甲状腺自己免疫のある女性の妊娠転帰に対するレボチロキシンの効果

甲状腺の自己免疫は、出産可能年齢の女性の甲状腺機能低下症の最も一般的な原因であり、世界中の女性の最大17%で確認されていると報告されています。甲状腺自己抗体の存在は、流産と早産のリスクが2〜3倍高くなる可能性がありますが、レボチロキシン投与が妊娠転帰に及ぼす影響を調べる臨床試験は限られており、一貫性がありません。


American Thyroid Associationの2017年のガイドラインでは、レボチロキシン療法が抗甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO)抗体陽性の女性の流産リスクを低下させるかどうかを決定するには証拠が不十分だが、流産既往のある甲状腺機能正常でTPO陽性妊婦におけるレボチロキシン投与は、潜在的な利益を考えると考慮されるかもしれないと書かれています。


最近の大規模な試験によりレボチロキシン投与は、出生率に利益をもたらさなかったため、甲状腺の自己免疫を持つ女性におけるレボチロキシン投与の有効性について疑問が生じました。このランダム化比較試験のメタアナリシスによる系統的レビューでは、レボチロキシン投与が甲状腺自己免疫のある女性の出産の改善やその他の利益と関連しているかどうかを評価しています。


Fertility and Sterility
”Effect of levothyroxine on pregnancy outcomes in women with thyroid autoimmunity: a systematic review with meta-analysis of randomized controlled trials”



・出産に関して
3件の論文で出生に関して報告されいます。すべての論文で妊娠前にレボチロキシンが使用されていました。レボチロキシン群に割り当てられた813人の女性のうち287人(35.3%)と対照群に割り当てられた813人の女性のうち285人(35.0%)で出生しており、
レボチロキシン投与が出生率の増加と関連していなかったことを示しています。


・流産に関して
流産率が報告され、発生率はレボチロキシン群で17.1%(121/708)、対照群で19.9%(143/719)で、
2群間に有意差はありませんでした。 


・早産に関して
早産の発生率は、レボチロキシン群で10.2%(69/672)、対照群で14.0%(96/682)であり、
2群間に有意差はありませんでした。 


・異所性妊娠に関して
レボチロキシン投与は異所性妊娠の割合とは
関連していませんでした。


・臨床妊娠に関して
レボチロキシン投与は臨床妊娠の割合とは
関連していませんでした。


新生児の転帰


新生児の転帰を報告したのは2件の論文のみでした。 出生時体重や新生児集中治療室入院の発生率に有意差はありませんでした。


まとめ
高品質から中程度のエビデンスレベルの報告では、甲状腺自己免疫のある女性では、レボチロキシンの使用は、出生率、流産率、妊娠に対する有益な効果とは関連がないことを示しました。

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