ビタミンDとIVFに関するsystematic reviewとmeta-analysis

ビタミンDを食事からは十分に摂取することは難しく約20%ほどで、残りの80%は日光に当たることにより皮膚からで合成されます。


ビタミンDの作用は腸管からのカルシウムの吸収を促進し、恒常性(適切な血清カルシウムとリンの濃度)を維持し骨の石灰化の促進に関与します。その他にも様々な作用を持ち細胞増殖、神経筋、免疫機能、炎症に関係している。


女性の生殖器系では、卵巣および子宮内膜の細胞増殖の調節、および子宮内膜の受容性に関与する遺伝子の発現に関与し、さらに抗ミューラー管ホルモン産生の調節を通じて一次卵胞動員を調節しているとも報告されています。


ビタミンDは、女性の生殖器系の生理機能に関与しているようです。しかし、ビタミンDが生殖補助医療の結果にどのように影響するかはまだ不明です。


ビタミンDは血清ビタミンD(25(OH)D)濃度で測定を行い、日本では30~100ng/mlが基準で、20以上~30未満が不足状態、20未満が欠乏症となります。日本女性のビタミンD不足は半数以上存在していると報告されています。
厚生労働省によると日本人ビタミンD摂取量は平均値:7.5μg、ビタミンD上限は4,000IU (1μg=40IU)とされています。


ビタミンDレベルと体外受精(IVF)の成功に関連性がないこという報告や、ビタミンDの不足や欠乏と、胚の質、臨床妊娠率、およびIVF後の継続妊娠率との間に負の関連性があるなど報告により様々です。


systematic reviewとmeta-analysisにてビタミンDの血清レベルとIVFの結果との関連を調査している報告をご紹介します。


Fertility and Sterility
”How vitamin D level influences in vitro fertilization outcomes: results of a systematic review and meta-analysis”


ビタミンDレベルを欠乏群(<20 ng / mL)、不足群(20-30 ng / mL)、正常群(> 30 ng / mL)の3つのグループに分類しています。


合計14件の研究で合計4,382人が含まれていました。


<臨床妊娠率>
・正常群(> 30 ng / mL)と欠乏群(<20 ng / mL)+不足群(20-30 ng / mL)(8件の研究から合計2,053人)

正常群の方が臨床妊娠率は高い結果でした


・欠乏群(<20 ng / mL)と不足群(20-30 ng / mL)+正常群(> 30 ng / mL)(9件の研究から合計2,284人)
有意差なし


・正常群(> 30 ng / mL)と不足群(20-30 ng / mL)(5件の研究から合計812人)
有意差なし


・正常群(> 30 ng / mL)と欠乏群(<20 ng / mL)(4件の研究から合計615人)
有意差なし


・欠乏群(<20 ng / mL)と不足群(20-30 ng / mL)(5件の研究から合計887人)
有意差なし


<流産率>
・正常群(> 30 ng / mL)と欠乏群(<20 ng / mL)+不足群(20-30 ng / mL)(6件の研究から合計881人)
有意差なし


・欠乏群(<20 ng / mL)と不足群(20-30 ng / mL)+正常群(> 30 ng / mL)(8件の研究から合計1,087人)
有意差なし


・正常群(> 30 ng / mL)と不足群(20-30 ng / mL)(5件の研究から合計553人)
有意差なし


・正常群(> 30 ng / mL)と欠乏群(<20 ng / mL)(5件の研究から合計428人)
有意差なし


・欠乏群(<20 ng / mL)と不足群(20-30 ng / mL)(5件の研究から合計553人)
有意差なし



<継続妊娠率・生児獲得率>
・正常群(> 30 ng / mL)と欠乏群(<20 ng / mL)+不足群(20-30 ng / mL)(6件の研究から合計1,659人)
正常群の方が継続妊娠率・生児獲得率は高い結果でした。


・欠乏群(<20 ng / mL)と不足群(20-30 ng / mL)+正常群(> 30 ng / mL)(9件の研究から合計2,712人)
有意差なし


・正常群(> 30 ng / mL)と不足群(20-30 ng / mL)(5件の研究から合計812人)
有意差なし


・正常群(> 30 ng / mL)と欠乏群(<20 ng / mL)(5件の研究から合計383人)
有意差なし


・欠乏群(<20 ng / mL)と不足群(20-30 ng / mL)(5件の研究から合計821人)
有意差なし


これらを感度解析という方法でさらに調査しています。


・正常群(> 30 ng / mL)と欠乏群(<20 ng / mL)+不足群(20-30 ng / mL)
有意差なし


・欠乏群(<20 ng / mL)と不足群(20-30 ng / mL)+正常群(> 30 ng / mL)
臨床妊娠率に関してビタミンDのレベルが20 ng / mL以上で良い結果となりましたが、継続妊娠率・生児獲得率・流産率は有意差なしでした。


・正常群(> 30 ng / mL)と不足群(20-30 ng / mL)
有意差なし


・正常群(> 30 ng / mL)と欠乏群(<20 ng / mL)
臨床妊娠率に関してビタミンDのレベルが30 ng / mL以上で良い結果となりましたが、継続妊娠率・生児獲得率・流産率は有意差なしでした。


・欠乏群(<20 ng / mL)と不足群(20-30 ng / mL)(5件の研究から合計821人)
有意差なし


<まとめ>
血清ビタミン
Dレベルは、臨床妊娠率・継続妊娠率・生児獲得率・流産率においてIVFの成績に影響を与えませんでした。生殖機能の理想的な25(OH)Dレベルはまだ不明であり、既存の臨床的推奨値よりも高い可能性があります。ビタミンDの閾値が生殖結果に影響を与えるかどうかを判断するために、大規模コホート研究が必要です。

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