男性の葉酸摂取について

本日は父親の葉酸摂取が、胎児の成長に影響するかもしれないという報告をご紹介いたします。


2019年2月 Fertility and Sterilty
"Does the father matter? The association between the periconceptional paternal folate status and embryonic growth"


葉酸は造血に関係するビタミンB群の水溶性ビタミンであります。食事やサプリなどによる葉酸摂取により神経管閉鎖症の発症リスクを低減させると報告され、摂取期間は妊娠の1ヶ月以上前から妊娠12週ころといわれています。食事より葉酸400μgを摂取することが困難なことがあり、厚生労働省より400μgのサプリメント摂取が勧められます。しかし、葉酸摂取量は1日1mgを超えるべきではないという情報提供がされています。


葉酸摂取は、胎児の成長にも良い影響を与えます。 Van Uitertらは、母親の葉酸状態が出生時体重と正の関連があり、低出生体重児のリスクと負の関連があると報告しています。 さらに、この著者は妊娠前の母親の赤血球の葉酸値が低値および高値であれば、胎児および胎児小脳の成長軌道の減少と関連していることを以前報告しています。


男性に関しては、血清および精液の葉酸レベルならびに葉酸サプリメントの使用が精液の質に良い影響を与えると報告され、Boonyarangkulらは、1日当たり5 mgの葉酸を用いた3ヶ月間の治療後、精子運動率は11.4%から20.4%に増加したと報告されています。ただ、高用量の葉酸補給により精子の形態異常が増加したと報告されています。


そこでこの報告は、父親の葉酸状態が妊娠転帰に与える影響を調査しています。自然妊娠と体外受精(IVF)・卵細胞質内精子注入(ICSI)後の妊娠における妊娠前後の父親の葉酸状態と児の成長軌跡の関連を調べています。


妊娠7、9、および11週目の頭殿長(CRL)および児体積(EV)を、3次元超音波で測定
妊娠の7±0週と9±6週の間の試験参加時に採取した。葉酸状態はRBCで測定し、
Q1(524–874 nmol/L)、
Q2(875–1,018 nmol/L)、
Q3(1,019–1,195 nmol/L)、
Q4(1,196–4,343 nmol/L)
に分類しCRL,EVを比較検討しています。
(RBC葉酸の正常値は340〜1,020 nmol / Lの範囲)


父親のFAサプリメントの使用に関する質問には、FAサプリメントがどの期間(妊娠前10週間以上)、どの投与量(0.4 mg、0.5 mg、または5 mg)で投与されたか含まれました。


<結果>
511人の含まれる妊娠のうち、合計303人が自然妊娠であり、208人がIVF-ICSI妊娠であった。


交絡因子を調整後、自然妊娠においてCRLはQ3と比較した場合、Q2およびQ4に有意に小さく、EV軌跡はQ4において有意に小さい結果でした。
IVF-ICSI妊娠においては、父親の赤血球葉酸状態とCRLおよびEV軌跡との間に統計的に有意な関連性は観察されませんでした。


自然妊娠において、妊娠11週の時点で、Q3のCRLは、平均で0.46 mm(1.0%増 対Q1)、1.74 mm(4.0%増 対Q2)、1.72 mm(4.0%増 対Q4)大きくなっていました。 EVは、11週目の時点で、それぞれ平均で0.25 cm 3(3.2%増対Q1)、0.62 cm 3(8.4%増対Q2)、1.05 cm 3(14.9%増対Q4)でした。


<まとめ>
赤血球で評価した父親の葉酸状態が、妊娠期間の7〜11週の期間のCRLおよびEVの児成長軌跡の低下と関連していることが示されました。父親のQ3(1,019–1,195 nmol/L)の赤血球の葉酸レベルは、Q2(875–1,018 nmol/L)およびQ4(1,196–4,343 nmol/L)と比較すると児成長軌道が最大でありました。これらの関連は、自然妊娠にのみ存在し、IVF-ICSI妊娠には存在しませんでした。


この報告では葉酸サプリを服用している男性は少なく(8.1%)、食事からの摂取・生活習慣が葉酸レベルの決定要因と考えられ、葉酸が豊富な食事を意識して摂取することが重要ということでした。


児の成長軌道の変化については、精子形成中の葉酸が胚の父方のエピゲノムに影響を与えているのではないか?IVF-ICSIで児の成長軌道に変化がみられないのは、IVF-ICSIの手順により、胚のDNAメチル化などのエピジェネティックリプログラミングや子宮内膜の受容状態が父親の葉酸状態の影響を無効にするのではないか?と考察されていました。


これらの報告から、葉酸がたりなくても、とりすぎても精子や児の成長軌跡に影響するかもしれません。
さまざまな集団での報告が待たれます。

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