多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)における卵巣ドリリング前後のAMH値

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)において、卵巣ドリリング前後のAMHが妊娠成立に影響するか検討した報告をご紹介いたします。


Reproductive Biology and Endocrinology (2022) 20:129


PCOSは、月経異常、アンドロゲン過剰症、および多嚢胞性卵巣を呈しており、排卵障害により不妊症を伴っていることが多い。それに加えて、インスリン抵抗性、高インスリン血症、高アンドロゲン症、メタボリック シンドロームや糖尿病のリスク増加と関連していますと報告されています。Solomonらによりインスリンは、卵巣と卵胞に大きな影響を与え、高インスリン血症が未熟な卵胞の発育不全と関連していと報告しています。 アンドロゲンの増加と PCOS の卵胞数の増加は、抗ミュラー管ホルモン (AMH) の産生を増加させます。


PCOSはAMHレベルが高く、不妊治療中に卵巣の過剰刺激が起こる可能性があります。この報告は、腹腔鏡下卵巣ドリリング(LOD 卵巣にいくつも穴を開ける手術)前後のAMHレベルと妊娠における影響を比較しています。


2020年にテヘランのアクバラバディ病院でLODを受けた PCOS の 84 人の女性からなるコホート研究です。
Rotterdam 基準 (2003) に基づく PCOS 患者で、LOD治療候補者を対象としでし、研究への参加やフォローアップを望まない方は除外されていました。 AMH とエストラジオールは、手術前と手術後 1 週間で測定されました。 妊娠成功率は、人工授精 (IUI) または体外受精 (IVF) により手術後 12 ヶ月以内に評価されました。


LOD前のAMH平均は8.8188、LOD後は5.7936と有意に減少したことが示されました。


月経周期についてはLOD前後で以下の通り
             LOD後 月経周期整  LOD後 希発月経
LOD前 月経周期整       44人         0人
LOD前 希発月経        18人         16人



ロジスティック回帰分析を使用して、年齢、BMI、AMH、および月経周期と妊娠の有無との関係を調べたところ、どの変数も妊娠に影響を与えないことが示されました。
LOD後の平均 AMH と BMIとの関係は、一元配置分散分析を使用して調査したところ有意差がないことが示されました。LOD後のAMHと、年齢、BMI、LOD前の月経周期の変数との関係を、線形回帰を使用して調査したところ有意差がないことが示されました。


<まとめ>
LOD前に希発月経だった方が、LOD後に月経が整になる方も多く、治療前AMHがLODの方針決定に有用という報告でした。


AMH は、LODで低下しますが、 もともと一般女性と比べると PCOS で 2 ~ 4 倍高くなっています。熱損傷の影響と思われるLOD 後の血清 AMH の減少は、いくつもの報告で卵巣予備能の病理学的減少ではなく、正常化のプロセスとみなされるべきであると結論付けられています。そのため、AMH高値のPCOS患者さんはLODも選択肢の一つと思われます。

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