検査会社によりPGT-Aの精度が異なるか

染色体異数性は、胚発生不全および反復性流産の最も一般的な原因です。
胚盤胞の細胞を採取し、染色体を調べる研究所において正倍数性胚盤胞率に差が出るかを検討した報告がありますので、ご紹介いたします。


Fertility and Sterility® Vol. 119, No. 1, January 2023


母親の年齢が上がるにつれて、染色体的に正常な胚の割合が減少します。 しかし、正倍性胚の移植は、年齢に関係なく、どの年代でも同様の着床率をもたらすことが示されています。
したがって、異数性の着床前遺伝子検査 (PGT-A) による胚の染色体の確認は、生殖医療において日常的に推奨されるようになってきています。特に高齢の患者さんにおいて、流産を減らし、継続妊娠率を高める可能性も報告されています。ただ、35 歳未満の年齢層では、65% を超える正倍数率が報告されており、PGT-Aはすべての患者さんにメリットがあるかは疑問が残るところです。


今回の報告は、4つのNGS 研究所でPGT-Aを行い、正倍数体胚盤胞の割合を表す正倍数性胚盤胞率,LBR,異数性胚盤胞率,モザイク胚盤胞率,生化学妊娠率,流産率を調査しNGS 研究所間で違いが出ないか検討しております。


4 つのNGS 研究所間で合計 2,633 個の胚の生検した 895 人の卵子ドナーを対象としています。正倍数性胚盤胞率は、研究所A (73.6%)は他と比較すると研究所B (63.3%)、研究所C (60.9%)、研究所D (52.3%) で有意に高い結果でした。 異数性胚盤胞率は、研究所A (14.2%) は他と比較すると研究所B (32.8%)、研究所C (27.4%)、研究所D (31.6%) で有意に低い結果でした。 モザイク率は、研究所A(9.9%)、研究所D(11.5%)と研究所B(2.8%)、研究所C(5.5%)で有意差がありました。結果が出なかった割合について、研究所B (1.0%) は他と比較すると研究所A (2.2%)、研究所C (6.0%)、研究所D (2.8%) で有意に低い結果でした。


4 つの研究所で分析された 2,633 個の胚のうち、最終的に 704 個の正倍体胚が移植され、妊娠の有無について評価されました。モザイク胚は移植されませんでした。 生児獲得率は研究所A (57.8% ) で研究所D と比較して (47.3%)有意に高い結果でした。 生化学流産率と流産率に統計的な差はありませんでした。 


<まとめ>
研究所間で正倍数性胚盤胞率と生児獲得率に有意差を認めました。すべての PGT-A研究所が同じ結果が獲れれると見なされるべきではありません。 私たちは専門家として、患者さんに推奨できる臨床検査の精度に責任を負い、胚の無駄遣いを避ける必要があります。


研究所間で正倍数性胚盤胞率や生児獲得率に差が出た主な原因として、生検の技術だけではなく、PGT研究所の DNA 増幅プロトコル、クオリティーコントロール、バイオインフォマティクスが関係している可能性があります。 生検が不十分であったり、DNA が分解されていたりして、サンプルの質が悪いと、ノイズが増加し、コピー数が急増する可能性があります。生検が成功しても研究所での検査の仕方や分析の違いが、精度の差につながる可能性があります。

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