遺伝カウンセリング後、モザイク胚をどうしているか?

本日は
”着床前診断を行いモザイク胚と診断された胚しかない方は、その後の選択肢をどうしているか”
を調査した報告をご紹介いたします。


2019年1月 Fertility and Sterilty
”What are patients doing with their mosaic embryos? Decision making after genetic counseling”


受精卵の栄養外胚葉(胎盤に将来なる細胞)を採取して、染色体数のスクリーニングを行うPGT-A(preimplantation genetic test for aneuploidy)により、正倍数性の単一胚盤胞移植することによって、多胎妊娠率および流産率を減少したと報告されています。
しかし、技術が進歩するにつれ、細部まで検査することができ、単純に正倍数性や異数性と判断できなくなってきています。正倍数性や異数性と判断されるコピー数でもない場合があり、モザイク胚と診断されることがみられるようになってきました。一部の次世代シーケンシンサー(NGS)解析では、1.8〜3 Mbという小さな染色体の増減し、他の手法よりも多くのモザイク現象を検出する場合があります。モザイク現象は、1つの胚に異なる遺伝子型を持つ2つ以上の細胞集団の存在として定義され、受精後に発生する細胞分裂エラーから生じると報告されています。


この報告では、異常細胞が20%〜80%に相当すればモザイク胚と分類されました。 異常細胞が20%未満であれば正倍数性として分類され、異常細胞が> 80%であれば異数性として分類されました。 この20%閾値(1/5細胞)は、平均胚盤胞生検が約5細胞であるとして使用されています。


モザイク胚は正倍数性と判断された胚よりも流産率が高いという報告もあり、モザイク胚の移植(MET)は、潜在的なリスクを考えると、遺伝カウンセリングはMETを検討しているすべての患者にとって不可欠です。


この報告は、正倍数性の胚や検査していない胚がない場合、患者さんが①モザイク胚を移植するか、②再度IVFまたは人工授精を行うか③廃棄するか、または④凍結保存をしておくかどうかを調査しています。多重ロジスティック回帰を用いて、METを行う予測因子を決定しています。


<結果>
生検胚あたりの染色体モザイク現象の全体の割合は28.4%でした。 全てのNGS試験胚の19.1%がモザイク異数性のみを有し、METについて考慮されました。


遺伝カウンセリング後、
①29/98人(29.6%)がMETの治療を選択。
②41/98人(41.8%)は再度IVFまたは人工授精を選択。41人のうち3人(7.3%)は、最終的にMETを選択しました。
③6/98人(6.1%)がモザイク胚を破棄することを選択。
④17/98人の患者(17.3%)が何の行動も取っておらず、モザイク胚は凍結保存されたままでした。
その他自然妊娠、胚の移送等



多重ロジスティック回帰分析によれば、年齢および過去の採卵回数の両方がMETを行う決定に有意に寄与していることがわかりました。


①MET後に8/29人(27.6%)が妊娠しました。MET後に妊娠した6/11回(54.5%)が羊水穿刺を用いて出生前診断を受けていました。 このうちの2人は、通常の核型分析に加えて、出生前の染色体マイクロアレイ(CMA)を行なっており、核型およびCMAの結果はすべて正常でした。また、出生時に先天異常があると報告された赤ちゃんはいませんでした。


②再度IVFまたは人工授精を選択した21/41人(51.2%)が最終的に妊娠していました。


METを選択した群より再度IVFまたは人工授精を選択した方が有意に妊娠率が高い結果でした。(27.6%:51.2%)


<まとめ>
METは、正倍数胚を持たない約30%に行われていました。再度IVFまたは人工授精を選択した方が、METを行った群と比較して、妊娠する可能性が高い結果でした。ただし、両方の選択肢の費用対効果、生児獲得までの期間、およびリスクを比較するには、さらなる研究が必要です。



年齢が若ければ再度採卵を行い正常胚を獲得する可能性も高いですが、採卵回数が多い方や正常胚獲得の可能性が低下する高齢の方は肉体的、心理的、経済的負担のためMETを希望されることが多いようでした。


この報告の欠点としては、遺伝カウンセリングが単一の施設でのみ評価されていることです。遺伝カウンセリングの目的は正確な情報伝達と意思決定を手助けすることですが、METに関する診療所特有の方針や医療提供者の態度に影響された可能性があります。
したがって、違う施設や集団で同様の検討が行われても、結果が異なる可能性もあります。
また、何番のモザイクかでも移植するか再度採卵するかなど選択肢が違う可能性もあります。モザイク胚に関する遺伝カウンセリングのためのベストプラクティスを確立するためには、さらなる研究が不可欠と締めていました。

×

非ログインユーザーとして返信する