凍結期間は精子に影響するか

精液の凍結保存は、さまざまな細胞レベルで損傷を引き起こすと報告されており、精子の長期凍結保存において、運動精子に損傷を与える可能性があります。
提供精子を用いて凍結保存の影響を検討している報告をご紹介いたします。


2019年10月 Fertility and Sterilty
Long-term cryostorage of semen in a human sperm bank does not affect clinical outcomes


精子提供者7,128人の合計119,558検体を用いて、凍結前後の精液パラメーター、臨床妊娠率、流産率、精液使用後の生児出生率を後ろ向きに比較検討しています。


精子の凍結融解生存率は、15年間の凍結保存後に85.72%から73.98%と有意に減少しました。短期保存後の凍結融解生存率に変化はみられませんでした。
ドナー精子による人工授精を受けている保管期間がそれぞれ0.5〜5、6〜10、11〜15年のグループの臨床妊娠率:23.09%、22.36%、および22.32%であり、臨床流産率:10.06%、10.02%、12.00%、生児出生率:82.17%、80.21%、80.00%でした。
成績には有意差はありませんでした。


体外受精を受けている女性の臨床妊娠率:64.29%、64.94%、53.48%、臨床流産率:12.26%、11.38%、17.39%、生児出生率:81.63%、79.11%、73.91%でした。
体外受精の成績にも有意差はありませんでした。


<結果>
精子バンクにおける精液の長期凍結保存は、臨床成績に影響しませんでした。ただし、5年以上の凍結保存は、凍結融解したドナー精子の品質に悪影響を及ぼしました。


この報告からは15年の長期保存も妊娠率など治療成績には影響しないのではないかという結果でした。

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