喘息と妊娠

妊娠と喘息の関連を調べた人口ベースの調査をご紹介いたします。


Human Reproduction, Vol.37, No.12, pp. 2932–2941, 2022


喘息は生殖年齢の女性の間で最も一般的な慢性疾患の 1 つであり、有病率は一般に 8 ~ 10% と報告されています。DenburgやJuul Gadeらにより慢性炎症は気道を超えて全身に影響を及ぼし、それによって生殖器に影響を与える可能性があることが示唆されています。今までも複数の報告で、喘息が生殖機能に影響を与える可能性があることが示されています。喘息は、子宮内膜症や多嚢胞性卵巣症候群と関連しているのではないかいわれており、月経不順と流産のリスクが高いと報告されています。喘息が妊娠までの期間を延長される可能性 (Gade et al., 2014)、不妊症患者の成功率の低下 (Gade et al., 2016)、およびART を必要とする割合の増加 、抗喘息薬の使用は、不妊症や妊孕能の低下に関係するなど、ほとんどの研究は小規模な集団であり、自己申告による喘息の診断で一貫性がありませんでした。 


この報告はスエーデンの人口ベースの研究で、喘息の診断を受けた女性は、出産、不妊症、ARTおよび流産のリスクに関連しているか検討しています。


医師による喘息の診断が 2 回以上記録された女性のみが含まれました(n = 22 261)。最終的に研究の対象となったのは 6445 人の喘息女性でした。


<結果>
喘息女性と対象集団において、喘息女性は出産年齢がやや若く、肥満と診断されることが多かった。出産については、喘息の有無で差はありませんでしたが、不妊治療を受けた割合は、喘息女性で1.29倍増加していました。ただ、不妊治療後の出産の割合は変わりませんでした。
喘息女性では対象集団より流産のリスクが1.21倍高い結果でした。
無排卵、卵管因子不妊症、および原因不明不妊症のリスクが高いことが明らかになりました。また、生殖補助医療を必要とする割合は、喘息女性で1.34倍高い結果でした。


<まとめ>
喘息は女性の生殖機能に関係があり、流産、臨床的不妊症の割合が高くなり、生殖補助医療を受ける割合が高くなることがわかりました。ただ、喘息女性のその後の出産については差はみられませんでした。



DenburgやJuul Gadeらにより喘息は、全身性サイトカインの不均衡として、気道を超えて全身に影響を及ぼし生殖機能に影響を与える可能性があると報告されていおり、インターロイキン-6、腫瘍壊死因子-α (TNF-α)やナチュラル キラー細胞の上昇は、喘息と生殖機能の両方に共通しています。TNF-α は、着床、胎盤形成、妊娠の転帰に関連する炎症メカニズムの中心です。 Alijotas-Reigらによると、TNF-α レベルの上昇は、習慣流産と着床不全の両方に関連しており、習慣流産は TNF-α 遮断薬投与により生児出生率が増加したという報告が発表されています。 炎症反応が抑制されてた喘息患者は、治療を受けていない喘息患者と比較すると、妊娠率の低下や妊娠期間の延長はみられていない為、喘息に伴うサイトカイン産生が生殖領域に悪影響を及ぼしている可能性が考えられます。

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