子宮筋腫と腺筋症が妊娠に影響するか②

今回は腺筋症についてご紹介いたします。


②子宮腺筋症
子宮腺筋症とは、子宮筋層への子宮内膜の浸潤を特徴とする非腫瘍性の良性子宮疾患です。 実際、異所性子内膜腺・間質は、子宮筋組織内に見られ、肥厚性・過形成性の子宮筋層に囲まれています。一般的に後壁が多いと報告されています。子宮腺筋症病変が限局的に増殖した場合は腺筋腫と言われ筋腫のように見えることがあり、月経困難症を伴うことがあります。超音波だけでは、診断が難しくMRIを用いて判断することもあります。


3 分の1は無症候性ですが、主な臨床症状として、月経過多や月経困難症などがあります。 慢性的な骨盤痛を訴えることもあります。真の罹患率は不明ですが、女性の20%ほどが罹患しているという報告もあります。Kunz G.らの報告によると、子宮内膜症群の 79%、一般群の 9% に腺筋病変が存在するとのことでした。


・腺筋症と不妊症
腺筋症と不妊症との明確な関連性はわかっていませんが、腺筋症と不妊を結びつける強いエビデンスはないようです。腺筋症が不妊症の原因となる可能性が以下に述べられています。


子宮の蠕動を介して、排卵が起こる卵巣と同側の卵管に精子を送り込むことが知られていますが、腺筋症による異常な子宮収縮がそれをじゃまし妊娠しにくくなるのではないかという報告もあります。また、子宮収縮の頻度が多いほど着床率と妊娠率が低いという報告がありますが、腺筋症が着床不全の原因と断定するほどのエビデンスはありません。


また、Otaらの報告によると腺筋症では子宮内膜の胚の受容能も損なわれるようです。 子宮内膜間質の血管新生は分泌期に異常に増加し、子宮内膜環境を混乱させ、着床に悪影響を与えるのではないかということでした。


さらに、子宮内膜におけるサイトカインや成長因子、シトクロム P450、β3インテグリンなどの細胞接着分子の発現プロファイルの変化が、腺筋症により不妊症を引き起こす原因の一つである可能性もあります。


メタアナライシスでは、腺筋症が着床率・出生率を下げるという報告や変わらないという報告があり様々です。


・腺筋症合併妊娠
腺筋症は、早産や破水のリスクが増加することが報告されており、潜在的なメカニズムとして、脱落膜絨毛羊膜または全身性炎症が考えられています。Sandberg E. C.らの腺筋症に関連する産科合併症に関する文献のレビューでは、29例のみでありますが、子宮破裂、分娩後出血、異所性妊娠のリスクが増加することが報告されています。ただ、腺筋症が産科転帰のリスクに影響を与えることという強力なエビデンスはないようです。


・治療
挙児希望であれば、限局性の腺筋症であれば腺筋腫の切除が選択肢となります。機能的な子宮を維持するため、びまん性の腺筋症であれば異常組織の部分的切除などが選択肢となりますが、その後の妊娠経過に関する報告が少なく慎重な判断が必要となります。また、筋腫と同様に子宮動脈塞栓術やMRI ガイド下集束超音波手術(MRIgFUS)なども行なっている施設もあります。
ただ、一般的にはホルモン療法を勧められうことが多いと思われます。

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