片側卵巣摘出術を行ったら出生率と妊娠率の両方が大幅に低下する

卵巣を片側切除した女性の妊娠・出産についての系統的レビューとメタアナリシスが発表されましたのでご紹介いたします。


Fertility and Sterility® Vol. 117, No. 5, May 2022 0015-0282


片側卵巣摘出術(UO)は、悪性や良性の卵巣腫瘍、卵巣嚢胞、子宮内膜症、卵管卵巣膿瘍、および卵巣捻転の治療のために行なわれることがあります。多くの研究は、生殖補助医療において、卵胞発育に必要なゴナドトロピンの量が多いことから、UOが卵巣の感受性に悪影響を与えることを示唆しています。さらに、UOを行なった女性は、両側とも卵巣のある対照女性と比較して採卵数が少ないと報告されています。しかし、UOが妊娠率または出生率に有害であるかどうかを示す明確なデータはありません。片側が切除されても残りの卵巣の代償性肥大がおこり、残りの卵巣はシグナル伝達の変化による喪失を何らかの形で補うのではないかともいわれています。このことは、UOを受けた年配女性の抗ミューラー管ホルモンの血清レベルの上昇または維持を示す研究によってさらに裏付けられています。しかし、コホート研究では、UOをうけた女性では閉経が早くなる傾向があると報告されています。また、この著者の研究グループは、41,846サイクルのIVF / ICSI治療を受けた22,847人の女性を含む大規模な多施設コホート研究で、UOを受けた女性の妊娠率と出生率の両方が有意に低いことを示しました。
この系統的レビューとメタアナリシスの目的は、体外受精/卵細胞質内精子注入法(IVF / ICSI)を受けた以前のUOの女性に関する文献をレビューし、UOが出生率と妊娠率に及ぼす影響を定量化することです。


3,029件の研究から最終的に18件の研究にしぼりメタアナリシスを行なっています。UOを行った女性1,057 IVF / ICSIサイクル、対照群として卵巣切除していない女性の45,813 IVF/ICSIサイクルが含まれていました。すべての分析は、新鮮な胚移植での結果です。出生率の主要な結果の分析のために5件の研究、妊娠率の主要な結果の分析のために15件の研究、ゴナドトロピン刺激量、および採卵数については、15件と16件の研究が含まれていました。


・臨床妊娠率について


メタアナリシスには15件の研究が含まれ、UOの女性では合計1,138サイクル、対照サイクルは45,888サイクルでした、13件の研究がUO患者のサイクルあたりの臨床妊娠率が低いことを報告しましたが、有意差がみとめたのは5つの研究のみでした。
UO群において初回サイクルの臨床妊娠率が対照群と比較すると0.7倍有意に低い結果でした。


さらに妊娠率は、採卵数と移植胚数に相関していました



・出生率


観察コホートまたはケースコントロール研究として5件の研究が含まれ、UO群500サイクルと対照群42,865サイクルでした。
結果
ORは、対照群と比較して、UO群の方が出産率は0.72倍有意に低い結果でした。


・投与されたゴナドトロピン


ゴナドトロピンの使用量については15件の研究で評価されており、UO群870サイクルと対照群44,160サイクルでした。(ただ様々な刺激方法が混ざっている)
結果
対照群と比較して、UO群でゴナドトロピン投与量は有意に多い結果でした。(MD:400)


・採卵数


採卵数については16件の研究で評価されており、UO群では1,014サイクル、対照群45,263サイクルでした。
対照群と比較して、UO群で採卵数は有意に少ない結果でした。(MD:-1.8)


<まとめ>
この報告では、UOを受けた女性の出生率と妊娠率の両方が大幅に低下していることが示されました。また、投与されたゴナドトロピン量が大幅に増加し、UO患者で採卵数が少ないことも観察されました。
UO群の卵巣感受性が低いことがわかり、採卵数が少ないと妊娠率に悪影響を与える可能性が高いことがわかります。
ただ、研究間で基準のばらつきもあるため、この結果は注意して解釈する必要があります。

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