精子DNA断片化の影響

精子DNA断片化(SDF)の影響についての報告がありましたのでご紹介致します。


Fertility and Sterility Vol. 116, No. 1, July 2021 0015-0282


従来の精液検査における精液量、精子濃度、運動率、形態などはWHOの基準と比較することにより精液を評価しています。最近、精子のDNA断片化は男性不妊症を引き起こし、妊娠に悪影響を及ぼす可能性が報告されています。最近の2つのメタアナリシスでは、精子のDNA断片化がART治療後の臨床妊娠や不育症に影響を与えることが示されました。


人間の精子はDNA修復活性を持っていないため、受精が起こると、DNA修復活性は卵の成熟時に蓄えられた卵母細胞の転写産物に依存します。 卵母細胞がDNA断片化を修復する能力は、DNA断片化の程度と、細胞質およびゲノムの質に依存します。 DNA断片化の影響が年齢に影響するかどうかはまだ解明されていません。 この報告の目的は、さまざまな年齢層がDNA断片化に影響を及ぼすか調査することでした。


女性の年齢に応じて3つのグループに分けられました。
①≤36歳(n = 285)②37〜40歳(n = 147)③ > 40歳(n = 108)
精液サンプルは、精子クロマチン分散法を使用してDNA断片化について評価され、低断片化インデックス(<30%SDF)および高断片化インデックス(≥30%SDF) に分けられました。
ICSIを行い、臨床転帰とDNA断片化、年齢について検討されています。


<結果>
①36歳以下および②37〜40歳では、DNA断片化が30%未満またはDNA断片化が30%以上のサイクルで、検査結果と臨床転帰に有意差は認められませんでした。


女性の年齢が40歳を超えると、高品質のD3胚が大幅に低下し(54.4%vs。33.1%; P = .005)、胚盤胞の発生率(49.6%vs。30.2%; P = .035)、高品質 胚盤胞率(70.6%vs。44.6%; P = .014)、妊娠率の低下(20.0%vs。7.7%、P = .040)および着床率(19.7%vs。11.9%; P <.001)、および流産率の増加(12.5%vs。100.0%; P <.001)は、30%未満のSDFと比較して30%以上のSDFのサイクルでそれぞれ観察されました。


<結論>
40歳以上は、DNA断片化インデックスの高い精子で受精すると、質の悪い胚に成長し、着床率と妊娠率が低下し、流産率が高くなりました。

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