採卵時期と凍結胚移植の成績

季節により体外受精の成績が異なるという報告や季節とは関係がないという報告があります。


Human Reproduction, 2023, 38(9), 1714–1722


 Vandekerckhoveらのベルギーの報告では、日照時間が長くなり、雨の日が少なくなり新鮮胚移植の出生率の増加に関連したという季節変動の研究があります。イスラエルでは日照時間の増加、イランでは秋になると、受精率や胚の質など改善が報告されています。ただ、臨床妊娠率は増加しているが、生児出生率は増加していないようでした。
カナダの報告では、移植時の季節が妊娠率および出生率に影響を及ぼさず、イスラエル研究では合計17,485サイクルの凍結胚移植(FET)サイクルが行われたが、臨床妊娠率は胚移植時の季節に影響は見出されませんでした。
Correiaらによると気象季節と採卵時の気温と、凍結胚移植後の出生率との関連性が報告されている。 夏や気温が高い日に採卵した場合、出生率や臨床妊娠率と関連する可能性が高いですが、胚移植当日の気温や季節は影響しなかったと報告しています。


 この報告は、採卵時と胚移植時の季節、気温、日照時間が、南半球での妊娠転帰と関連しているかを評価しています。 



夏(12 月~2 月)、秋(3 月~5 月)、冬(6 月~8 月)、春(9 月~11 月)という気象季節ごとに分類されました。採卵時、融解胚移植時の平均気温、最高気温と最低気温、日照時間を記録されました。


平均気温(℃):低温:7.9~15.5、中等度:15.6~20.9、高温:21.0~33.9
最高気温(℃):低温:13.2~21.2、中等度:21.3~27.4、高温:27.5~43.3
最低温度   (℃) : 低温: 0.1~9.8、中等度: 9.9~14.4、高温: 14.5~27.8
日照時間:短い:0~7.6日、中等度:7.7~10.6日、長い:10.7~13.3日
また、採卵または胚移植の前14日と前28日を観測しています。


8年間の研究期間中に3,659件の凍結胚移植が実施され、1,835人の患者の2,155回の体外受精サイクルから胚が生成された。



臨床転帰
 秋を基準季節とし検討した結果、秋に採卵した卵由来の凍結胚移植は当たりの出生率が最も低くなりました。夏に採卵した胚を凍結胚移植した場合、秋由来の胚より生児出産率が30%増加したという結果でした。


 採卵時の日中の平均気温に関しては、出生率に変わりはありませんでしたが、採卵時の日照時間が長い場合(10.7〜13.3 時間)、短い場合(0~7.6 時間)と比較すると出生確率が28%増加することが観察されました。 これは、FET 当日の日照時間を調整しても一貫していました。


 移植当日の最低気温が高い場合(14.5~27.8℃)は低い場合(0.1~9.8℃)に比べて出生確率が18%低下した。春に凍結胚移植を行った場合は、秋に凍結胚移植を行った場合に比べると生児出産率が低い結果でした(OR: 0.80、95% CI: 0.64-0.98、P = 0.035)。 ただ、採卵時の季節で調整すると、有意差はなくなりました。


 採卵または胚移植の前14日間と前28 日間の平均気温と日照時間に基づいて出生率を分析したところ、出生率に統計的な差異はありませんでした。


生化学的妊娠、臨床妊娠、流産、出生率には、季節や採卵日の日照時間に基づく変化は観察されませんでした。


採卵日の平均体温または最高気温が低温に比べて中等度で流産率が最も低かったが、生化学的妊娠、臨床妊娠率、または出生率には差はみられませんでした。


凍結胚移植について


生化学妊娠率は、凍結胚移植時の日照時間が少ない場合に比べて中等度である場合に増加しました。生化学妊娠率は春に比べて秋に減少しましたが、出生率に関しては、採卵時の季節で調整した後もこの差は持続しませんでした。


臨床妊娠率、流産率、出生率には、季節、日照時間、胚移植当日の平均気温による有意差は認められませんでした。 しかし、最高気温が低温(13.2~21.2℃)と比較して、最高気温高温(27.5~43.3℃)で、流産率は42%増加しました。



採卵について


ピークエストラジオールレベルは冬で高い結果でした。
受精率の増加は、日照時間が短い群(0~7.6 時)と比較して、長い群(10.7~13.3 時)における14日間の平均日照時間と関連していた。 季節、日照時間、14 日および 28 日の平均気温、最低気温、最高気温は、体外受精サイクルあたりの採卵数や使用可能な胚盤胞率に影響はありませんでした。



<まとめ>
 この報告では、採卵時が、季節が夏であること、日照時間が長いことが、凍結胚移植の出生率に影響を与える可能性が考えられました。 夏に採卵した場合の出生率は、秋に比べて30%高く、日照時間が長い場合、短い場合に比べて28%高かった。 これらは、胚移植当日の季節等は関係ありませんでした。



季節や日照時間に関しては、メラトニンやビタミンDが関係していると考えられます。


 メラトニンは、明暗により分泌が調節されているホルモンです。メラトニンは、活性酸素から組織を守ろうとする抗酸化作用などにより、卵胞内で酸化ストレスが卵の質の低下に関係している可能性があり、メラトニンが酸化ストレスを抑制していると報告されています。
ただ、Huらはメラトニンの補給は発生学的転帰を改善するが、体外受精における出生率は改善しないと報告しています。


 Paffoniらによりビタミン D レベルも体外受精の結果に影響を与えると報告されています。されていますが (Paffoni et al., 2014)、これは子宮内膜効果によるものである可能性があると推測されています (Rudick et al., 2012)。 オーストラリアの人口では、25(OH)D レベルは夏と秋には同程度ですが、冬には急激に低下します (Voo et al., 2020)。 秋に採取された卵子では出生率が最も低かったことを考えると、卵子採取時のビタミンDレベルが重要な役割を果たす可能性は低い。 さらに、最近の系統的レビューとメタ分析では、ビタミンDレベルの出生率に対する有意な影響は見出されなかった(Cozzolino et al., 2020)。

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