月経1周期に2回採卵するduostimについての報告

年齢が高く、卵があまり取れない方は、採卵後の高温期にもう一度採卵することで、月経1周期に2回採卵し、卵を確保するdual ovarian stimulation (duostim)という方法があります。


体外受精において、生児獲得率は、採卵数と相関関係があります。 卵の獲得数が増えるごとに生児出産の可能性が高まり、卵巣の反応が悪い方は、体外受精を数回行っても、卵巣予備能が正常または高い女性に比べて妊娠の可能性が低くなります。 卵巣の予備能と質は年齢とともに低下するため、妊娠を試みるタイミングも重要な問題となります。 Bhattacharyaらにより体外受精を少し延期しただけでも、高齢女性においては出産の可能性が減少すると報告されています。そこで、月経1周期に2回採卵し、卵を確保するduostimという方法が行われています。Massinらにより、卵胞期で卵巣刺激を行った後でも、卵胞期と黄体期で同等の品質の卵を取得できることが報告されています。従来の月経周期に1回の方法と比較して、高温期も刺激するduostimでより多くの卵が獲得できると報告しています。


卵胞期で小卵胞が刺激され注射の反応がよくなり高温期での卵巣刺激でより反応するとも報告されており、より多くの卵をより短期間で獲得できる可能性があるため、卵巣機能の低下した女性にとって、非常に興味深いものとなります。 ただ、高温期の採卵は卵巣予備能マーカーが低い 38 歳以上の女性では、累積採卵数がアンタゴニスト 2 サイクルと比較して低かったという報告もあり、全ての報告が良い結果が得られているわけではありません。


この研究は、卵巣予備能が低下した女性でduostimを行った採卵数と2 回連続した従来の刺激方法で回収された累積卵数を比較しています。 他に、刺激状況、2 回目の採卵と生児出産までの時間、累積臨床妊娠率と生児出産率を調査しています。


<結果>
刺激日数、刺激総用量については、グループ間に差はありませんでした。 2 回の卵巣刺激から回収された累積卵の平均数は、duostim群とコントロール群の間で統計的に差はありませんでした。しかし、使用可能な胚(移植胚、新鮮胚、または凍結胚)の総数は、duostim群 0.9対対照群 1.5で有意に低い結果でしたが、per-protocol分析ではそれぞれ統計的差はありませんでした。


duostim群のサイクル 1 (卵胞期) とサイクル 2 (黄体期) を比較すると、刺激日数と総刺激量には統計的な差はなく、平均回収卵数も、卵胞期と黄体期で同様でした。対照群との比較でも、刺激日数と総刺激量はサイクル 1 と 2 で統計的に差はありませんでした。各サイクルで平均回収卵数は同様でしたが、2回目の採卵までの平均期間は、対照群の82.8日に対し、duostim群では14.4日と統計的に有意に短い結果でした。


着床率は両グループで同様でした。 累積臨床妊娠率はduostim群で有意に低い結果でしたが累積出生率には統計的な差はありませんでした。


妊娠までの期間を検討したところ、duostim群とコントロール群でそれぞれ147.8日と128.7 日で有意差はありませんでした。 


重篤な有害事象は報告されませんでした。


<まとめ>
この報告は採卵後、卵子凍結を1回して、受精させるため融解しているため、日本でのやり方とは異なります。
このやり方において、duostimと2回のアンタゴニストでは、刺激日数・量、累積卵子数・胚の質・着床率・出生率、妊娠までの期間は同じで重篤な有害事象は報告されませんでした。


duostimのメリット:2回目の採卵までの時間を2週間に短縮できる
duostimのデメリット:高温期に刺激を行うため新鮮胚移植ができない。累積臨床妊娠率はduostim群で有意に低い(累積出生率は有意差なし)。採卵した後に卵巣刺激を行うため、どの卵胞が発育しているか超音波で確認しにくい。(そのまで問題はありません)

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