精液のヒトパピローマイウルス(HPV)が精液所見やIVFの成績に影響する?

ヒトパピローマウイルス(HPV)は、男性と女性の両方でみられる一般的な性感染症の1つです。 200種類以上のHPVが確認されており、性器タイプは、高リスク(HR)および低リスク(LR)サブタイプに分類されます。 HR HPVタイプ(主に16および18)は、子宮頸癌の主な病因因子として報告されています。


男性では、HR HPVタイプは肛門がん、陰茎がん、および頭頸部がんの一部に関連しています。さらに、HPVは無症状の男性の精液にも存在する可能性があります。
精液中のHPVは、精液所見および精子の質に影響する可能性もあります。最近のデータは、HPV精液感染が、数、運動性、形態やDNA断片化などの精子所見を悪化させることにより、男性の不妊症の危険因子である可能性があることを示されています。


HPVが精子の質やARTの結果に及ぼすか、メタ解析が行われた報告が発表されています。


2020年5月 Fertility and Sterilty
”Evaluation of human papilloma virus in semen as a risk factor for low sperm quality and poor in vitro fertilization outcomes: a systematic review and meta-analysis”


この報告によると、
精子中のHPVの存在は、精子濃度、運動率、および正常形態率と有意な悪化させる可能性を示しましたが、精液量との関連性を示しませんでした。


ARTに関しては、HPV感染が胚の質低下の原因因子であるという報告や、妊娠率の有意な低下と、胚盤胞形成低下、および流産率上昇と強い関連を示している報告があります。しかし、データの不足のため、メタ解析はできていません。


HPVは上皮細胞に感染して増殖しますが、精液は性交中のHPV輸送の媒体と考えられており、HPV感染の貯留層は精巣、精嚢、および精管とみられています。 HPV精子感染の有病率は、不妊患者の集団で16%と推定されルト報告されています。 HPVは精子頭部に結合する可能性があり、また精液サンプル中の剥離した上皮細胞に存在する可能性もあります。
しかし、HPVが精子の質や胚発生に悪影響をもたらすメカニズムは不明です。


データが増えてエビデンスレベルが上昇するようなら、精液中のHPVの存在を確認するのも妊娠率上昇の一つになるかもしれません。

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