一方の卵巣が摘出された後は、もう片方の卵巣の反応性が上昇する

片側卵巣切除術が FSH に対する胞状卵胞の反応性が変化するか検討した報告


Human Reproduction, Volume 38, Issue 6, June 2023, Pages 1168–1182,


 片方の卵巣が無くなると卵子の半分が急になくなることとなります。そのため、AMHは低下します。抗ミュラー管ホルモン(AMH)レベルは、AMHレベルが高い群と比較し、AMHレベルが低い群と比較するとゆっくり低下するとKatらにより報告されている。閉経時期に関しては、変わらないか少し早くなる程度です。


 採卵数は、片方の卵巣摘出した場合は減少しますが、性腺刺激ホルモンに対する卵巣の感受性が低下している可能性も示唆されています。そのためこの報告は、片側卵巣切除術が FSH に対する胞状卵胞の反応性が変化するか検討しています。


両方の卵巣で、直径 3 ~ 9 mm のすべての卵胞数 (AFC) と、直径 16 ~ 22 mm の卵胞数 (排卵前卵胞数、PFC) をトリガー日に測定しました。


FORT : トリガー日の PFC/ 月経3 日目の AFC× 100  
Alviggiらの卵胞対卵母細胞指数(FOI):採卵数/AFC×100
Liらの卵巣感受性指数 (OSI):採卵数 /FSH の総用量× 1000


 344人(単一卵巣群:n = 86、対照群:n = 258)を対象とました。
血清AMHレベル(1.8 対 1.0)およびベースラインAFC(13.0 対 9.0)と対照群の方が良い結果でした。


 トリガー日のPFCは、対照群と比較した場合、単一卵巣群で有意に低く、採卵成熟卵数も対照群の方が有意に多かった。 しかし、FORT の分析では、有意差は示されませんでした。 さらに、FSH に対する卵巣感受性を表すFOIやOSIは、両群間に差はありませんでした。 AMH とベースライン AFC に関する多変量解析では、卵巣刺激結果 (トリガー日の PFC、採卵数、採卵成熟卵数) のいずれも統計的に異なるものはありませんでした。


 片側卵巣群のみで検討したところ、AMHとベースラインAFCを調整後の分析では、片側卵巣摘出術後のトリガー日のPFCが高く、FORT比が高いことが明らかになりました。


 これは、卵巣が1つ残っている女性の卵巣機能を最適化するための適応メカニズムである可能性があります。実際、片側卵巣の女性は、通常女性と比較して、全体的に産生する卵母細胞の数が少ないにもかかわらず、体外受精の結果は同等のままであり、生殖能力が損なわれていない可能性をKhanらは報告しています。


 メカニズムは解明されていませんが、著者は片側卵巣摘出術後の残りの卵巣内の小さな胞状卵胞の顆粒膜細胞上の FSH 受容体の密度がより高くなっているのではないかと考えていました。



 この研究は、外因性FSHに対する胞状卵胞の反応性が、年齢が一致した対照の同側卵巣における反応性と比較して、片側卵巣摘出術を受けた女性において増加している可能性を提示しました。

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