卵活性化は受精障害に効果がある可能性あり

通常ICSIの受精率は約70%と推定されており、全受精障害(TFF)はICSIの3%〜5%で発生するといわれています。TFFの主な原因は、精子または卵子因子に関連している可能性のある卵活性化障害(OAD)に起因します。


卵の活性化は、受精に不可欠です。卵活性化は精子卵活性化因子であるホスホリパーゼCゼータ(PLCζ)によって引き起こされ、精子卵融合で卵内に移行されます。哺乳動物では、精子と卵の融合後にカルシウム(Ca2 +)の典型的なパターン、つまりCa2+ オシレーションが観察されます。これらのCa2+ オシレーションは、減数分裂の再開と最終的な受精の成功に必要です。


この報告は受精障害に人工的に卵活性化(AOA)を行い臨床成績を比較しています。
Assisted oocyte activation significantly increases fertilization and pregnancy outcome in patients with low and total failed fertilization after intracytoplasmic sperm injection: a 17-year retrospective study
をご紹介いたします。


この著者がヒト精子の卵活性化能力を評価する診断法を開発したマウス卵活性化試験(MOAT)により、精子関連OAD(MOATグループ1(19人):≦20%の活性化 ネガティブコントロールの上限)、精子の卵活性化能力の低下(MOATグループ2(56人):21%〜84%の活性化)、または卵子関連OADの疑い(MOATグループ3(47人):≥85%活性化 陽性対照の下限)に分類しています。
受精障害の既往のある方にMOATと人工的に卵活性化(AOA)を行い臨床成績を比較しています。


<結果>
ICSI後のTFF(受精率0%〜10%)またはLF(≤33.3%の受精率)の既往のある122組のカップルを対象とし、191のAOAサイクルが実施されました。AOA治療後の全体的な受精率は63.3%(1,104 / 1,743)でした。 


MOATグループ1、2、3の受精率は、従来のICSIの9.7%、14.8%、17.7%から、それぞれ70.1%、63.0%、57.3%に大幅に増加しました。 AOA治療後、MOATグループ1群は、MOATグループ2群と3群に比べて有意に高い受精率を示しました。


MOATグループ1、2、3のAOA後の妊娠率は、それぞれ従来のICSIの0.0%、7.0%、7.0%でAOA後の49.0%、34.9%、29.4%と比較して大幅に増加していました。


MOATグループ1、2、3の生児獲得率は、それぞれ従来のICSIの0.0%、2.8%、0.0%からAOA後、それぞれ41.2%、22.6%、および22.1%に大幅に増加していました。


52人の単胎と4組の双胎が出生し32人の男児と28人の女児のいずれも、先天性の奇形はありませんでした。


<結論>
AOAは、前サイクルと比較して臨床結果の大幅な改善を示していました。


ストロンチウムや機械的活性化なども他にありますが、今回の検討はCaイオノフォアを使用しAOAを行っています。
特に精子に関連したOADに効果をもたらしたようです。さらに症例数が少ないですが、児にも影響がないような結果でした。過去の報告にもありますが、AOAはある程度効果があるようです。
しかし、児の影響など今後も報告が待たれます。

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