新規組換えヒトFSHを使用した報告

現在日本で使用されている遺伝子組換えヒト卵胞刺激ホルモン製剤は、チャイニーズハムスター卵巣細胞株に由来します。今回ヒト由来の宿主細胞株で発現する新規組換えヒトFSHであるフォリトロピンデルタについての報告がありましたのでご紹介いたします。


Fertility and Sterility Vol. 115, No. 6, June 2021 0015-0282


この組換えヒトFSHには、チャイニーズハムスター由来の組換えFSHよりも、半減期が長くなります。国際単位で表される同じ1日量で投与された場合、チャイニーズハムスター由来の組換えFSH製剤よりも有意に強く反応すると考えられます。


フォリトロピンデルタ群と現在も使用されているフォリトロピンベータ150 IU 群を比較しています。
主要評価項目は採卵数で、副次的評価項目には、受精卵数、卵胞発育、ホルモン値、刺激期間、妊娠および出生率でした。


<結果>
この報告は158人をフォリトロピンデルタ群 117人(6μg/ dで37人、9μg/ dで40人、12μg/ dで40人)、フォリトロピンベータ150 IU 群 41人に割り当てています。このうち高AMH(15.0–44.9 pmol / L)65%(n = 102)、低AMH層(5.0–14.9 pmol / L)35%(n = 56)となっています。


平均刺激期間は、フォリトロピンデルタの用量の増加とともに有意に減少しました。各用量レベルで、平均刺激期間は、低AMH群と比較して高AMH群の方が短かった。高AMH層で観察された用量反応により、刺激終了時の卵胞刺激ホルモンデルタ用量と総卵胞体積との間に有意な用量反応関係があったことがわかりました。


フォリトロピンベータ150 IU 群は11.0±4.7個に対し、フォリトロピンデルタ群 6μg/ d、9μg/ d、および12μg/ dの平均採卵数は、7.0±4.1、9.1±5.6、および11.6±5.6個でした。用量反応モデルでは、フォリトロピンデルタ用量を2倍にすると、4.7個採卵数が増加すると予測されました。同じ用量を投与した場合、低AMH群と比較して、高AMH群では36%〜100%多くの採卵(平均差3.4個)されました。


胚盤胞発生率は、フォリトロピンデルタ群 6μg/ d、9μg/ d、および12μg/ dで38%、33%、32%でした。妊娠率は、6μg/ dで19%、9μg/ dで20%、12μg/ dで25%でした。 サイクルあたりの出生率は、6μg/ dで16%、9μg/ dで18%、12μg/ dで23%でした。


中等度OHSSの割合は、6μg/ dで8%、9μg/ dで8%、12μg/ dで13%でありました。


<まとめ>
日本人のIVF / ICSIにおけるフォリトロピンデルタ投与量と卵巣反応との関係を確立し、さらに、各投与量に対する反応が血清AMHレベルによって影響を受けることを示しました。したがって、ゴナドトロピン用量を選択するときは、血清AMHレベルを考慮する必要がありますということでした。

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