精子DNA 断片化と流産

不育症の原因検索は女性側に行われることが多いですが、今回ご紹介する報告は男性側に焦点をあてています。


2019年7月 Fertility and Sterilty
" Sperm DNA fragmentation and recurrent pregnancy loss: a systematic review and meta-analysis"


精子DNA 断片化指数検査(DFI 検査) は、射出精子中にDNA損傷を起こしている精子の割合を知る検査です。精子DNAはプロタミンにしっかりと結合しており、外部からのダメージからDNAを保護します。 DNAの断片化が起こると、わずかな損傷であれば受精後の胚によって修復される可能性があります。しかし、胚によって修復可能な閾値を超えた著しいDNA断片化は、胚の発生不良、着床失敗、および流産の一因となる可能性があります。


ただ、米国生殖医学協会(ASRM)および米国泌尿器科学会は、不妊症の一般的な検査でDNA断片化を実施には根拠が不十分であると述べています。


この報告では精子DNA断片化と反復する流産(RPL)との間に有意な関係があるかどうかを判断するために、系統的レビュー・メタアナリシスを行なっています。


<結果>
前向き研究15件が定性分析に含まれ、RPL:579人の精子DNA断片化について、対照男性:434人と比較されました。
①RPL女性の男性パートナーは、対照男性よりも有意に精子DNA断片化率が高い結果でした。(MD 10.7、95%CI 5.82〜15.58)。
②RPLが2回、3回以上の流産として定義された場合のサブグループ分析
・2回流産と定義した場合、RPL女性の男性パートナーは、対照男性よりも有意に精子DNA断片化率が高い結果でした。(MD 12.51、95%CI 2.14–22.89)。
・3回流産と定義した場合も同様、RPL女性の男性パートナーは、対照男性よりも有意に精子DNA断片化率が高い結果でした。(MD 9.12、95%CI 3.16–15.08)。
③精子DNA断片化測定法についてサブグループ分析を行なったところ、検査法が違っても、RPL女性の男性パートナーの精子DNA断片化率が高い結果でした。


<まとめ>
精子DNAの断片化がRPLと関連していることが示唆されました。ただ、研究間で結果が著しく異なっており、さらに大規模な前向き研究が必要です。


RPLは女性だけでなく、男性側(精子DNA断片化)も関係しているのではないかという報告でした。

×

非ログインユーザーとして返信する