裸化前の卵母細胞培養の延長は、臨床妊娠率、生児獲得率、および累積生児獲得率の増加と関連する?

採卵から受精の間の数時間の培養は、元々Trounsonらによって1982年に導入されました。 細胞質の成熟と発生能の獲得を可能にするために一般的に行われているプロセスであり、初期の研究では受精率と胚の質の改善が報告されています。Trounsonらによると短期間では不十分で卵母細胞の倍数性または活性化の失敗を引き起こす可能性がありますが、培養を延長すると、時間依存性の老化プロセスにより卵母細胞の発達をサポートする能力が低下し、細胞内の構造変化を引き起こす可能性があります。
Pujolらは2018年に採卵とICSIの間の1時間ごとに、臨床妊娠を達成する確率が7.7%減少することを報告しており、さまざまな報告があります。


成熟過程における卵丘細胞と卵母細胞の相互作用についてはまだわからないこともあり、ICSIまで卵丘細胞に囲まれたまま培養するか、回収直後に裸化すればよいかは明らかになっていません。ブタモデルでは、卵丘細胞は、活性酸素種から卵母細胞を保護し、細胞質の成熟と発達能力を高め(Tatemoto)、またはウシ卵母細胞のin vitroで誘発される脂肪毒性に対して作用し(Lolicato)一方、マウスでは、可溶性の老化促進因子の分泌を介して卵母細胞の老化の加速効果があると報告されています。


この研究は、採卵から裸化またはICSIまでの時間は、出生率に影響するか調査しています。
Human Reproduction
"The effect of denudation and injection timing in the reproductive outcomes of ICSI cycles: new insights into the risk of in vitro oocyte ageing"


930人合計1378のICSIサイクルが分析に含まれました。
OPUと裸化(<3時間、3〜4時間および≥4時間)までの培養期間、OPUと ICSI(<5時間、5–6時間および≥6時間)、裸化からICSIまで(<1時間、1.5–2時間、≥2時間)に分類しています。


結果
・採卵から裸化までの時間(<3時間、3〜4時間および≥4時間)
臨床転帰については、卵丘細胞除去を3時間未満と比較した場合、培養時間を4時間以上延長すると、単変量解析と多変量解析の両方で、臨床妊娠率改善をみとめ、交絡因子調整後の分析で生児獲得率と累積生児獲得率の改善が示されました。


・採卵からICSIまでの時間(<5時間、5–6時間および≥6時間)
採卵からICSIまでの異なる時間間隔を比較すると、正常受精やICSI後の損傷率に有意な影響はみられませんでした。 
臨床妊娠率もグループ間で同等でしたが、交絡因子調整後生児獲得率(それぞれ31.7%、35.8%、27.4%)と累積生児獲得率(それぞれ34.2%、36.6%、27.7%)で、ICSIが 5〜6時間と比較した場合、6時間以上でICSIした場合は低くなりました。


・裸化からICSIまでの時間(<1時間、1.5–2時間、≥2時間)
累積生児獲得率における裸化からICSIまでの時間の影響は、採卵-ICSIで見られたものと同様の傾向(それぞれ37.7%、37.5%、および30.1%)を示しました。さらに追加で分析したところ、裸化までの培養の1時間ごとに、累積生児獲得率の3.0%(95%CI 0.9%〜5.1%、P = 0.006)の増加に関連し、ICSIまでの培養の時間ごとに累積生児獲得率は2.4%減少しました(95%CI -4.6%〜-0.3%、P = 0.026)。


<まとめ>
裸化前の卵母細胞培養の延長(> 4時間)は、今までの裸化のタイミングと比較した場合、臨床妊娠、生児獲得、および累積生児獲得率の増加と関連していました。

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