精子DNAの断片化は胚発生・着床・流産に関係するかもしれない

過去数十年でいくつかの研究で精液の質が低下傾向が示されており、妊娠に影響があるのではないかといわれています。


今回ご紹介する報告は以前にもご紹介した精子DNA 断片化指数検査(SDF)についての報告です。
以前ご紹介した報告は精子DNAの断片化が流産と関連しているのではないかと報告されていました。


今回の報告は、男性不妊症ではない方に顕微受精(ICSI)を行い、SDFの割合により妊娠に影響するか調査しています。


2019年9月 Fertility and Sterilty
" Sperm DNA fragmentation is correlated with poor embryo development, lower implantation rate, and higher miscarriage rate in reproductive cycles of non–male factor infertility"


精子DNA 断片化指数検査(SDF) は、射出精子中にDNA損傷を起こしている精子の割合を知る検査です。精子DNAはプロタミンにしっかりと結合しており、外部からのダメージからDNAを保護します。 DNAの断片化が起こると、わずかな損傷であれば受精後の胚によって修復される可能性があります。しかし、胚によって修復可能な閾値を超えた著しいDNA断片化は、胚の発生不良、着床失敗、および流産の一因となる可能性があります。


男性不妊症ではない方に顕微受精(ICSI)を行った初回の475サイクルを対象に、SDF率に従って、低フラグメンテーション(≤30%SDF、n = 433)と高フラグメンテーション(> 30%SDF、n = 42)の2つのグループに分け治療成績を前向きに検討しています。


<結果>
高フラグメンテーション群(SDF≥30%)は、パートナーの年齢が高く、禁欲期間が長い、精液量・総精子数が多く、直線運動率・総運動精子数が少ないという結果でした。
SDFとパートナーの年齢、禁欲期間、精液量、および精子数と正の相関があり、
SDFと総運動精子数および直線運動率と逆相関を示していました。
高フラグメンテーション群(SDF≥30%)では高フラグメンテーション(> 30%SDF)と比較すると、正常な卵割速度、3日目の高品質胚、胚盤胞発生率、胚盤胞品質、および着床率の有意な低下を認めましたが、臨床妊娠率は変わりませんが流産率が著しく高い結果でした。


<まとめ>
非男性因子不妊症初回ICSIでは、SDFが高いと、胚発生率・着床率が低下し、流産率が高くなる可能性があると示唆されました。



精子DNAにダメージのある一部のケースは、ライフスタイルの変更、栄養補助食品、抗酸化物質、および精索静脈瘤の修復によって治癒する可能性があると報告があります。なかなかうまくいかない方の中には精子DNAフラグメンテーションが高い方もおられるかもしれません。

×

非ログインユーザーとして返信する