レトロゾールとクロミフェンを併用することで排卵率上昇

みなさんこんにちは


本日は”多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の方にアロマターゼ阻害薬(レトロゾールなど)とクエン酸クロミフェン(クロミットなど)を併用することで排卵率上昇する”という報告をご紹介いたします。


2019年3月 Fertility and Sterilty
”A randomized controlled trial of combination letrozole and clomiphene citrate or letrozole alone for ovulation induction in women with polycystic ovary syndrome”


多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、排卵障害の主な原因の一つです。クロミフェンやアロマターゼ阻害薬、FSH注射で排卵を促す場合があります。


クロミフェンの卵胞発育作用として、エストロゲン受容体に付着することで、エストロゲンの負のフィードバックが減少し、性腺刺激ホルモンの分泌が増加し、卵巣の卵胞の成長を誘導します。 しかし、クロミフェンは子宮内膜の発育および子宮頸管粘液産生に対して抗エストロゲン作用を有することで、排卵率が高い割には妊娠率が低い原因といわれています。


レトロゾールは、アンドロゲンからエストロゲンへの変換を妨げる選択的アロマターゼ阻害剤として働きます。 卵胞発育の作用機序の1つとして、エストロゲン産生を抑制することで視床下部に対する負のフィードバックが減り、FSH分泌の増加をもたらすします。また、一時的に増加した卵巣内アンドロゲンから生じるFSHの卵胞感受性の増加させるのではないかといわれています。


クロミフェンとレトロゾールは作用機序が異なるため、これらの薬剤を組み合わせると、レトロゾール単独よりも排卵率が改善される可能性があると前向き無作為化方式でこの研究は行われています。


<方法>
PCOS患者さんを対象としています。月経3〜7日目に、毎日2.5 mgのレトロゾール、または毎日2.5 mgのレトロゾールと50 mgのクロミフェンを併用し、月経12〜14日目に超音波1回と月経11日目ー21日目まで陽性が出るまでかでなければ毎日排卵検査薬を使用をしています。排卵検査薬が陽性になれば陽性後7日目に、ならなければ月経21,22日目にプロゲステロン検査を行なっています。排卵であり、黄体中プロゲステロン濃度> 3 ng / mLと定義されています。


レトロゾール単体群とレトロゾール+クロミフェン群の排卵率を比較しています。


<結果>
67人が参加し、背景には両群間に差は認めませんでした。



レトロゾール+クロミフェン群は、レトロゾール単独群よりも1.8倍排卵率が高い結果でした。
妊娠、生児獲得率、流産に統計的に有意な差はなく、多胎妊娠も認めませんでした。
子宮内膜の厚さ、15mm以上の卵胞数、最大の卵胞径、または血清プロゲステロンレベルに有意差はありませんでした。


試験中に治療に関連する重篤な有害事象は発生しませんでした。


<結論>
この研究は、レトロゾールとクロミフェンの組み合わせが、PCOSにおける不妊治療において排卵させるためにレトロゾール単独よりも優れていることを示しました。 この結果は、排卵率の高い低リスク、低コストである不妊治療の可能性を示唆しています。 レトロゾールとクロミフェンの組み合わせで妊娠率と出生率が高いかどうかを判断するには、追加のランダム化臨床試験が必要です。


ただ、この論文にも書かれていましたが、超音波の回数が少なく、臨床的には卵胞発育なければ薬剤の増量や、FSHの併用を行います。排卵検査薬が陽性にならないのであれば、何か対処すると思われます。

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