着床前遺伝子検査(PGT)は妊娠高血圧腎症を増加させる?

着床前遺伝子検査(PGT)の使用は急速に増加しており、米国のPGTの割合は、2005年の全サイクルの4%から2015年には22%に増加しました。2015年だけで、米国で実施された26,201件、8529人が出生していると報告されております。


PGTを行った妊娠に関する母体および新生児転帰の調査はほとんど行われていません。栄養外胚葉生検は胎盤を形成する細胞を除去するため、胎盤に関連する有害な妊娠転帰のリスクが高まる可能性があります。


今回、栄養外胚葉生検の有無によるIVF後の母体および新生児の転帰を比較したコホート研究を実施した報告がありましたのでご紹介いたします。


2019年7月 Fertility and Sterilty
”Maternal and neonatal outcomes associated with trophectoderm biopsy”


357人の生児(PGT:177人およびPGTを施行していない180人)が分析の対象としています。栄養外胚葉生検の有無によるIVF後の母体および新生児の転帰を比較したところ、IVF + PGTの妊娠高血圧腎症の発生率はPGT施行していないIVFの4.1%と比較して10.5%であり、3.02倍妊娠高血圧腎症にかかりやすいという結果でした。(単胎のみだと2.95倍)前置胎盤の発生率は、IVF + PGTで5.8%、PGTなしのIVFで1.4%でした(有意差なし)。


早産、出生体重、NICU入院、5分のアプガースコア、先天異常の発生率に両群有意差はありませんでした。


<まとめ>
IVF + PGTとPGT施行していないIVFを比較した母体および新生児の詳細な結果を報告した最大の研究の1つです。産科合併症については、IVF + PGT群で妊娠高血圧腎症のオッズが3倍増加し、交絡を最小限に抑えた単胎のみに限定した場合でも2.9倍増加するようでした。新生児の有害転帰に統計的に有意な差は認められませんでした。


日本でも増えてくると予想されるPGTに関する報告でした。PGTにより異数性妊娠の流産リスクを軽減し、生児獲得までの時間の短縮できる可能性もありますが、潜在的なリスクを考慮することが重要です。
児に関しては今回の報告よると、栄養外胚葉生検しても影響がないという結果でした。

×

非ログインユーザーとして返信する