卵の体外成熟(IVM)においてIVM培地にコエンザイムQ-10を加えると卵成熟率と減数分裂後異数率が改善する

卵の体外成熟(IVM)においてIVM培地にコエンザイムQ-10(CoQ10)を加えると高齢女性の卵成熟率と減数分裂後異数率が改善するのではないかという報告をご紹介いたします。


Fertility and Sterility
”Coenzyme Q10 supplementation of human oocyte in vitro maturation reduces postmeiotic aneuploidies”


生殖能力は32歳を超えると、特に37歳を超えると減少します。主要な要因としては、卵の減少、特に卵の異数性の発生率が高くなることが挙げられます。さらに卵の質に影響を与える多くの細胞質因子の中で、ミトコンドリア機能障害は重要な役割が報告されています。mtDNA量と胚の着床には相関があり、母体年齢とmtDNAコピー数は逆相関を示していることが報告されています。


コエンザイムQ10は、ミトコンドリア呼吸鎖の主要な電子伝達物質であり、ATP産生に必要なミトコンドリア内膜を通過するプロトン輸送体です。CoQ10は、特に脂質過酸化およびDNA酸化の阻害において、膜関連の重要な抗酸化物質です。老化のマウスモデルでは、長期(12〜15週間)のCoQ10補給により、生殖の老化が大幅に遅延し、卵巣予備能が増加し、卵子のATP産生が増加し、紡錘体構造が改善し、受胎能が改善したことが報告されています。


この研究では、IVF治療を受けている患者さんから提供された余剰のGV卵を使用してIVMを行い、CoQ10付加により異数性を低減するか有効性を検討しています。


38歳以上の45名と30歳以下の18名を対象とされ、合計63人から合計166個のGV卵、38歳以上 92個、30歳以下 74個のGV卵が獲得できました。
IVM培地にCoQ10の濃度を50μmol/ Lとして加えています。
極体生検にて異数性を調べています。


38歳以上では、50μmol/ L CoQ10付加群の卵成熟率(82.6%)は、対象群(63.0%)よりも有意に高い結果でした。 38歳以上の減数分裂後の異数性率は65.5%、IVM培地に50μmol/ L CoQ10付加群の異数性率は36.8%と有意に低い結果でした。


30歳以下では、卵の成熟率は、IVM培地でCoQ10を使用しても使用しなくてもほぼ同じでした(80.0%対76.9%)。 卵母細胞異数性率は、CoQ10の有無にかかわらず同じでした(28.6%対30.0%)。


この研究で観察された異数性の大部分は、染色分体の早期分離に起因するトリソミーとモノソミーでした。


要約すると、IVM培地に50μmol/ L CoQ10付加することで、高齢女性の卵の成熟率を高め、減数分裂後の異数性を減少させることを示しました。 



CoQ10の付加は卵の異数性をどのように減少させるか考察されていました。
→高齢女性の顆粒膜細胞におけるCoQ10依存性ミトコンドリア呼吸鎖複合体IIおよびIIIの活性が大幅に低下していることが、CoQ10の付加により改善できることが報告されています。 IVMのCoQ10付加は、卵、卵丘細胞でのミトコンドリアの酸化的リン酸化およびATP産生を増強する可能性があります。さらに、酸化ストレスは卵の異数性に関係しているため、CoQ10は抗酸化剤として機能し、IVM中の酸化ストレスを低減し異数性の減少に関係している可能性があるのではないかとのことです。

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