洗浄前運動精子数で人工授精の成功を予測できるか?

こんにちは


本日は”洗浄前運動精子数では人工授精の成功を予測できない”という報告をご紹介します。


2019年4月 Fertility and Sterilty
”Prewash total motile count is a poor predictor of live birth in intrauterine insemination cycles”


人工授精(IUI)はさまざまな病因を持つカップルを対象として一般的に行われています。不妊期間、女性の年齢、出産歴、卵胞数、総運動精子数、精子形態、および不妊の病因など、複数の要因がIUI後の妊娠率に影響を与えると報告されています。


総運動精子数は精液量、濃度、および運動率を掛けることによって計算されます。この総運動精子数はIUIするときの洗浄前と洗浄後に評価されます。IUIを推奨するための洗浄前総運動精子数に関するコンセンサスガイドラインはありません。
そこでこの研究はIUIを受けているカップルで洗浄前総運動精子数と生児獲得率の間に相関があるかを判断するために後ろ向き試験を行っています。


クエン酸クロミフェン(CC)(424人)、ゴナドトロピン+CC(30人)、レトロゾール( 90人)、ゴナドトロピン+レトロゾール( 11人)、ゴナドトロピン( 58人) 、自然周期( 42人)が含まれています。


<結果>
655 サイクル、310人に行われ、カップルあたりの総累積生児獲得率は20%、サイクルあたりの生児獲得率は10%でした。

精度の評価を行う受信者動作特性分析を行ったところ、洗浄前総運動精子数と生児獲得率は、変数間に有意な相関がなく、洗浄前総運動精子数と生児獲得率の関係性は低いことを示唆しています。

また、200万未満の洗浄前総運動精子数からは生児出産を生じませんでした。 生児出産の最高は、洗浄前総運動精子数が16〜2100万および2100万以上でした。


共変量の分析は、年齢だけが生児獲得率に影響を与えることを示していました。年齢が1サイクルあたりの生児獲得率と有意に負の関係を示していました。年齢と出生を比較した受信者動作特性分析は、37歳を超えるとの生児獲得が有意な減少することを示していました。 1カップルあたりの生児獲得率は、37歳を超える女性では25%であったのに対し、37歳を超える女性では7%に減少していました。


<結論>
洗浄前運動精子数では人工授精の成功を予測できませんでした。
37歳未満では、IUIサイクルにおいて37歳以上と比較して生児獲得率が増加しました。 200万未満の精子の洗浄前総運動精子数を持つカップルは、IUIの成功率は非常に低い結果でした。 




洗浄後の総運動精子数はIUIの成功率に影響を与える報告が多いです。
総運動精子数500万を超えると臨床妊娠率が大幅に増加する報告や、総運動精子数1000万あれば最も費用対効果の高い選択肢として、卵巣刺激を用いたIUIを少なくとも3回行うことを提唱している報告もあります。
ただ、原因不明の不妊症の高齢女性(38〜42歳)において、IUIとIVFで成績を比較したところ、IVF群で妊娠までの周期が少なかったと報告されています。
この研究でも、年齢のみが生児獲得と関係しているという結果であり、一人ひとりの背景を考え個別に対応していかなくてはなりません。

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