凍結胚移植の黄体補充に腟剤単剤より経口プロゲステロンを併用したほうがよい

プロゲステロンは、子宮内膜を胚の着床を可能にする分泌期を引き起こす重要なホルモンです。体外受精では、黄体期の補充のために外因性プロゲステロンが投与されます。しかし、腟壁を介したプロゲステロンの吸収には個人差があります。凍結胚移植後の微粉化プロゲステロン腟剤と比較して、ジドロゲステロンと微粉化プロゲステロン腟剤の組み合わせによる黄体期補充の有効性に関するデータはありません。


そこでこの報告は、プロゲステロン腟剤に経口ジドロゲステロンを黄体補充として追加すると単剤と比較して凍結胚移植後の妊娠転帰が改善するか調査しています。


ベトナムから発表された前向き研究です。
Human Reproduction, Volume 36, Issue 7, July 2021, Pages 1821–1831


凍結胚移植を行った1364例を対象に、プロゲステロン腟剤単剤群 632例とプロゲステロン腟剤に経口ジドロゲステロンを追加した群 732例の妊娠転帰を調査しています。


黄体補充は以下の様にしています。
プロゲステロン腟剤に経口ジドロゲステロンを追加した群:微粉化プロゲステロン腟剤400mgを1日2回と経口ジドロゲステロン10mgを1日2回
プロゲステロン腟剤単剤群:微粉化プロゲステロン腟剤400mgを1日2回


生児獲得率は
プロゲステロン腟剤に経口ジドロゲステロンを追加した群:46.2%
プロゲステロン腟剤単剤群:41.3%
多変量解析でも有意に経口ジドロゲステロンを追加した群の方が良好でした。


12週未満の流産率は
プロゲステロン腟剤に経口ジドロゲステロンを追加した群:3.4%
プロゲステロン腟剤単剤群:6.6%
有意に経口ジドロゲステロンを追加した群の方が低い結果でした。


出生体重は有意に経口ジドロゲステロンを追加した群の方軽い結果でした。


<まとめ>
微粉化プロゲステロン腟剤に経口ジドロゲステロンを追加した方が生児獲得率が高く、流産率が低いという結果でした。




腟壁を介したプロゲステロンの吸収には個人差があり、内服薬でプロゲステロンを補充することで腟剤の吸収不良に関係する問題を解決することで、出産率を高めることができる可能性があります。主にプロゲステロン受容体に対して高い特異性を持つジドロゲステロンの活性によるものであった可能性があります。
ただどの様な症例が吸収不良であるかはわかりません。


ジドロゲステロンによる治療は、前向き研究で流産を減らすのではないかという報告があります。これは、サイトカインプロファイルの調節とTヘルパー(Th)1からTh2優位へのシフトによるものと考えられています。


出生体重に関しては併用療法群の早産率の違いが原因である可能性が書かれていました。

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