2%と5%の酸素濃度で胚を培養し比較した報告

一般的に胚培養は酸素濃度5%で行われます。体外受精が行われた最初の頃は、酸素濃度は大気圧の20%で行われていました。しかしながら、哺乳類の卵管の生理的酸素濃度は5〜8.7%と報告されており、胚発生に対する低酸素(5%)の有益な効果を示されています。


ヒトの胚は桑実胚期、3.5日目付近で子宮腔に到達するしますが、子宮内酸素濃度は約2%と測定されています。大気圧からより生理的レベルへの酸素濃度の低下は、細胞数の増加およびアポトーシスの減少、DNA断片化の減少、および酸化ストレスの減少し、哺乳動物の胚盤胞にとって有益であると報告されています。


この研究は、3日目胚を2または5%の酸素に曝露した後の胚盤胞発生を分析することを目的としています。


2019年2月 Hum Reprod
”Influence of ultra-low oxygen (2%) tension on in-vitro human embryo development”


<方法>
3日目までの胚培養を全て5%下で行っています。
研究①  
direct exposure:2%O 2(試験群)または5%O 2(対照群)中で一晩平衡化した培養液で3日目にそれぞれ移し培養した。
研究②
gradual exposure:対照群は5%O 2のインキュベーター中でさらに培養し、試験群では2%O 2のインキュベーター中に置き、5%O 2から2%O 2への緩やかに酸素濃度変化をさせながら培養した。


試験群と対照群の胚盤胞発生率および利用率(3日目から5日目までの長期培養を受けた胚の数あたり5/6日に移植または凍結保存された胚の数)、着床率と臨床妊娠率を比較しています。


<結果>
研究① direct exposure
2%O 2(試験群)と5%O 2での培養では、胚盤胞発生率、利用率に変わりはありませんでした。しかし、栄養外胚葉のグレードAは2%O 群で有意に多かったようです。
1回のETの妊娠率は、2%O 2(試験群):59.2%、5%O 2群(対照群)54.5%の妊娠率が得られました。


研究② gradual exposure
2%O 2(試験群)と5%O 2での培養では、胚盤胞発生率、利用率、胚のグレードに有意差を認めませんでした。
2%O 2(試験群):60.5%、5%O 2群(対照群)48.7%の妊娠率が得られました。


<まとめ>
5%O 2から2%O 2への曝露が直接的(研究①)であっても段階的(研究②)であっても、2%O 2条件は胚盤胞率、5日目の胚のグレードまたは胚利用率に影響を及ぼしませんでした。 5%O 2から2%O 2 への直接的な暴露を行なった場合、2%O 2で有意に栄養外胚葉のグレードAが多く観察されました。 しかし、緩やかに酸素濃度変化をさせながら培養した研究②には観察されませんでした。


他の研究では、胚の異数率は5%O 2も2%O 2でも同じでした。5%O2での培養は大気圧と比較すると活性酸素を減少させるのに重要な役割を果たし、さらに遺伝子発現に影響を及ぼしそしてモザイク現象を減少させ得るという報告もあります。また、エストロゲンとプロゲステロンも子宮の酸素濃度に影響を与えるという報告もあり、刺激法や移植法がどのように影響するかなどさらなる報告が待たれます。

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