスティック回帰分析にて、どの要因が進行妊娠の転帰に影響するかを特定すると、ET当日の血清Pレベルが唯一の変数でした。


ROC曲線を作成し、進行妊娠のET日血清Pレベルの有意な予測値を示したところ、AUC(95%CI)は0.716(0.637–0.795)でした。 進行妊娠の感度と特異性は血清P 20.6 ng / mlで感度71.7%、特異性56.5%でした。 進行妊娠率は、P <20.6 ng / mlで 41.8%、P≥20.6 ng / mlで 70.3%(71/101)でした(p <0.001)。 流産率はそれぞれ15.2%(5/33)対 5.3%(4/75)でした(p = 0.089)。


<まとめ>
結論として、ET日の血清P値が進行妊娠の独立した予後因子であることが示唆されました。 ただFETの直前のホルモンモニタリングの有効性は有益であるとは証明されていません。 P投与の個別化と閾値レベルを決定すると、妊娠結果が改善される可能性があります。



Pは、妊娠の着床と維持に不可欠です。PレベルまたはP耐性の低下は、子宮内膜の遺伝子発現の変化に関連している可能性があります。不妊女性の子宮内膜における異常なB細胞CLL /リンパ腫6(BCL6)の発現は、子宮内膜P抵抗性と関連していることが報告されています。高BCL6発現は、子宮内膜炎のバイオマーカーであり、炎症性タンパク質に関連しています。さらに、エストロジオールとPは、着床および妊娠中の免疫反応の重要な要要因であると報告されています。炎症経路は血清および組織のPレベルによって調整されており、適切な免疫学的環境を確保して着床の可能性を高め、流産を減らすために、Pの投与量だけでなく組織活性の個別化は、妊娠にプラスの影響を与える可能性がありますということでした。

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