男性の年齢と胚の異数性について
女性の加齢に伴う異数性の増加は、妊娠の妨げとなることが知られています。胚の全染色体異数性の主な原因は、減数分裂のエラーであり、異数性は女性の年齢とともに指数関数的に増加し、45歳までに最大80%となると報告されています。
アメリカでは過去40年間で、父親の平均年齢は27.4歳から30.9歳に増加し、40歳以上の父親の割合は4.1%から8.9%に2倍以上に増加します。
染色体異常と父親の年齢に相関があるか調査している報告をご紹介いたします。
”Is there a correlation between paternal age and aneuploidy rate? An analysis of 3,118 embryos derived from young egg donors”
若いドナーから得られた胚の栄養外胚葉を生検し、NGSを用いたPGS-Aを行い分析しています。
男性の年齢でグループ分けされ
グループ:39歳以下(n = 203)(1,613個の胚)
グループB:40〜49歳(n = 161)(1,211個の胚)
グループC:50歳以上(n = 43)(294個の胚)
合計3,118個の胚が最終分析され、
2,184個(70.04%):正倍数性
433個(13.9%):異数性
501個(16.06%):モザイクと判断されました。
A B C
正常受精率 78.9±15.2 80.09±13.5 76.35±15.8
胚盤胞形成率 52 53 55.5
グループCの受精率はグループBに比べて低いことがわかりました。胚盤胞形成率はグループ間に差はみられませんでした。
A B C
正倍数率 69.2% 70.6% 72.4%
異数性率 14.7% 12.8% 13.9%
モザイク率 16.1% 16.6% 13.6%
グループ間に差はみられませんでした。
さらに、異常胚のみを分析しています。
異常胚のうちわけ
単一染色体異数性:60.7%
一部の異常:24.1%
複数の異常:14.9%
単一染色体異数性、複数の異常は年齢間で変わりはみられませんでしたが、複数の異常は父親の高齢群の方が多くみられました。
<まとめ>
この研究では、ドナー、精子、背景を調整後、若いドナー卵を使用したIVFにおいて、父親の年齢と異数性率との間に関連はみられませんでした。 ただ、父方の年齢が50歳以上になると、若い父方の年齢群と比較して、受精率が低下し、一部の異常の発生率が上昇しました。