男性にビタミンEを服用した場合、IVFの結果に影響するか

男性因子の不妊症は、不妊症のカップルのほぼ50%に影響を及ぼすと報告されています。世界保健機関(WHO)の基準に従った精液検査は男性不妊の検査の基本ですが、不妊状態の予測因子としては限界があります。 DNA断片化や活性酸素測定などの他の方法において、WHO基準で正常と見なされた精子でも異常な結果が得られます。
男性側の妊娠しにくい原因として30%から80%では、酸化ストレス(OS)が精子の質の低下の原因である可能性があります。活性酸素の過剰産生は、DNA損傷を引き起こし、精子の運動性を低下させ、細胞膜に悪影響を及ぼし、精子と卵の結合能力を低下させます。
男性不妊症の治療には抗酸化剤を使用することもあります。


最もよく知られている抗酸化物質の1つはビタミンEです。このビタミンには8つのアイソフォームがあります。それらの中で、α-トコフェロールは最も高い生体内生物活性を持ち、人間に不可欠なものです。α-トコフェロールは、in vivoで、特にヒトにおいて、ペルオキシラジカルを代謝する最も重要な親油性抗酸化剤と考えられています。


IVFと卵細胞質内精子注入法(ICSI)を受けているカップルを対象としたこの研究では、診断に関係なく、男性へのビタミンE治療が妊娠率を高めることができるかどうか評価した報告をご紹介いたします。



”Effect of vitamin E administered to men in infertile couples on sperm and assisted reproduction outcomes: a double-blind randomized study”


ビタミンE群とプラセボ群に分類し、ビタミンEグループは、400mg /日のビタミンE(α-トコフェロール)またはプラセボカプセルのいずれかを採卵予定日の3ヶ月前から服用し始めました。精子形成サイクルには約72日かかるため、ビタミン治療はOPUの予定日の90日前に開始されています。


101組のカップルが研究に含まれ、50人の男性がビタミンEを、51人がプラセボを投与されています。


・全例(ビタミンE治療群+プラセボ群)でのビタミンE投与3ヶ月の治療の前後の精子所見
ビタミンEまたはプラセボ治療開始前と体外受精日の精子濃度は統計的に有意に増加しました(7,445万±40.06対5975万±39.85)。同様に、進行精子運動率も統計的に有意に増加しました(70.6%±33.9対51.1±14.65)。総運動精子数はほぼ2倍になりました(83.4±8,720万対156.4±1億4,140万)。総精子数や正常形態率に統計的に有意な変化はありませんでした。


・ビタミンE治療群とプラセボ群のビタミンE投与もしくはプラセボ投与3ヶ月の治療の前後のそれぞれの精子所見
ビタミンE群では、進行精子運動率が統計的に有意に増加しました(52.5%±14.8対72.3±41.6)。総運動性精子数はほぼ2倍になりました(8690±9010万対16070±15560万)。総精子数と精子濃度、正常形態率は、統計的に有意な差はありませんでした。
プラセボ群では、精子濃度(6000±3730万/ mL対7670±3960万/ mL)、進行性運動性(49.7%±14.5%対70.9%±22.6%)、および正常形態率の統計的に有意な増加がありました(3.8%±2.3%対5.1%±3.5%)。総運動性精子数はほぼ2倍になりました(79.9±84.9対152.1±127.5)。総精子数に違いはありませんでした。
ビタミンE投与もしくはプラセボ投与の3か月後のグループ間の精子所見を比較すると、ビタミンEグループよりもプラセボグループで、正常形態率(5.1%±3.5%対.3.7%±2.4%)以外は差はみられませんでした。


・IVFの結果
ICSIまたはIVFの受精率を個別に検討した場合、統計的有意差はありませんでした。
ビタミンE群とプラセボ群で、移植あたりの臨床妊娠率(43.9%vs25.0%)、着床率(24.7%vs14.1%)が高くなる傾向がありましたが、統計的有意差はありませんでした。
移植あたりの出生率は、ビタミンE群で統計的に有意に高かった(41.46%対20.46%)。


<まとめ>
精液検査のビタミンEに対する効果は、プラセボの効果よりも優れてはいませんでした。しかし、ビタミンE投与はプラセボより統計的に有意に高い出生率と関連しており、他のIVFの成績で良い結果が得られる傾向があることがわかりました。

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