コンパクションまでの時間と栄養外胚葉の質は、正倍数性胚盤胞移植後の出生の予測因子である:多施設共同研究

胚の形態学的評価は今まで静的評価のように、1日1回観察し胚の評価を行っていました。静的形態評価は染色体異数性とわずかに関連しているだけでありますが、タイムラプス顕微鏡の導入により胚の形態動態パターンを動的評価することで着床率の上昇を試みています。
異数性の着床前遺伝子検査(PGT-A)の目的は、異数性胚の移植を防ぐことにより着床率上昇(50−60%)・流産率低下(10%未満)させると報告されています。しかし、PGT-Aは胚の操作を伴う侵襲的な手順であり、適切なトレーニングと専門知識が必要です。したがって、非侵襲的な検査の探求が進行中であります。残念ながら、IVFの副産物(卵胞液、卵丘細胞、使用済み培養液など)を分析するために、メタボローム/プロテオミクスアプローチが報告されていますが、これらのアプローチの臨床的に使用可能かはまだ結論がでていません。


今回、タイムラプスとPGT-Aを組み合わせて胚を評価し出生の予測因子を検討している報告をご紹介いたします。


2019年12月 Fertility and Sterilty
"Time of morulation and trophectoderm quality are predictors of a live birth after euploid blastocyst transfer: a multicenter study"


タイムラプスパラメータは、Cirayらによって定義されました。 2番目の極体出現のタイミング(tPB2); 2、3、4、5、および8個の細胞に分裂終了のタイミング(t2、t3、t4、t5、およびt8);桑実胚形成のタイミング(tM);胚盤胞形成の開始のタイミング(tSB);初回細胞周期の長さ(cc1 = t2-tPB2)、2番目の細胞周期の長さ(cc2 = t4-t2)、3番目の細胞周期の長さ(cc3 = t8-t4);3細胞から4細胞の長さ(s2 = t4 − t3); 5細胞から8細胞の長さ(s3 = t8 − t5)。胚盤胞形成の時間(tB)および胚盤胞完全拡張の時間(tEB)としました。
生児獲得の予測因子を検討しています。


<結果>
初回凍結胚盤胞移植された正倍体胚あたりのLBRは40.5%でした。
生児出生を予測する因子は多変量解析にて動的評価法ではtMが統計的に有意であることが判明した唯一のパラメーターでした。静的な形態的特徴は多変量解析から統計的に有意であったのはTEのみでした。
形態良好なTE  tBおよびtM <80時間の正倍数体胚盤胞は凍結胚移植で62.5%の生児獲得率をもたらしました しかし、形態不良なTE tB、tMが80時間を超えると、LBRは21.0%になりました。


<結論>
この報告は、桑実胚形成の時期と栄養外胚葉の質は、正倍数性胚盤胞の妊娠成立の予測因子である可能性が示唆されました。

×

非ログインユーザーとして返信する