アッシャーマン症候群の方は子宮内膜の厚さは妊娠率に影響しない?

胚移植において子宮内膜の厚さは妊娠率に影響すると報告する研究が多いですが、アッシャーマン症候群などの子宮内病変のある患者さんが除外されていることが多いです。


アッシャーマン症候群とは、Khan and Goldbergらにより、痛み、月経困難症、月経不順、不妊症などを引き起こす子宮鏡検査で確認された子宮内癒着として定義されます。
アッシャーマン症候群、子宮内膜線維症につながる子宮内膜の子宮内膜基底層への外傷性損傷後に発生することがあります。子宮内膜組織が、萎縮性、無血管性、ホルモン反応性のない線維性瘢痕組織に置き換わり癒着を引き起こします。エストロゲンに反応しないため子宮内膜は厚くならず、超音波測定では子宮内膜が薄く観察されます。
Chenら、Deansらにより子宮鏡での癒着剥離を行い48%から79%の妊娠率が報告されています。そのため正常である子宮内膜組織が一部部分あれば着床するのではないかという考えもあります。


この報告は、IVFを受けているアッシャーマン症候群患者さんの子宮内膜の厚さと臨床妊娠率との間に関連があるかどうかを検討しています。


Fertility and Sterility
”Endometrial thickness measurements among Asherman syndrome patients prior to embryo transfer”


子宮鏡での癒着解除を行った45人を対象としています。
25%未満の子宮内腔が癒着している場合は軽度、
25〜75%の子宮内腔が癒着している場合は中等度、
75%<子宮内腔が癒着している場合は重度
と分類。
体外受精の成績と産科合併症について調査しています。



<結果>
45人のアッシャーマン症候群患者さんのうち、25人(55.6%)は、最終的にIVF-ETで1回は臨床妊娠が確認できています。二変量解析により、臨床妊娠の有無で有意差があったのは、年齢のみでした。臨床妊娠の有無で検討した場合、子宮内膜の厚さはそれぞれ7.5±1.9mm対7.6±1.4mmと有意差はありませんでした。
多変量解析でも、年齢、子宮内膜の厚さ、臨床妊娠の有無を検討しても子宮内膜の厚さと臨床妊娠との間に関連性がないことを再度確認ました。


・アッシャーマン症候群の重症度と内膜の厚さについて
アッシャーマン症候群の重症度別では平均の子宮内膜の厚さが、アッシャーマン症候群の重症度の増悪とともに薄くなったという結果でした。 ET前の平均の子宮内膜の厚さは、軽度アッシャーマン症候群で8.0±1.6mm、中程度アッシャーマン症候群で7.0±1.4mm、重度アッシャーマン症候群で5.4±0.1mmでした。
しかし、子宮内膜の厚さの31.8%は、7.0 mm未満であるにもかかわらず、33.3%が臨床妊娠につながりました。


・癒着胎盤について
癒着胎盤に関しては、合計6/22(27.3%)の癒着胎盤(4症例のplacenta accreta(軽い癒着胎盤)と2症例の穿通胎盤)を認めましたが、 ET前の子宮内膜の厚さと癒着胎盤の有無に関連性は認められませんでした。


<まとめ>
子宮内膜の厚さは、IVFを受けているアッシャーマン症候群の方の臨床妊娠とは関連していない可能性がありました。 そのためアッシャーマン症候群の方が内膜の厚さの値によりETをキャンセルするのは慎重になる必要があります。

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