子宮内膜症手術は周産期リスク・周産期合併症に関係する?

子宮内膜症は、生殖年齢の女性の5−10%ほど、不妊症女性の50%近くに合併しているといわれています。主な症状は、月経困難症、慢性骨盤痛、性交疼痛症などがあります。


妊娠は子宮内膜症に関連している上記の症状の改善につながる可能性がありますが、いくつかの研究では子宮内膜症が産科合併症のリスクを増悪させている可能性も報告されています。早産、前置胎盤、分娩前および分娩後の出血、低出生体重、帝王切開、腸穿孔などのリスクが増加すると報告もあります。また、子宮内膜症病変の種類、および子宮内膜症手術既往も、産科の転帰に影響を与える可能性も報告されています。


本日は子宮内膜症手術と周産期リスク・合併症についてのフランスの報告をご紹介いたします。


2020年5月 Fertility and Sterility


”Pregnancy outcomes in women with history of surgery for endometriosis”



妊娠前に子宮内膜症の手術を受けた1,267人のうち、569人が手術後に少なくとも1回妊娠した方を対象とし、早産、前置胎盤、在胎期間より小さく生まれた新生児(SGA)に関してそれぞれ調査しています。



①早産については、単胎妊娠535件中53件(9.9%)、双胎妊娠31件中19件(61.2%)で発生し、BMI・膀胱子宮内膜症・直腸手術・妊娠様式に関係している可能性がありました。


②前置胎盤については、単胎妊娠535件中9件(1.7%)、双胎妊娠31件中0件(29%)で、内膜症ステージ・妊娠様式に関連している可能性がありました。


③SGAについては、単胎妊娠535件中81件(15.1%)、双胎妊娠31件中9件(29%)で観察され、子宮内膜症の有無・妊娠様式が関係しているのではないかという結果でした。


ここでさらに多変量解析で関係性を詳しく分析すると、


①早産リスクの増加に関連する独立した要因は、ARTによる妊娠、BMI> 30 kg / m 2、および直腸と膀胱に浸潤する深部子宮内膜症の手術の既往でした。


②前置胎盤に関連する独立した要因はARTでの妊娠でしたが、この報告では前置胎盤の女性はすべて内膜症ステージIIIまたはIVの手術を受けていました。そのため、ARTでの妊娠が前置胎盤のリスクを増加させるかは不明でした。


③SGAに関連する独立した要因は、内膜症性嚢胞手術でした。


まとめますと


フランスの一般集団と比較して、子宮内膜症の外科的管理の病歴を持つ女性におけるSGAおよび早産の有病率が高いことを明らかにしました。これらの結果は、妊娠前に子宮内膜症が完全に治癒しているにもかかわらず、子宮内膜症の手術歴のある女性が産科合併症のリスクが増加することを示唆しています。さらに、直腸または膀胱の深部子宮内膜症の治療を受けた女性は、早産のリスクが高くなりますが、ARTによる妊娠が多いため、これらの結果に影響が出ている可能性があります。


自然妊娠群において子宮内膜症手術の既往が一般集団と比較して、周産期リスク・合併症が高いかどうか判断するのは、さらなる研究が必要です。

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