POSEIDON基準を用いて分類した累積妊娠率

体外受精を行う際、年齢や卵巣予備能により薬剤の量を決めたり採卵数を予想したりします。
POSEIDON基準は年齢と卵巣予備能を組み合わせて分類しています。
女性の年齢は、卵の異数性との関連があり、AFCやAMHなど卵巣予備能検査は卵巣刺激の反応性・採卵数を予測します。卵が獲得できればそれだけ胚移植できる可能性が増え、妊娠出産できる可能性が高まります。


このPOSEIDON基準を用いて、一般的な反応を認める対照群を参照集団としてPOSEIDON群間で累積出生率を比較している報告をご紹介いたします。


Human Reproduction, Volume 36, Issue 8, August 2021, Pages 2157–2169


POSEIDON基準に基づいて5つのグループに分類しています。


POSEIDONグループ1:年齢<35歳、AFC≥5、および過去10個未満の採卵数
さらに、サブグループ1a:採卵数が4個未満、サブグループ1b:採卵数が4〜9個に分けられました。
POSEIDONグループ2:年齢≥35歳、AFC≥5、および過去10個未満の採卵数
さらに、サブグループ2a:採卵数が4個未満、サブグループ2b:採卵数が4〜9個に分けられました。
POSEIDONグループ3(グループ3):年齢<35歳およびAFC <5。
POSEIDONグループ4(グループ4):年齢≥35歳およびAFC <5。
非POSEIDON(グループ5):AFCが5以上で9個を超える採卵数。さらに、35歳未満の患者からなるサブグループ5aに、 35歳以上の患者からなるサブグループ5bに分類。



9073人が研究に含まれました。4433人(48.9%)がPOSEIDON基準を満たしました。全体で6722個の新鮮胚移植および3010個の凍結胚移植が行われました。このうち3429個の新鮮胚移植と784個の凍結胚移植がPOSEIDON患者で実施されています。


採卵数・胚数は、POSEIDON群が非POSEIDON群の約2分の1でした。さらに、ETがキャンセルになった割合は、非POSEIDON群(1.2%)よりもPOSEIDON群(11.1%)の方が高い結果でした。凍結胚が利用可能でき複数回のETを行なった割合は、POSEIDON群(8.7%)で非POSEIDON群(28.2%)よりも低い結果でした。


・採卵あたりの累積出生率


合計3840人(42.3%)が、1回の採卵から1回以上の胚移植を行い、出産に至っています。 累積出生率は、POSEIDON群が非POSEIDON患者よりも低い結果でした(33.7%対50.6%、P <0.001)。 POSEIDON群で、若い集団を含むグループは、採卵あたりの累積出生率が最も高かった(グループ1:45.7%;グループ3:29.4%)。累積出生率は、高齢のPOSEIDON群で最も低かった(グループ4:12.5%)。非POSEIDON群では、累積出生率は若い(<35歳)のグループよりも高齢(≥35歳)の方が低かった(56.4%対34.8%、P = 0.004)。


多変量解析を行い累積出生率の関連する予測因子は、POSEIDON群、得られた胚の数、患者あたりのET数、採卵数、女性の年齢、不妊期間、およびBMIでした。


<まとめ>
POSEIDON基準を満たす女性は、一般的な卵巣刺激を行なった採卵あたりの累積出生率が、通常の卵巣機能をもつ非POSEIDON群より約50%低いことが確認できました。このことは、POSEIDON群のART治療の予後が通常の卵巣機能をもつ方より低いということを裏付けています。卵の質と量が重要で、女性の年齢と採卵数により1回の採卵あたりの累積出生率に影響することが考えられました。
POSEIDON基準を満たす女性にカウンセリング、治療、早期介入など利益をもたらす可能性があります。

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