0PN,1PN由来の凍結胚盤胞移植後の産科および新生児の転帰

生殖補助医療の領域において、正常受精は授精後16〜18時間で2個の極体と2個の前核(2PN)の存在もしくは極体の断片化によって確認されます。0個の前核(0PN)および1個の前核(1PN)は、異常受精または受精できなかったため生じると報告されています。一部の0PNおよび1PNは胚盤胞に達し2PNの良好胚と同様の形態を示すことがあります。多くの研究により、0PNまたは1PN胚の移植は、妊娠率がやや低いものの、健康な赤ちゃんをもたらす可能性があることが報告されています。


2PN胚盤胞の69.39%、0PN胚盤胞の64.71%が正常な染色体であることが報告されています。
他の報告では正常染色体の1PN胚盤胞の割合(50.00%)と比べると2PN胚盤胞の割合(69.39%)よりも低いことを報告していますが、別の研究では、1PN胚盤胞(39.3%)と2PN胚盤胞(36.5%)では正常染色体の割合に差がないことが示されています。


ただ、症例数も少なく、はっきりしたことは言えません。
今回2PN由来と0PN、1PN由来の凍結胚盤胞移植の妊娠率(PR)、流産率(AR)、出生率(BR)、累積妊娠率(LBR)、出生体重、産科および新生児転帰を後ろ向き研究が発表されましたのでご紹介いたします。


Fertility and Sterility
”Obstetric and neonatal outcomes after the transfer of vitrified-warmed blastocysts developing from nonpronuclear and monopronuclear zygotes: a retrospective cohort study”



102,064サイクルの採卵で合計1,143,116個の卵が回収され、2,174個の0PN、1,495個の1PN、および44,161個の2PN胚盤胞が凍結されました。435個の0PN、281個の1PN、および13,167個の2PNの凍結単一胚盤胞移植が行われました。それぞれ0PN、1PN、および2PNから151人、75人、および4,555人が出産に至っています。


<体外受精の成績>
PR、AR、BR、およびLBRは、ロジスティック回帰分析にて、0PN群と2PN群に有意差を認めませんでした。 1PN群と2PN群では、ロジスティック回帰分析にて、PRに違いはありませんでしたが、ARが1.764倍、特に後期ARは3.231倍高くBRは0.697倍およびLBRは0.701倍2PN群よりも1PN群で低い結果でした。


<新生児に関して>
交絡因子の調整後、平均出生体重が有意に大きく、zスコアが高かった
出生体重がVLGA (>97th percentile)の割合は2PN群よりも0PN群の方が多い結果でした。
他の新生児転帰には有意差はありませんでした。
1PN群と2PN群に新生児の転帰に関して違いはありませんでした。


・まとめ
0PN群は2PN群と比較すると流産率は少し高く1PN群は2PN群と比較すると出生体重が重い児が多いという結果でした。このようなリスクのため0PNおよび1PN由来胚盤胞より2PN胚盤胞の移植が優先されるべきであることを示しています。 0PNおよび1PN胚盤胞は、2PN胚盤胞が利用できない場合に移植を考慮されますが、そのような場合、遺伝的評価やリスクを情報提供が必須です。

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