1PN由来の胚盤胞は2PN由来と成績、新生児の経過も変わらない

今回、前核が1個の(1PN)由来胚について調査した報告をご紹介いたします。


2019年9月 Fertility and Sterilty
"Obstetrical and neonatal outcomes after transfer of cleavage-stage and blastocyst-stage embryos derived from monopronuclear zygotes: a retrospective cohort study"



生殖補助医療において、受精の16〜18時間後に2つの前核(2PN)の存在によって受精確認されます。前核が1個の(1PN)が観察されることがあり、媒精の4%〜8%を占めますと報告されています。ほとんどの1PN受精卵は受精の翌日に卵割され、一部の受精卵は高品質の2PN胚と同様の形態を示します。 2つの前核と2つの極体が確認できれば正常の受精と判断され、胚移植に適していると判断されます。ただし、2PN胚が獲得できない場合があり、正常形態の1PN胚を移植に使用できるかどうかは不明です。
人の染色体は、44本で22対の常染色体と1対の性染色体がある。1本は父方から、1本は母方からくる2倍体であります。以前の研究では、1PN受精卵,卵割期,胚盤胞の2倍体の割合は、それぞれ37.5%〜86.7%、13.0%〜80.5%、69.2%〜100%という報告があります。2PN胚が存在せず1PN由来の胚盤胞33個を移植した後、健康な新生児9人の誕生が報告されています。しかし、1PN由来の胚は染色体異常の可能性があり、さらに1PN胚ETに関する研究の数が限られているため、1PN胚を使用したETの価値とリスクは不明です。


そのためこの研究では、媒精で受精させた凍結融解1PN胚に関する臨床結果と先天性奇形のリスクおよび精神運動発達について後ろ向きに調査しています。


凍結胚移植に使用された186個の1PN卵割期、696個の2PN卵割期、134個の1PN胚盤胞、および510個の2PN胚盤胞を対象とし成績を比較検討しています。


<結果>
妊娠率(PR):16.1%vs. 24.4%、着床率(IR):18.9%対28.9%、および生児獲得率:14.0%対23.7%は、1PNの方が2PN 初期胚移植よりも有意に低い結果でした。
しかし、凍結胚盤胞移植においてはすべて有意差はありませんでした。
流産率と子宮外妊娠率は、1PNおよび2PNの卵割期および胚盤胞移植で有意差を認めませんでした。


児の先天性奇形のリスクおよび精神運動発達に関しては、1PN由来であっても2PN由来であっても、交絡因子を考慮しても差はありませんでした。


<まとめ>
凍結胚盤胞移植であれば、媒精由来の1PNも2PNも臨床成績は変わらず、児の先天性奇形および精神運動発達障害に関してもリスクは変わらないという報告でした。


後ろ向き研究であり、この研究だけではなんとも言えず、1PNに由来する胚盤胞の移植の有効性と安全性を評価するために、さらなる研究が必要です。


また、タイムラプスを使用しても1PNと判断された胚の有効性と安全性に関する報告も待たれます。

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