inoueのブログ(不妊・妊活の新しい情報を紹介)

不妊治療を受けられている方へ

妊娠中の血小板減少

こんにちは


本日は


The New England Journal of Medicine July 5, 2018 Vol. 379 No. 1
“Platelet Counts during Pregnancy”


をご紹介いたします。


妊娠中に血小板は低下しますが、合併症を有しない妊娠中の女性の血小板数が 150,000/mm3 未満で、ほかに原因が特定されなければ、妊娠性血小板減少症とされています。(報告によります)


妊娠中の複数の生理学的変化は、血小板数の低下に寄与する可能性があります。 メカニズムのひとつとして妊娠中に起こる血漿量の増加による血小板の希釈が考えられます。また、脾臓のサイズが大きくなると、血小板のプールが増え、血小板数が減少します。 したがって、妊娠中に起こる脾臓サイズの50%の増加も、血小板数の低下に寄与する可能性もあります。


妊娠中の血小板減少症の発症と重症度は明確にされていません。今回の報告は合併症のない妊娠の女性に関する妊娠中の血小板数、妊娠性血小板減少症の重症度、および妊娠後の妊娠性血小板減少症の再発リスクを調査しています。


<方法>
2011~14 年にオクラホマ大学医療センターで出産した15−44歳女性の妊娠中の血小板数を評価しています。妊娠女性の血小板数を1999~2012 年に全米健康栄養調査に参加した非妊娠女性の血小板数と比較しています。
妊娠第 1 三半:妊娠0〜13週
妊娠第 2 三半:14〜27週
妊娠第 3 三半:28〜42週
分娩時
産褥期:分娩後4〜12週
に分類し血小板数を測定し合併症の有無を調査しています。


<結果>
出産 15,723 件のうち、7,351 例が解析対象で、このうち 4,568 例が合併症を有さず、2,586 例が妊娠合併症を有していました。さらに197 例が血小板減少症に関連する既存疾患を有していました。合併症を有しない妊娠女性において、妊娠第 1 三半期(平均妊娠週数 8.7 週)の平均血小板数は 251,000/mm3 であり,非妊娠女性 8,885 例の平均血小板数(273,000/mm3)よりも減少していました(有意差あり)。分娩時には、合併症を有しない妊娠女性の 9.9%で血小板数が 150,000/mm3 を下回っていました。合併症を有しない妊娠・出産時に、血小板数が 100,000/mm3 を下回ったのは 45 例(1.0%)のみでありました。血小板数が 80,000/mm3を下回った合併症を有しない妊娠女性 12 例のうち、血小板減少症の原因がないと確認されたのはわずか 5 例のみでした。分娩後平均7.1週間で、合併症のない妊婦の血小板数は、非妊娠女性の血小板数のレベルに回復していました。産褥期に女性で測定された血小板数が妊娠前の血小板数と類似していると仮定すると、平均血小板数は妊娠中に推定17%減少していました。妊娠性血小板減少症の既往がある女性の再発性妊娠性血小板減少症のリスクは14.2倍高かった。


<結論>
全ての女性において平均血小板数は妊娠中に減少していました。減少は妊娠第 1 三半期に始まっていました。重度の血小板減少症は、妊娠関連の合併症を有する女性でさえも稀でした。子癇前症または血小板減少症に関連した既往症のない血小板数が100,000/mm3 未満の女性では、妊娠またはその合併症以外の原因を考慮する必要があると結論付けています。


妊婦健診で採血する機会がありますので、血小板を気にしてみてはいかがでしょうか。
もちろん100,000/mm3未満の方でもほとんど問題なく出産されていますので、心配しすぎもよくありません。

子宮卵管造影検査について

こんにちは


今回は一般不妊検査のひとつである子宮卵管造影検査についての報告をご紹介いたします。




子宮卵管造影検査は、子宮内に造影剤を入れ、子宮の形態と卵管のつまりや形状、骨盤内癒着を観察する重要な検査です。




この造影剤には、油性と水性の造影剤があり、それぞれメリット、デメリットがあります。




油性は粘性が高く、観察しやすいというメリットがありますが、卵管が腫大している方などは造影剤が水溶性より残存しやすいこと、まためったに起こることはありませんが油性の造影剤による塞栓症の可能性もあります。また翌日来院しレントゲン撮影の必要があります。




それに対し、水溶性造影剤は吸収されやすく、三十分後に腹腔内の観察のためのレントゲン撮影ができ来院回数を減らすメリットがありますが、観察しにくいというデメリットがあります。




子宮卵管造影検査後は、自然妊娠率が上昇すると以前から言われています。


去年The New England Journal of Medicineでも報告がありましたが、子宮卵管造影後の妊娠率は油性の造影剤の方が良いという結果報告されています。




今回の報告は


子宮卵管造影検査で油性と水性の造影剤使用し、その後の妊娠率に違いが出たか比較した報告で多くの論文をまとめて検討しています。


今年の7月に発表されたfertility and sterilityの


”Oil-based versus water-based contrast for hysterosalpingography in infertile women: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials"



報告にもよりますが不妊症原因の3分の1は、卵管閉塞などの女性生殖管の解剖学的異常によるものとされています。 子宮卵管造影検査(HSG)は不妊検査において一般的に使用される診断方法です。
経験的に今までは、HSGに使われる造影剤は油溶性造影剤(OSCM)を用いて行われていました。しかし、油溶性造影剤は、炎症または閉塞した卵管の存在下で肉芽腫性変化を促進する可能性があるため、徐々に水溶性造影剤(WSCM)に置き換えられてきました。今までの研究では、妊娠後の妊娠率は使用した造影剤の種類によって異なることが示されていました。


今回は6つの試験で妊娠率に差が出るか検討しています。
合計2,562例(OSCMに1,179人、WSCMに1,383人)を対象としています。


結果:
継続妊娠について
油性造影剤を使用した1,179人の女性のうち379人(32.1%)、水溶性造影剤を使用した1,383人の女性のうち326人(23.6%)が妊娠した。油性の造影剤を使用した方が有意に妊娠率の上昇をみとめました。
流産率は、全体で6.3%(OSCM:827人のうち48人[5.8%]、WSCM:814人のうち56人[6.9%])であった。 OSCM群とWSCM群の間に流産の発生率に有意差はありませんでした。
異所性妊娠率については、全体で0.6%(OSCM:827人のうち人[0.5%]、WSCM:817のうちの6人[0.7%])であった。 群間で異所性妊娠の発生率に有意差はありませんでした。


考察:
油性の造影剤が妊娠率を上昇させる可能性のある根本的なメカニズムは不明であり、さらなる科学的研究で明らかにされるべきであります。流産や異所性妊娠は両群で有意差をみとめませんでしたがOSCMでは、塞栓症、肉芽腫、またはアレルギー反応の副作用が理論上のリスクとしてあります。


The New England Journal of Medicineと同様に油性造影剤の方が妊娠率が高い結果でした。
妊娠率だけ見ると油性の造影剤を使用した方がよいかもしれませんが、合併症を起こしやすい症例などは水性の造影剤を使用しても良いかもしれません。
当たり前ですがひとりひとりにあった検査法を計画立てていく必要があります。

慢性子宮内膜炎について

こんにちは


本日は慢性子宮内膜炎(CE)についての報告をご紹介いたします。


“Effects of chronic endometritis therapy on in vitro fertilization outcome in women with repeated implantation failure: a systematic review and meta-analysis”


こちらはいくつかの論文をまとめた報告になります。


CEは複数回良好胚を移植しても妊娠しないような方にみられることがあり、抗生剤で治癒する可能性の高い疾患です。しかし、治療することで妊娠、出産率が上昇するか検討の余地があります。


今回の報告では、2回以上の胚移植で妊娠しなかった症例を対象に、CEの治療を評価しています。


子宮内膜生検にて形質細胞を確認しCEの診断を行っています。
慢性子宮内膜炎の治療として第一選択抗生物質療法は、ドキシサイクリン200mg /日 14日間、シプロフロキサシン1μg/日とメトロニダゾール14日間投与を行っています。


下記のように分類しました。
[1] CE治療群とCE未治療群
[2] CE治療とCE治療抵抗群
[3]CE治療群と非CE群(正常な子宮内膜組織)
に分け検討しています。。


これらの群で、出産率、化学妊娠率、着床率を検討しています。


結果です。
[1] CE治療群とCE未治療群について
1つの報告では、出産率、化学妊娠率、着床率すべてにおいて有意差はありませんでした。
[2] CE治療とCE治療抵抗群について
出産・継続妊娠率(オッズ比 6.8倍)、化学妊娠率(オッズ比 4.02倍)、着床率(オッズ比 3.24倍)すべてにおいて有意差ありました。
[3]CE治療群と非CE群(正常な子宮内膜組織)について
出産・継続妊娠率、化学妊娠率、着床率すべてにおいて有意差はありませんでした。


最近の研究では、CEが脱落膜化を弱め、子宮内膜受容体に関与するタンパク質の発現を変化させることにより、着床に悪影響を及ぼし得ることを示しています。したがって、抗生物質療法は、感染源を排除し、正常な子宮内膜組織像を回復させ、子宮内膜受容性を改善し得るという考えです。


結論として、CEの治療は、反復着床不全に対するIVFの成績を改善し得ました。特に、IVFを行う前に、組織学的にCEの治療を確認すべきであるが、CEをスクリーニングで推奨するには、エビデンスがまだ不十分です。将来のランダム化比較試験が必要です。


1つの論文でのCE治療群とCE未治療群では成績に変わりないという結果は気になりますが、反復不成功例のCE治療は子宮内膜受容性を改善し得るかもしれません。