タイムラプス培養器で得られる胚の動態と臨床特徴を組み合わせることで胎児心拍を確認できる胚を予想する

体外受精において、妊娠率・出産率の高い胚の選択は、胚の見た目で妊娠しやすいか判断する形態学的評価が一般的です。形態学的評価は、胚を培養器から取り出し顕微鏡下で授精後1日おき胚を観察する静的評価と培養器に入れながら胚を10分おきに観察し画像をつなげて評価する動的評価があります。ただ、胚の形態学的評価は、観察者により評価が変わる可能性があります。当たり前ですが、最良好と判断された胚でも妊娠しないことや、不良と判断されても妊娠することがあります。
 一方、着床前遺伝子スクリーニング (PGT-A) は、胎盤になる細胞の染色体を次世代シークエンサーという診断ツールで染色体の増減にエラーがないか確認し、エラーがないと予想される胚を移植することで流産率をさげるという方法です。ただし、PGT-A は費用・時間がかかり、胚の着床する細胞を採取するという侵襲的な処置であり、35 歳未満の患者など、異数性率がそれほど高くないグループに利益をもたらすかははっきりとわかっておりません。


 そこでこの研究は、タイムラプスで得られる動的病態と臨床的特徴を合わせて分析することで、妊娠の可能性の高い胚を予測する性能が向上するか検討しています。 
  


 9986 個の胚がアルゴリズムのトレーニングに使用され (既知の妊娠データのある 9537 個の胚を含む)、447 個がテストに使用されました (すべて既知の妊娠データがある)。トレーニングで使用された 192 個の胚 (既知の妊娠データの 2% 未満) のみが PGT-Aのために生検され、3% 未満が卵子提供にとなっていました。


心拍確認の有無と臨床結果を検討しています。


タイムラプス培養器がつけたビデオスコアは培養士の判断した胚の質と相関する
447個の胚のうち、培養士の多数決により、不良胚は102個、良好胚は161個、その他184個と分類されました。不良胚の平均スコアは低くなる傾向があり (0.23 ± 0.20)、良好胚は高いスコア (0.50 ± 0.22) に対応していました。 タイムラプス培養器がつけたビデオスコアと培養師の判断した胚の質は相関関係がありました。


胚発生具合と臨床的特徴を分析することで、妊娠予想性能が向上する
タイムラプス培養器がつけたビデオのみでトレーニングされた 3D-ResNet モデルの結果は、3D-ResNet の出力と臨床的特徴の両方を分析したハイブリッドモデルと比較されました。 ハイブリッドモデル(AUC:0.727±0.012)は 3D ResNet モデル(AUC:0.684±0.016)よりも優れており、AUC で 6.27% という統計的に有意な相対増加を示しました。臨床的特徴の中で影響をあたえる因子としては、胚の形態動態を反映するビデオスコアが一番大きく、次が年齢でした。その他の臨床的特徴として総ゴナドトロピン投与量、使用可能な胚数、採卵数や子宮内膜の厚さも妊娠予想の性能に影響をあたえました。


ハイブリッドスコアは妊娠率と相関する
ハイブリッドモデルのスコアが増加すれば妊娠率が増加するかどうか判断するため、スコアを4群に分類したところ、スコアが増加すれば妊娠率も有意に増加したことがわかりました。


・ハイブリッド アルゴリズムはさまざまな臨床状況に利用できますが、新鮮胚移植や35 歳以上で効果が高い
タイムラプス培養器の種類 、移植日に関して、統計的な差はありませんでした。 AUCに関して新鮮胚移植と凍結胚移植に統計的に有意差が示されました。 また、AUCは35歳未満(AUC 0.68±0.01)と比較して、35歳以上(AUC 0.74±0.02)で高い結果でした。


まとめ
タイムラプス培養器の形態学的評価のみより、臨床的特徴を組み合わせることで胎児心拍確認率の上昇を期待できました。

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