ARTを行った女性の内膜症性嚢胞および深部浸潤性子宮内膜症の有病率

経膣超音波検査を慎重にすることにより診断する子宮内膜症性嚢胞と深部浸潤性子宮内膜症 (DIE) の有病率について調査して報告をご紹介いたします。


Fertility and Sterility® Vol. 118, No. 5, November 2022 0015-0282


子宮内膜症はホルモン依存性疾患であり、本来の子宮内膜とは別の場所に子宮内膜腺および間質を特徴としています。深部浸潤性子宮内膜症は、腹膜に子宮内膜様の組織病変があり、腹膜表面より広がり強い疼痛を訴えることがあります。子宮内膜症は、癒着や構造異常を引き起こし、免疫学的要因を介して卵巣予備能または胚着床に影響を与える可能性があります。
最近の研究によると、子宮内膜症と診断された不妊症の女性は、ART の成功率が低くなる可能性がいわれております。これにより、ART を開始する前に子宮内膜症の診断が必要になります。2012年の米国生殖医学会スコアは、子宮内膜症の外科的所見と生殖能力を関連付けるため最も広く使われている分類システムです。表在性子宮内膜症の記述には優れていますが、膣、腸、子宮仙骨靭帯、膀胱など後腹膜構造における DIE の存在を考慮していません。内膜症診断の為だけに腹腔鏡を行うことは一般的ではないため、超音波検査での DIE の所見を記述するための統一されたシステムが必要です。International Deep Endometriosis Analysis (IDEA) グループは、骨盤内の DIE 病変の超音波位置と計測するために使用される用語と定義の標準化を提案しています。
 この前向き研究の目的は、初回 ARTを行った女性の大規模なコホートにおいて、IDEA 用語を使用した体系的な TVS 検査によって評価した、子宮内膜症と DIE の有病率を検討することでした。


1,191 人の女性が研究に含まれました。超音波検査(TVS)で子宮内膜症病変が 260 人 (21.8%) で認められました。これらのうち、63 人 (5.3%) の女性が過去に内膜症と診断されていました。 したがって、197 人 (16.5%) の女性は、子宮内膜症の知識が無かったことになります。TVS 検査では、125 人 (10.5%) が内膜症性嚢胞に罹患しており、205 人 (17.2%) が DIE に罹患していた。 内膜症性嚢胞と DIE の合併は 70 人 (5.9%) の女性で発見されました。 子宮内膜症の最も一般的な部位は子宮仙骨靱帯であり、151 人 (12.7%) の女性に病変がみられ、続いて 125 人 (10.5%) の女性に内膜症性嚢胞がみられました。


腸病変は、直腸前部で最も頻繁に認められた。
膣壁の子宮内膜症は、18 人 (1.5%) の女性で“diabolo-like”結節と関連していました。kissing卵巣は 17 人 (1.4%) の女性に見られ、そのうち 16 人は内膜症性嚢胞を併発していた。


合計で、57 人 (4.8%) の女性が 子宮と直腸の閉塞を示し、87 人 (7.3%) の女性が中等度の癒着を示しました。 子宮と直腸の閉塞は、子宮内膜症病変、手術の既往、骨盤内感染の既往と関連性が高い結果でした。


何らか症状のある方は、子宮内膜症のない女性 (635/931、68%) と比較して、DIE または内膜症性嚢胞 (244/260、98%) で統計的に有意でした。月経困難症が最も頻度の高い症状であり、子宮内膜症の 98% (244/260) とそうでない女性の 68% (635/931) で報告された。


結論として、IDEA の用語と定義を使用した体系的な TVS 検査によって評価された、ART を行った不妊症の女性における内膜症性嚢胞と DIE の有病率は 21.8% でした。内膜症性嚢胞と DIE の女性の 4 分の 3 は、子宮内膜症に関する知識がありませんでした。これは、この疾患に対する意識を高める必要性を反映しており、不妊症の女性の体系的な超音波検査の重要性がわかります。


内膜症性嚢胞と DIE の有病率は21.8%と思ったより多い割合かと思われます。内膜症の治療の一つは妊娠であり、早めの介入を行った方が良いかも知れません。


ちなみに超音波では
(a) 内膜症性嚢胞、
(b) 横断面に両側卵巣がくっついている内膜症性嚢胞、
(c) 前腸壁の筋層における低エコー病変、
(d) 横断面における右子宮仙骨靭帯の子宮内膜症病変、
(e) 膣壁の子宮内膜症病変、
(f) ”diabolo-like”結節、
(g) 膀胱の子宮内膜症病変、
(h) 直腸膣中隔の子宮内膜症病変、
(i) 子宮に付着した腸内の子宮内膜結節を伴うダグラス嚢の閉塞
を調べていました。

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