不活化Covid-19ワクチンは、凍結融解胚移植の出生率、新生児転帰に影響しない

不活化Covid-19ワクチンは、凍結融解胚移植の出生率、新生児転帰に影響しないのではないかという報告をご紹介いたします。


Human Reproduction, Vol.37, No.12, pp. 2942–2951, 2022


2019 年の新型コロナウイルス (Covid-19) 感染症の世界的大流行は、世界の公衆衛生と経済に多大な負担を加えています。 パンデミックとの戦いは、Covid-19 ワクチンの普及率に大きく依存しています。 2021年のCNNの発表によるとCovid-19 ワクチンの世界的な普及率は、2021 年 12 月 8 日までに 46.5% です。この著者のデータによると、生殖補助医療(ART)領域で凍結融解胚移植(FET)を計画している男性パートナーのワクチン接種率は70.4%と高いものの、FETの前にワクチン接種を受けた女性は23.9%のみでした。 同様に、世界中の妊婦においてワクチン接種率とワクチン接種率が低いことが報告されています。 これは、ワクチンの安全性に関する懸念があるからと思われます。


現在、Covid-19 の不活化ワクチンは、全世界のほぼ半分を占めております。 凍結胚移植を行う女性はワクチン接種をためらっています。卵や胚に対するワクチンの未知の影響を考えると、Covid-19ワクチン接種の前に採卵し、胚を凍結する方法を選ぶ方もいます。しかし、凍結胚移植の前のワクチン接種が、胚移植の治療成績に悪影響を与えるかどうかわかりません。したがって、正確な情報が不足しているため、Covid-19ワクチン接種後の凍結胚移植を推奨かは、患者と医師にとって大きな課題のままです。


そこでこの報告は、不活化Covid-19ワクチンが、凍結胚移植の治療成績や新生児転帰に与える影響を検討しています。


Covid-19に感染したことのない(自己申告)不活化Covid-19ワクチンを投与した女性を対象としています。
新生児の出生時身長と体重、妊娠継続率、臨床的妊娠率、生化学的妊娠率、自然流産率、子宮外妊娠率を調査しています。


<結果>
502 人の女性 (23.9%) が FET の前にワクチン接種を受けたことが確認され、残りの1589人の女性はワクチン接種を受けておらず、ワクチン接種を受けていないグループとして分類されました。


ワクチン接種群は、ワクチン非接種群より不妊期間が著しく長く、刺激周期が多く、2個胚移植を行ったが方が多かった。しかし、最良好胚を移植した女性は少ない結果でした。


単変量解析で患者背景に有意差を認めていたため、多変量ロジスティック回帰と傾向スコアマッチングを使用してバランスが取れていることを確認し検討しています。
ワクチン接種群の生児獲得率、継続妊娠率、臨床妊娠率はワクチン非接種群と変わりありませんでした。 生化学的妊娠率、生化学的流産率、早期流産率、子宮外妊娠率は、PSMの前後の分析に関係なく、すべて同等でした。 新生児の出生時身長、出生時体重も同等でした。


次に、不活化ワクチンの投与回数は、胚移植の治療成績に明らかな影響を示さなかった
初回ワクチン接種から胚移植までの期間の中央値は 117.5 日で、3 か月未満 (n = 126)、3 ~ 6 か月 (n = 338)、6 か月超 (n = 38) の 3 つのサブグループに分けました。 3つのサブグループ間で治療成績に有意差は観察されませんでした(出生率、継続妊娠率、臨床妊娠率、流産率。 考えられる交絡因子を排除しても治療成績に有意な影響を示しませんでした。 新生児の出生時身長と出生時体重はすべて、サブグループ間で同等でした。


<結論>
凍結胚移植予定の女性では、ワクチン接種率が低い (23.9%) ことが観察されました。不活化Covid-19ワクチンは、凍結胚移植の生児出生率やその他の治療成績を損なうことはありませんでした。また、新生児の出生時体重と身長も、ワクチン接種後に変化を示しませんでした。ワクチン接種のために胚移植を延期すべきではありません。


こちらの報告は、不活化Covid-19ワクチンについての報告になります。他のワクチンに関しての報告も知りたいところです。



子宮内膜とSARS-CoV-2 ウイルスについて


ウイルス感染性関連遺伝子である ACE2 および TMPRSS4 は、ヒト子宮内膜で発現していることが確認されています。これを介して、SARS-CoV-2 ウイルスが細胞に侵入して感染し、組織損傷を引き起こす可能性があります。Henarejos-Castilloらの報告によるとウイルス感染性関連遺伝子の発現量は増殖期から分泌期にかけて増加するため、胚の着床期に SARS-CoV-2 の感染リスクの可能性を示しています。 この SARS-CoV-2 の感染リスクを考えると、胚移植を計画場合は Covid-19 ワクチンによる感染予防が必要かもしれません。ただし、不活化Covid-19ワクチンがヒトの子宮内膜受容性に影響を与える可能性があるかどうかはまだわかりません。

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