プロゲステロン投与後の子宮内膜の厚さの変化は、正倍数性凍結胚盤胞移植の妊娠に影響を与えない

今回、正倍数性の凍結胚盤胞移植においてホルモン調整周期でプロゲステロン投与後の内膜の変化は妊娠に影響しないという報告をご紹介いたします。


Fertility and Sterility Vol. 116, No. 6, December 2021 0015-0282


子宮内膜の受容性とは、分泌中期(通常は月経周期の20〜24日目)に卵巣ステロイドホルモンの作用下で胚盤胞の発達の接着と着床と同期する子宮の状態を示します。この期間は「window of implantation」と呼ばれ、胚移植の適切な時期と考えられます。正常胚を受容性子宮内膜に着床させることが妊娠の鍵となります。


子宮内膜の厚さが排卵前に7mm未満または8mmである場合、臨床妊娠率が低く、流産率が高いため、サイクルをキャンセルする必要があると考えや、増殖期の終わりの子宮内膜の厚さは、着床率と臨床妊娠率を最大にするために9〜14 mmの範囲した方が良いという報告もあります。しかし、子宮内膜の厚さは臨床転帰とは関係がなく、妊娠転帰を予測できないという報告もありコンセンサスは得られていません。


この研究者は凍結胚移植において、プロゲステロン投与後のプロゲステロンによって誘発される一連の変化のために子宮内膜が変化します。したがって、妊娠を予測するために、周期の特定の時期の子宮内膜の厚さの測定するよりも、プロゲステロン投与後の子宮内膜の厚さの変化を測定した方が有意義ではないかと考えています。


そこでこの報告は、凍結胚移植におけるプロゲステロン投与日から胚盤胞移植日までの妊娠転帰に対する子宮内膜の厚さの変化の影響を調査しています。この研究は、着床前遺伝子診断で、胚の異常な倍数性を排除し、胚の質を確保するために正倍数性胚盤胞を選択しています。研究の一貫性を確保するために、外因性エストロゲンとプロゲステロンを使用する同じホルモン補充療法(HRT)サイクルを選択しています。


2014年1月から2019年12月の間にHRTで初回の単一凍結胚盤胞移植を受けた単一遺伝子疾患または染色体転座の602人の患者さんを対象としています。最終的に508人を対象としました。内膜が7mm未満は除外されています。


胚盤胞移植日とプロゲステロン投与日の子宮内膜の厚さの違いに応じて、子宮内膜の厚さが減少したグループ 19.49%(99/508)、増加したグループ 47.24%(240/508)、変化のないグループ 33.27%(169/508)の3つに分けられました。508人の参加者のうち、284人のが妊娠し、244人が出産しています。


多変量ロジスティック回帰モデルを使用して、子宮内膜の厚さの変化率と妊娠の結果との関係を評価したところ、子宮内膜の厚さの変化率と臨床妊娠率の間に有意な関係は見つかりませんでした。出生率も流産率も変化ありませんでした。


<結論>
508例の後ろ向きコホート研究では、HRTで初回の単一凍結正倍数性胚盤胞移植において、子宮内膜の厚さの変化とプロゲステロン投与日から胚盤胞移植までの妊娠転帰との間に関係がないことが確認されました。子宮内膜の厚さが増しても、臨床妊娠率と出生率は大きく変化しませんでした。グループ間の流産率も同等でした。

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